家に帰ると
私はアーロン先生とのやりとりのあと、足早に屋敷に戻った。今すぐにこの醜い見た目をどうにかしないといけないと思ったのだ。
屋敷に着くと屋敷はいつも通り静まり返っていた。当然である。両親はそれぞれ違うところに住んでいるので、この屋敷には最低限のメイドと執事しかいないのだ。
私は急いで屋敷に入った。すると使用人たちが私の顔色を伺うようにこちらに近づいてきて礼をとってすぐにどっかに行ってしまった。その中で私付きの侍女であるエイダが私の様子を伺うように
「お帰りなさいませ。お嬢様、いつもより早いお帰りですが、如何なさいましたか?」
と話しかけてきた。
「いえ、少し具合が悪いことに気づいて早く帰ってきたのよ」
「そうですか」
エイダはそうとだけ言って私の荷物を持ち私の部屋までついて来た。そして私たちは私の部屋に着き中へ入った。するとエイダがすぐにドアを閉め、私に抱きついて来た。
「お嬢様!! 正気になられたのですね!」
「えぇ、そうね。私、屋敷でもそんなに酷かったのかしら?」
私がそう聞くとエイダがマシンガンのように話し出した。
「えぇ、酷いなんてものではありませんでした。妖精姫と呼ばれていたお嬢様が日に日に今にも人を喰らいそうなお姿になっていったのです。私がお声を掛けても何も反応はしませんし、いきなり止まり出したかと思うと化け物のような声で呪詛のようなものをぶつぶつと言うのです。それで、この屋敷にいる者たちは完全に怯え切って、さっきにみたいな状態という訳でございます」
「そう……だったのね。全然気づかなかったわ」
私は最近の私の行動を聞いて最近の自分を思い出して呆然とした。ここ最近のことが大して思い出せないのだ。何をして何を考えていたのか記憶がないのだ。私はそのことに寒気を感じた。体の震えを抑えようと自分の体を両腕で抱きしめるようにした。
「それにしてもお嬢様が正気に戻られて安心しました。今日は特に酷く、人を殺めるようとしているような恐ろしい目をしていましたし、さらに髪もろくに整えずに出ていってしまわれて……」
とエイダが涙を流しながら言った。私はエイダの頭を優しく撫でた。エイダは幼い頃から私と一緒にいて歳も近いこともあって私にとって、まるで友達のような存在でもあった。私はそんなエイダをこんなに心配させたかと思うと胸が苦しくなった。
「本当にごめんなさい、エイダ。そんなにも心配させて」
「いえ、私ももっと体を張ってお止め出来れば良かったのです」
「そんなことないわ。私が勝手に嫉妬に駆られてああなってしまったのです。誰かにどうかできることではなかったわ」
私はそう言ってエイダを慰めた。私は反省するばかりだ。しかし、私はアルフレッド様対する思いは変わらないし、セシリアに対しする憎しみにも近い嫉妬感情も変わらないのだ。そう、結局私はまだアーロン先生の言う病に罹っている状態には変わりない。だから、いつまたあのような化け物のようになってしまうかわからない。私はまたそうならないように気をつけなければいけないと思いながら、明日から始まる治療に不安と期待を持ちながら今日を終えたのだった。