表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

十一話

 さて、何事をするにもまずは下地作りから、それは間違いないだろう。


 今回でいうと俺の当面の目標はこの森の亜人族、または知性ある魔物たちをこの集落に引き入れること。


 流石に森全体が一か所に集えば、国と言えるほどの規模になるだろう。


 それにはまず、この集落そのものの生活基準の底上げが必要になる。


 魅力的な場所に人は集まる。当然のことだ。


 といっても、これらすべてのアイデアは魔王発案だが。


 俺はそういうのはよく分からない。勉強しながらになるだろう。


「なるほど。言いたいことは分かった」


 長老が席で静かに頷いた。


 今俺は長老の家に来ている。


 エルフ達の現在の生活基準を確認するためだ。


 辺境の村の暮らしだったとはいえ、流石に森暮らしに負けるとは思っていない。


 俺が見ても、何点かアドバイスできると思う。


「それでは実際に見てもらった方が早いな。我々の生活を」


「そうしよう。とりあえずわかりやすい食料面から見てみたい」


「ふむ、わかった」


「…それと、この部屋にある本をいくつか借りていってもいい?」


「あぁ…まぁ娯楽がないと暇だろうな。娘に手を出されるよりましだ。持っていけ」


 長老が快く許可してくれる。


 森暮らしの何が困るって、娯楽が何もないことだ。


 意外なことに長老は本をいくつか所持しているみたいだ。


 なぜ持っているのかはわからないが、ありがたく借りよう。


 …この本は一応借りていったほうがいいな。


「ほう?随分珍しい本を手に取るな。図鑑だぞ?」


「これがいい。これが必要だと思うんだ」


「まぁ自由にするといい。読み終わったら勝手に戻しておいてくれて構わない。」


 長老の家は近所だ。


 別に来ようと思えばすぐに来れる距離にある。


 集落そのものがそこまで広くないから、仕方がないことかもしれないけど。


 もしかするとティナとの同居を見逃したのも、それが大きな理由かもしれない。


 不安があればいつでも確認できるから。


「それじゃ借りてくよ」


 ティナがくれたお手製の手提げ袋にそれを入れる。


 かなり便利だからありがたい。


 早速長老と共に家から出た。


 視察開始だ。


 ●


 まず最初に案内されたのは畑だった。


 エルフ達の畑は人類とほとんど変わりないものだった。


 植物を植え、定期的に水をやり、成長を待つ。

 

 でも同じような育て方をしているのにも関わらず、畑の植物は余り元気がないように見える。


「植物が育つ環境に必須なのは日差しだ」


 おそらく俺が考えていることを察してくれたのだろう。


 長老はそれだけ言うと、上へ指を刺した。


「なるほど、これは大きな問題だね」


 そう、エルフ達は森に住んでいる。


 畑を管理する都合上、あまり離れた位置で農作をするわけにはいかない。


 つまり森の中で農作をしている。


 木々に囲まれた森では日差しが十分に入らないのだ。


 それが原因で植物の成長を妨げているらしい。


「そういえば水源はどうしているの?」


「あぁ、飲み水も、それに畑の水も、近くの湖から確保している」


 そういえば俺の村では水源を魔法で確保してたな。


「魔法は?」


「もちろん水属性の魔法を使える者もいる。エルフは魔法が得意だしな。だが魔法で生み出せる水ではうまく植物が育たないんだ」


 …そういえば飲み水とかは魔法で確保してたけど、畑は別だったかも。


 -魔法で生み出せる水は元が魔力なだけに栄養分が皆無なのだ。通常の水はカルシウムやマグネシウム多く含んでいるが魔法でできた水にはそれがないのだ-


 何言っているの?


 -簡単にまとめれば魔法の水は栄養零。湖の水栄養豊富-


 …なるほど。とりあえず魔法じゃダメなんだね。


 -絶対わかってないのだ-


「湖まではどれくらいの距離なの?」


「エルフの足だと大体三十分くらいだな」


 長老が頭をポリポリとかきながら答えた。


「う~ん、水の確保に三十分か。長すぎるな」


「そうは言っても、他に手段がない」


「そういえば、集落には井戸があるじゃん。あれは?」


「井戸の水は生活用に確保したい。農作業で井戸が枯れてはかなわない」


「確かにその通りだ」


 畑の問題点は水、日差しってところか。


 これじゃ今は何とか足りても、集落に住む人が増えればとても賄えない。


 しっかりと作物が育つ環境を作らなきゃな。


 -とりあえず湖を見てみてはどうだ?何か思いつくかもしれない-


 そうしようか。


「長老、一度湖まで行ってみたい」


「ふむ、案内しよう」


 長老が先導するのかと思いきや、一度振り返ってきた。


「まさかお前…歩いていくのか?」


「それ以外ないと思うけど」


「我々エルフは木々を飛び移って移動する。森での移動速度は恐らくトップクラスだ。先ほどの湖までの距離も、その兼ね合いで三十分と言ったんだ」


「なるほど、じゃぁ歩いてだとどれくらい?」


「二時間以上はかかるだろうな」


 よ、四倍か。それは凄いな。


「悪いけど、今回は合わせてくれない?」


「はぁ…仕方があるまい。歩くとするか」


 長老は早速森を歩き出した。


 そして二時間後、俺たちは湖にたどり着いた。


 長老の予測通り、可もなく不可もない速度だ。


「…へぇ、想像しているよりもずっと綺麗だ」


 湖面は綺麗に透き通っている。


 かなり深いみたいで、底は見えない。


「そういえば湖の水は減ったりしないの?」


「あぁ…そういえば考えたことはなかったが、問題ないな」


 長老は首を傾げるだけだ。


 …そういえば。


 心当たりがあった俺は、早速手提げから一応持ってきた地図を取り出した。


 それを地面に広げた。


「やっぱりだ」


 心当たりを確信に変えるため、さっそく湖面に指を突っ込んでそれをなめた。


「うん、しょっぱい」


 -ほう、それは運が良かったな-


 この湖は海とつながってる。


 どうも水脈で海とつながっていると考えて間違いなさそうだ。


 -おそらくこの水源は限りなく無限に近いな-


 間違いないね。


 なら水源に関しては…どうするんだ?


 -水路なのだ。湖と、畑まで水路で引けばいい-


 そんな大変なこと誰がやるの?徒歩二時間だよ?


 -ベンなのだ。奴はアースドラゴン。土いじりはお手の物なのだ-


 …天才かよ。


 -ふふん、もっと褒めるのだ-


「長老、水源に関してはどうにかなりそうだよ」


「な、なんだと?」


「ベンの力を借りて、ここと畑、それに集落まで水路をひいちゃおう」


 -さりげなくベンの仕事量を増やしたのだ-


「水路とはなんだ?」


「…人工的に川を作るみたいな感じ。もちろん任意の目的地までね」


「そ、そんなことが可能なのか?」


「たぶんね。とりあえずやってみるよ」


 水問題はいいとして…光源か。


 -普通に木を伐採するはダメなのか?-


 確かに。


「長老、植物に日差しを与えるために木を切るのはダメなの?」


「それに関しては我々も一度は考えた。だが木々は我々の身を守るのにも使える。それに畑を隠しておくのにも最適だ。生活の跡を見られれば、その近くに何かが住んでいることが分かるだろ?それを防ぐためにも、木はなるべく伐りたくない」


「そっか。まぁ確かに、安定した暮らしを得るためって考えるなら、それが一番だね」


 -それこそ魔法でも問題ないだろ?光合成をするだけだ-


「魔法は?」


「誰が年中あそこで照らす作業をやるんだ」


「た…確かに」


 -魔法具を作ればいい。…まぁそれには色々と必要になるが-


「魔法具は?」


「魔法具…聞いたことはあるな。ものに魔法を込めるとか。すくなくともエルフの集落に識者はいないな」


「そっか、作り方が分からないんじゃ仕方がない」


 -私は作れるのだ。私が作れるということは、お前も作れるのだ-


 その手があったか。


 -だが今回の用途を満たすための魔法具には必要なものがある-


 それって?


 -魔法を込めておくもの、それに魔力を込めておくものなのだ。もちろん二つを一つにすることもできるが、後々を考えておくと分けておいた方が便利なのだ。…魔法を込めておく方は割となんでも賄えるが、魔力の方は難しい。魔石が必要になるのだ。魔石に関して長老に聞くのだ-


「魔石に心あたりってある?」


「あぁ…いくつかあるな。村が魔物に襲われた時のものが」


 魔物が体内に魔石を持つのはこの世界も一緒か。


 坑道から鉱物としてとれる場合もあるよね確か。


 -その通りなのだ。魔物が落とす魔石の方が純度は高い、だが今回やる程度のことであれば、問題なく鉱物でも賄える。燃料としても価値があるから、将来的には鉱山も考えておいた方がいいのだ-


 なるほど、そんな山があるといいけど。


「その魔石は使っても?」


「あぁ、一応とってあるだけだからな」


 それなら利用させてもらおう。


 …水路の工事と、魔法具の作成か。


 早速取り掛かろう。


 明日やろうは馬鹿野郎とか、良く母さんが言ってたっけな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ