やり直し失敗
入学式の日になった。
何故か過去に戻ってきてしまった事に気づいた後、俺は動揺しながらも徐々に現実を受け止め始めた。最初は壮大などっきりかと疑ったりもしたが、時間がたつにつれてそんな考えは消えていった。
自分の部屋の中だけでなく、テレビをつけてもかすかに記憶にあるタレントの不倫や政治のニュースが流れていた。大学3年の時につぶれてしまった近所の定食屋もまだあったし、本屋で見かけた1巻が発売したばかりの漫画はアニメになっていたはずだ。
紛れもない現実。
わけはわからないが、とりあえず受け入れて生きていくことにした。過去に戻る前に比べれば、これから始まる2度目の大学生活の方がきっと楽しい。
どうせなら未来の記憶を使って一儲けしてやろうと思ったが競馬も仮想通貨も勉強しておらず、全く知らないのですぐに諦めた。少しだけ勉強していなかった自分に嫌気が差した。
とはいえ、1度目の大学生活を開始したときに比べて約4年分の知識があるのだ。存分に活かして、新しい人生をやり直していこう。
そう決意し、入学式に向かった。
しかし、未来のことを知っているというのは良いことばかりではなかった。
「友達ができない………」
入学式の堅苦しい話を終え、大学のルール、履修登録やサークル活動についての説明が終わった。
1度目の時はその後に近くに座っていた人達と他愛もない話で盛り上がり、その中の数人と友人になることができた。
しかし、今回は何も考えず違う席に座ってしまったためそのイベントは起きなかった。ならば他の人と仲良くなろうとしたが、周りにいたのは1度目であまり仲良くなかったグループ。正直あまりお近づきになりたくない。
そんな空気を察してか、周りの人は誰も俺に話しかけてこなかった。そしてそのまま誰とも話さず新しい大学生活の1日目が終わった。
その後1ヶ月以上、大学で友達はできなかった。