二十一話
グリムが俺の体を修復してくれたので、無事に復活した。
体のどこを動かしてもおかしな点はない。
これが【G】ならではの再生能力ってことなのかもしれない。
そしてグリムが戦ってくれたおかげで、何とか俺は助かったようだ。
俺一人だったらまず間違いなくこの黄金の勇者に殺されていただろう。
それにしてもなんで俺が殺されなくちゃいけないんだろうか。
俺だけが狙われるならまだしも、今後集落が狙われることになれば危険だ。
今のうちに危険を取り除いておく必要がある。
少なくとも彼らがフォークイエリアから来ているのは間違いないと思う。
となれば直談判でもしてみるしかないか。
そうして考え事をしていると、すっかり夜になっていた。
そろそろティナも心配し始めている頃だろう。
でもこのまま戻るのもなんか危険な気がするしな。
よし、行くか。
-国に行くのか?流石に危険だと思うが-
でも仕方ないよ。
それに彼らも運ばないといけないしさ。
俺は倒れる勇者とローブの集団を見た。
-まぁ今後を考えると不安も大きいのだ。どれ、力を貸してやろう-
グリムから魔法のイメージが送られてくる。
すぐに魔法が完成していくのが分かる。
…なるほど、確かにこの魔法なら直接会えるってことか。
俺はグリムの魔法に身を任せた。
すると周辺の景色が一瞬にして変わる。
勇者たちは相変わらず俺の周りで眠っている。
目の前にアルノはフォークイエリアの王都だ。
ただし高い外壁があるので、簡単には侵入できないけど。
グリムが教えてくれた魔法は転移魔法、周囲ごと一気に転移することができた。
「とりあえず彼らはここに置いておこう。後で取りに来てもらえばいいよね」
倒れる彼らはこの場に放置して、一気に飛んだ。
もちろん高い外壁の上まで。
それにしても王都は相変わらず広いな。
いつかあの森も、これくらいの規模を持てればいいけど。
おっと、巡回の人たちに見つかれば流石に危険だし、さっさと動くか。
夜ということもあり、かなり簡単に進入することができた。
それに足の速さには結構自信がある。
勇者でもない限り、俺に追いつくのは不可能だろう。
王城まですぐにたどり着くことができた。
流石に無断で城に侵入するのは危険だと思うけど、入るしかない。
俺一人が危険ならまだしも、皆に被害を及ぼしたくない。
「…そういえば俺、王室の位置を知らないな」
-大体一番高い場所にあるのだ-
なるほど。
城はよくある感じの見た目で、石造りだ。
複数の塔が合わさったような形をしている。
そして一本だけやけに高い塔がある。
あそこまで高いと下から崩された時に逆に危険な気もするけど、おそらく王様はあそこにいるんだと思う。あの人の温かい感じが、あの塔から感じ取れる。
-ほう…命の危機に陥ったせいか、さらに感覚を磨き上げたな。お前が今感じ取っているのは間違いなく魔力だ-
俺もまだまだ成長しないとな。
あんな簡単にやられちゃったら流石にみんなに申し訳ない。
さて、正面から侵入する必要はない。
足に力を込めて、全力で飛ぶだけだ。
本気でジャンプした割には、意外にも音は小さかった。
体の使い方も随分うまくなってきた。
一番高い位置にあるバルコニーに着地した。
何が意外だったって、バルコニーに丁度人がいたところだ。
そしてそれは、お目当ての人物だった。
「ふむ、賊かと思ったが…まさか君だったとは。なぜもう帰ってきたのだ?」
ガイアスは少しだけ驚いてる。
でも突然人が現れた割には、かなり落ち着いていると思う。
「それが、少し王様と話したいことがありまして」
「ほう?それはまた…一体なんだ?」
こんなに失礼な状況なのに、王様は俺の話を聞いてくれる。
相変わらず偉大な人だ。
たぶん勇者に暗殺を命令したのはこの人じゃない。
「実は…今日俺の元に暗殺者が送られてきました」
「なぬ?」
王様は不思議そうな顔をしている。
当然だろう。
彼からすれば俺はこの前旅に出た若者でしかない。
今でもその通りなんだけど。
ただの若者を暗殺する意味がわらかない。
きっと王様は今そう考えているはずだ。
「そうか…君を…」
王様は少し驚いた後、直ぐに納得したような表情に戻った。
この反応はかなり意外だった。
「心当たりが?」
「…ある。だがまずは、今君が何をしているのか、聞かせてくれないか?」
もちろんそれについては説明するつもりだった。
「今俺は…この国の近くにある大森林で、亜人の国を作ろうとしています」
「…なるほど。そうか…大体理解できたよ」
王様は急に遠くを見るような視線になった。
「すまないが、この件は君の胸にしまっておいてくれないか?もちろんこちらで二度とそういうことがないようにしておくから」
「え、えぇ。問題が解決するならもちろんそれで構いません。ただお願いしに来ただけですから」
「助かるよ。…君の旅路はきっと長くなる。幸運を」
王様はこちらに手を差し出してきた。
不意に手を握りそうになってしまったが、直ぐに口を開いた。
「すみません。前の世界の仕事の影響で、手に毒があるみたいなんです。ですから握手は…」
「む?君は暗殺者だったのかい?」
「いいえ、工場の従業員でした」
「なるほど、随分危険なものを使っていたようだね」
いえ、ただのペトスです。
という言葉は深く飲み込んだ。
「どうもそのようでして」
王様は残念そうに手を下げた。
「君の作り上げる国が形になったら、また私の元へ来なさい」
「え?」
「君の国と、私の国で国交を結ぼう。君はそれを当面の目標にしたまえ」
「…いいんですか?この世界での亜人の扱いは…聞きましたよ?」
「だからだよ。きっと君のやろうとしていることには、必ずいつか後ろ盾、力強い味方が必要になるいだろうから。その時は私が君の味方になる」
「…ありがとうございます」
俺は素直に王様にお辞儀をした。
ここまで人を尊敬したのは初めてかもしれない。
「いつか君と…いや、亜人たちに許してもらいたいものだ。私たち人間の、罪の歴史を」
俺がバルコニーを離れるとき、王様は確かにそう口にしていた。
罪の歴史…一体何があったのだろうか。
もしかすると、俺が知っている事実以外にも、なにか亜人と人類の間にはあったのかもしれない。
俺はこの日、朗報と大きな疑問を同時に集落に持ち帰ることになった。
あとちょっとでこの小説を終わりにします。
お読みいただいた方々、本当にありがとうございました。




