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まさかのそっち

目を開けると俺たちは真っ白なだだっ広い空間にいた。


「ここは?」

『我らが住まう世界だよ。神界、とでも言えば分かりやすいかな。ここは私の執務室の隣でな。応接室としてそれっぽい空間を作ってある。なかなかいい雰囲気だろう?』

「まぁそうですけど、これからそこそこ長話するんだとすれば座りたいですね」

『せっかく神々しさを演出したのに…』

「すみません、ずっと立ちっぱなしで抱っこするの大変なので…」

『むぅ、仕方ない…別の部屋にするか』


神が手をかざすと、一瞬で周りの風景が変わる。今度は一流企業の応接っぽい。


「今度はやたら現実感ありますね」

『実用性を考えたらこんなものだよ』

「どこの世界でも一緒なんですかね」

『まぁそうだな…さてと、ではそなたらが転移…って、泰弘殿は転生なのかな。まぁいいか。向こうの世界の説明をしよう』

「あの、その前に何か咲良に食べさせたいんですが…」

『わかった。用意させよう。離乳食でいいかね?』

「はい。お願いします」

『おい君、すぐに用意させてくれ。全員分の飲み物も』

『は、はい、すぐに!』

『こらこら、そっちは出口じゃないぞ』

『すすす、すみません!』


テンパってんなー。大丈夫かあの子。


----------


『お待たせいたしました』

「あれ、どなた?」

『秘書だよ。一流だから安心してくれ』

『恐縮です』

「ドジっ子は呼びに行っただけで運びもしないのか…」

『いえ、彼女はこういったことに向いておりませんのでわたくしがお断りいたしました』

「お前…」

『うぅ…』

『君はもう下がっていいぞ。処分は上司から通達がある。それまでは自宅待機していなさい』

『はい…失礼します…本当に申し訳ありませんでした…』


暗い背中だなぁ…流石にこのままだとな。


「おい、ダメ天使」

『は、はい』

「結果的に生きられるし、もういいよ」

『えっ?』

「許すから。ただ、しばらく死ぬほど反省しろ。で、もう失敗すんなよ。じゃなきゃ俺が浮かばれない」

『で、でも私…』

「次、頑張れ」

『…あ、は、はい!』


少しはマシかな。まだ暗いみたいだけど。


『感謝するよ、泰弘殿』

「まぁ、若手を許すのも度量じゃないですか」

『はっはっは、そうかもしれんな』

「さて、お茶頂きます」


鼻孔をくすぐるいい香りがする。紅茶とも違うけど、何だろうか。


「これは?」

『神界にしか生息しない茶葉だよ。味は保証する』

「なるほど…うぉ、美味い」

『奥様、お子様のお食事でございます』

「すみません、お手数をおかけします」

『何か不足がございましたらご遠慮なくお申し付け下さい』

「ありがとうございます。ほら、お姉さんがごはん用意してくれたよ」

「ごっご!」

『…か、かわいい…』

『さて、では飲みながら聞いてくれ。まず、簡単に言うと君達がこれから行く世界は所謂剣と魔法のファンタジーだ』

「ほう」

『単純にRPGの世界と考えてもらって構わない。明確にステータス、スキルといった概念が存在している。限界はあるが、基本的には鍛えた分だけステータスが上昇する。スキルは常時発動と任意発動の二つのタイプがあり、下級、中級、上級、超級のランクに分かれている。そしてスキルにはレベルが存在するものもあり、使用回数やセンス、相手の強さといった要素に左右されて上昇する。また、個人の資質による固有スキルというものも存在する』

「なるほど」

『魔法については基本属性の火、水、風、土と上位属性の光、闇があるがそれらに分類されないものも存在する。ここまではいいかね?』

「ああ、はい。とても馴染み深いので」

『そうだろうそうだろう。まぁ全ては説明しきれないので省くが、後は君の目で確かめてみてくれ』

「どっかの攻略本みたいなのやめて。不安になる」

『はっはっは。さて、続きだな。種族は色々いる。代表的なのはヒューマン、デミヒューマン、ドワーフ、エルフ、デーモンだな。他にも色々と種族はあるが、知性が高くどの種族も基本的には友好的だ』

「俺らの世界でいう人種の違いっていう理解で合ってます?」

『うむ、概ね正しい。あとはモンスターだな。違いは他の種族に対して明確に敵対するということだ』

「まぁ、そうなんでしょうね。ゴブリンとかそういうのですよね?」

『その通り。他にもいるが後は君の目で…』

「もういいからそれ」

『つれないのぅ…まぁ、簡単だが説明は以上だ。何か質問はあるか?」

「転生とか転移は俺らが初めてなの?」

『いや、そうではないな。神隠しと呼ばれるような失踪事件のうち、身寄りがなく人生に絶望してしまった人間については転移させたケースはある』

「それは何でまた」

『人生に絶望してるのなら転移して別の世界で第二の人生を頑張ってみたらどうかとな。固有スキルを付与して生きやすくしてもある』

「人助けってヤツ?」

『いや、そんな高尚なものではない。異世界側への変化を起こしたいという理由もあるんだよ。固有スキルを持っていて、かつ別の常識を持った人間は思った以上に影響が大きいのさ』

「なるほど、とりあえず分かりました。向こうの世界では異世界人はどう扱われます?」

『これまでの転移者は大抵何かしらいい影響を及ぼしてきたから歓迎されることが多い。ちなみに異世界には黒髪は存在しないからすぐにバレるぞ。ちなみに君の肉体はほぼ同じに再現するからな。はっはっは』

「あんまり目立ちたくないんだけどな…まぁ迫害されるよりはいいのか…」

「あの、すみません、正直に言いまして、身の安全が心配です。彼も私も暴力とは無縁の普通の人生を歩んできました。何より咲良に何かあったらと思うと…」

『尤もな話だ。先ほどの話にも出てきた通り、向こうの世界に渡る前に固有スキルを授けている。また、当面は金銭的に困らないように換金用のアイテムも渡す。そして転移先も安全な国を考えている。そうそう危険が及ぶことはないと約束しよう』

「それならいいですが…」

『大丈夫だ。それに君達の娘はどうやらイレギュラーのようだしな』

「えぇと…どういうことでしょう?」

『稀にそちらの世界でも固有スキルを持って生まれる子がいる。その子もそうだ。つまりその子は持って生まれた固有スキルに加えて更に付与することになる。固有スキルは1つでもあればほぼチートのようなものだから、複数あれば人外確定だ。はっはっは』

「それはそれで大変な気が…というか、娘が人外っていうのはちょっと…」

『君達も複数付与される訳だから十分人外だ。安心しなさい』

「そういう問題なのでしょうか…」

『ご安心下さい、奥様。私もご一緒してお守りいたします』

「「えっ?」」

『えっ?』

「いや、なんであなたが驚くんですか…」

『それは考えてなかったからだ。って待つのだアルテアよ。何を言っているのだ』

『もう決めました』

『いや、私の秘書じゃないか。こっちの仕事はどうするのだ。というか天使が人と一緒に行動するって前代未聞だから流石に…』

『既に前代未聞の事態です。それに比べたら些細なことです』

『それは困る…誰がキミの秘書業務をやるのかね…』

『先ほどお話をされている間に引き継ぎ要員の選定、仕事の担当分けは完了しております。全員わたくしが育て上げた者ですので、手落ちはございません。』

『ぬう…相変わらず仕事が早い…』

『恐縮です。他にございますか?』

『なぜこの者たちについていこうと思ったのだ?』

『咲良様がかわいいからです!!!』

『「「えっ」」』

『わたくし、一目で咲良様の愛らしさに心を奪われました。咲良様の身に危険が及ぶなど考えられません。身命を賭してお守りします!』

「あ、あの…」

『アルとお呼びください奥様!私はこれより中森家の秘書、いえ、メイドにございます。敬語など不要です!』

「は、はぁ…」

「おい神様よ、どうすんのよ」

『私だって困る。一人で五人分の仕事をこなす超優秀な部下なんじゃ…』

『旦那様、これからよろしくお願いいたします』

「いやね、アルテアさん」

『アルです、旦那様。家事、おもてなし、護衛、交渉、裏工作、戦闘、潜入なんでもお任せ下さい』

「うーん、採用」

『ありがとうございます!』

「あの、神様、どうしたらいいのでしょうか…」

『すまぬ、美希殿。ああなったら何を言っても無駄でな…申し訳ないがよろしく頼む…』

「…わかりました。咲良も懐いているようですし…」

「うー!」

『はい咲良様、抱っこですね!お任せください!』


きゃきゃー!

うふふふ


「うーん、天使に一目惚れされるとは…我が娘ながら恐ろしい子」

『正確には上級天使第一柱だ。戦闘力も相当なものだぞ』

「助かりますわー」

『私には大打撃だ…誤算もいいところだよ』

「まあほら、彼女も言ってましたけど俺がここにいるのも誤算ですし」

『それはそうなんだがの…さて、では固有スキルの付与についてだ。配慮するとは言ったものの、適正がないものを付与することはできない。ある程度は個人の資質に依るのだ』

「"ある程度"ってことはいくつかから選べるってことでいいんですかね」

『いや、適正があるものは自動的に付与される。このプレートに適正のあるスキルが自動で付与される。そして最適性ではないが選択可能なスキルが浮かび上がってくる。そのうち2つを選んでくれ』

「なるほど。じゃあ通常の転移者はその自動付与だけだったってことですね」

『察しがいいな。そういうことだ。さて、美希殿もこちらに来てくれ。アルテア、その子もこちらに』

「あ、はい。わかりました」

『承知しました』


『さて、これがそれぞれのプレートだ。触れてみてくれ』

「んじゃ失礼して…」


プレートに触れるといくつかのスキルが浮かび上がってきた。

えーと、自動付与されたものはと。


【固有スキル】

"武の才能" … 戦闘系スキルの熟練度取得率、効果上昇。

"魔法の才能" … 魔法系スキルの熟練度取得率、効果上昇。

"不動の精神" … 精神攻撃を無効にする。また、緊張や興奮状態を任意で抑制出来る。


『うーむ、自動付与は普通1つだけなんだが…もともと素養があったみたいだな』

「あ、そうなんですか?よかったよかった。えーと、美希は?」

「こんな感じ」


【固有スキル】

"絶対障壁" … あらゆるダメージを無効化する。自己には自動発動するが、対象に対し任意で発動することも可能。

"治癒術の才能" … 治癒術の熟練度取得率、効果上昇。

"悪意感知" … 自分や仲間に対する悪意を感知する。


『また3つか…なんなんじゃお主らは…』

「防御特化って感じだな。てか絶対障壁すげーな。絶対死なないじゃん」

「これで咲良も安心かな」


さて、咲良はと…


【固有スキル】

"寵愛" … 上位存在からの寵愛を一身に受ける。

"成長率上昇" … 経験値、熟練度取得率上昇。スキルレベルにより効果上昇。

"能力上昇" … 全ての能力が上昇する。スキルレベルにより効果上昇。

"天才" … 固有を除く全てのスキルの熟練度取得率、効果が上昇。

"重複発動" … 下位スキルの効果が重複発動する。

"限界突破" … 上限を超えてステータスが上昇する。


「これはアカンやつでは…」

「見ただけですごそうなのが分かるね…」

『本当に人外の存在になってしまうぞこれは…』

『さすが咲良様…素晴らしい才能です!』

「うー?」

『かっ…かわいい…!』

「あの、神様。アルテアさんのあの状態って"寵愛"スキルのせいですか?」

『もともと子供好きなのもある。それより、寵愛は元々保有していたもののようだ』

「あー、だからやたら知らない人にかわいがられてたのかな…」

『あまり関係ないと思うんだがの…上位存在ではないしな、人間は」

「神様はあんまり効果ないっぽいね」

『いや、私は別に子供好きというわけではないが、やたらとかわいく見えるから効果はあるぞ』

「へー」

『にしても、お主らが霞むチートっぷりだな…』

「まあ、咲良が無事に生きていけそうでよかった」

『さて…ではあと2つスキルを選んでくれ。あの子のスキルはお主らが選んでもいいし、保留しても構わん』

「んじゃ保留しときます。自分の意志で選ばせたいので」

「私はもう決めた。これとこれ」


真眼 … アイテムの情報を全て表示する。隠蔽されている情報も表示可能。

スマホ … スマホを利用可能。元の世界とネットワークも繋がるが、異世界の情報は送信不可。


「真眼はよさそうだけど…スマホて」

「真眼は単純に、咲良の口に入るものが安全かを確認できるかなって。スマホはあったら便利でしょ?」

「スマホってこれ、異世界の情報は送信できないってことは受信は出来るのか」

「神様、これでお義母さんと真緒さんと連絡できるようにしていただけないですか?」

『本来はダメなんだがな…まあ、いいだろう。あの二人の端末にのみ送信可能にしておこう』

「ありがとうございます」

「ちなみに買い物とかは出来ます?」

『同等の価値分の通貨を用意すれば出来る。買った物は目の前に即時に出現するぞ』

「へー、めっちゃ便利スキル」

『異世界側での価値に換算した金額、と付け加えておくぞ。金策は出来んからな』

「チッ、ダメか…」

『全く…さて、お主はどうするんじゃ?』

「うーん」


とりあえず見てみよう。


"剣聖" … 剣スキルの熟練度取得率、効果上昇。スキルレベルにより効果上昇。

いやー、特定のことに特化してもなあ…


"筋力向上" … 筋力が向上する。スキルレベルにより効果上昇。

基礎能力の向上は悪くないかな。でも保留。


"交渉人" … 交渉の成功率が上昇する。スキルレベルにより効果上昇。

"絶品料理" … 料理の味、効能が上昇する。スキルレベルにより効果上昇。

アルテアさんが出来そうだしなぁ。


"スマホ" … スマホを利用可能。以下略

俺も選べるんかい!


他にもいろいろあるけど、いまいちピンとこないなぁ…


…ん?なんだこの最後の空白行。やたら多いな。ためしに選択してみるか。


" "

この行だけ半角スペースがある?怪しいなぁ…

とりあえずダブルタップ。


"魔の深淵" … 魔法行使時の消費魔力減、効果増。スキルレベルにより効果上昇。魔法を解析し、自在にカスタマイズ可能。

お?おお?なんだこれ。めっちゃいいじゃん。


『ぬ、まさかそれを見つけるとは』

「あ、なるほど。もしかして隠しスキルってやつですか」

『いかにも。そういうのあった方が燃えるじゃろ』

「分かってるなー、さすが神様」

『そんなにあっさり見つけられてしまうとは思ってなかったんじゃがの…』

「だって空白行多いんだもの」


"看破" … 対象の生物のステータスプレートを参照可能。ステータス偽装している場合は偽装と本物のどちらも参照出来る。


「あれ、選べるスキル増えた」

『隠しスキルを見つけると自動で出現するんじゃよ』

「へー。じゃあ後はこれで。良さげだし」

「私も探せばよかったなぁ~」

『真眼は隠しスキルなんだが…』

「え?隠れてなかったですが…」

『それがおかしいんだが…色々規格外だなお主らは…』


「で、おいらは?」


「「ん?」」

『ああ、そうじゃったな。お主のはこれだ』

「ありがと、おっちゃん!」

「…誰?」

「猫耳…」

『お主らの飼い猫だぞ?取り残されてもかわいそうだから連れて来ておいた』

「え」

「マジ?シロなの?」

「そうだぞ、父ちゃん!どっからどう見てもおいらだろ!」

「すごい、シロが人になってしゃべってる…」

「おいら嬉しいぞ!父ちゃん母ちゃんと話せるなんて思ってなかったからな!」

「これは結構感動ものかもなぁ…」


さて、スキルは…


【固有スキル】

"変化" … 猫型と人型どちらにも変化出来る。

【スキル】

"気配遮断" … 自分の気配を遮断出来る。スキルレベルにより効果上昇。

"気配感知" … 他者の気配を感知する。スキルレベルにより効果上昇。


「うーん、猫だな」

『さて、これで全員分だな。後は持ち物だが、衣服はあちらの世界に合わせたものと、装備品も用意しよう。後はこの収納袋を全員分渡しておこう』

「これは猫型ロボットが持ってるようなアレって認識でいいです?」

『チャレンジャーだなお主…まあ概ね正しい。生物は入れられず、入れた時点での状態を保つ。無限に入るわけではないが困ることはなかろう。換金できるアイテムも袋に入れておく』

「あざーす」

『さて、それでは転移させるぞ。異世界での生活が良きものになるように祈っておるよ』

「スキル的に大変なことになりそうですけど…」

『言うな、分かっておる…ではな』



そして、また俺たちは光に包まれた---

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