58話
魔力切れのせいで、朦朧とする意識に何とか喝を入れて魔術教会までは、意識を失うことなく到着することが出来た。
確認しなくては。
万が一にも効果が残っていたら、教会のてっぺんにあるキツネの遺跡を破壊してでも内海宮に戻らないといけない。
桐山の太ももに現れた、百合の模様。
それが消えない限り、任務完了とは言えない。
出迎えたキツネを見つけると、脇を抱えてくれていた魔法使いを振り切り、キツネに縋りつく。
「模様は! 桐山はどこ!?」
俺の視界には桐山の姿は見えない。
無事なのだろうか?
泣いていたあの娘は、どうなった!?
キツネは俺の言葉にすぐには答えてはくれない。
キツネの沈黙が、やけに長く感じる。
「・・・・・・無事や。模様は無事消えたで」
その言葉を聞き、張り詰めた糸が切れた気がした
キツネの表情が、やけに固く見えた気がしたがそんな事はどうでもよかった。
桐山が無事である。
そのことが、どう言う訳か今までの任務の成功よりもうれしかった。
あの娘を救うことが出来たんだ。
その喜びを感じると、安らかな気持ちのまま眠りに着くことが出来た。
◇ ◇ ◇
一日眠りこけて、キツネ謹製のただ魔力を戻す用の遺跡を握りつぶすと体調などに不調も無く十分な回復が出来た。
一応の大事を取って、今日一日は教会内で休んでいくように言い渡された。
何と豪気に3食出してくれるという、喜んで休ませてもらうとしよう。
桐山はと言えば、俺が起きた時には魔術教会に彼女の姿はなく俺への伝言すら残さず帰っていた。
・・・・・・いや、いいよ?
確かに世界の危機だったんだし、そっちを優先したように思われてもさ。
けどさ、一言ぐらいあっても・・・・・・ね?
日本人ですから、お礼のキスとか風習ないし・・・・・・恋人でもないから? 胸に飛び込んできてくれるとか期待してないけど、せめてさ、カッコぐらいつけさせる機会ぐらい欲しいわけよ?
一応、思春期の男の子でもある訳で・・・・・・女の子の前でかっこよさ気な一言ぐらい、言いたいじゃない?
もうちょっとさ、男の機微に敏感じゃないとさ、
「モテないぞ、桐山よ」
「モテなくって悪かったわね」
一人愚痴を言っていたら、何故か返事が返ってきた。
恐る恐る声の方を向くと、ベッドに横たわる俺を非常に冷たい目線で見下ろす桐山の姿があった。
真っ白に染まった頭で必死に弁明の言葉を考える。
「あ~、その、これはだな・・・・・・」
駄目だ!! 何といえば釈明になる!?
全部思ったことを言ってしまえば、伝わるとは思うんだけど『かっこつける機会をください』なんて、流石に恥ずかしくって言えないぞ?
どうするどうする!?
「もう大丈夫みたいね、身体の方は」
おおー、向こうから話を変えてくれた!
気遣いのできるいい娘さんだ。きっと君はおモテになるだろう。
「ああ、キツネが遺跡を用意してくれたからね。体調の方はもう大丈夫!」
「そう? じゃあ、これ無駄になったわね」
そう言って、俺に石ころを投げてよこす。
とっさに受け取ると、その石ころは俺の手の中で音も無く崩れ去る。
「え? これって・・・・・・」
「近くにあった、未回収の遺跡よ」
「採ってきて・・・・・・くれたの?」
「ええ」
「・・・・・・俺のために?」
「余計なお世話だったみたいだけど」
ま、マジか。わざわざ俺のためにそんな危険なことを・・・・・・。
「ゴメン。心配かけたみたいで」
「え? ああ、お互い様でしょ? 気にしないで」
俺から目をそらす桐山、一瞬の静寂が訪れる。
あ、あれ? 以外と今って良い雰囲気だったりする?
いや、自惚れるな。
あれほど嫌われてた相手だ。
で、でも、仮にも命の恩人になるわけだし、好感度的にそこまで悪いままのはずないよな。
沈黙を続ける桐山の物憂げな表情が、俺の視線を離してくれない。
い、いや、命の恩人と言う立場をかさに着て付き合いたいとかそう言うんじゃないから。
そりゃちょっと、期待してるかもしれないけどさ。
・・・・・・ごめんなさい。本当はすっごく期待しています!!
桐山の口から何か優し気な言葉でも出たら、今の状況で理性を抑えることが出来るか正直微妙です!!
カッコつけたいとか、正直強がりです。本当はもっと即物的なことを期待していました!!!
一瞬の躊躇を見せ、桐山が俺の方に手を伸ばす。
頭が真っ白になり、俺はその手を握り返した。
「ちょっと!! 何してんの!?」
振り払われる俺の手。
え?
「え? ・・・・・・なに?」
いまってそういうながれじゃないの?
手と手を取りあって、的な?
「なにってこっちのセリフ!!」
そして、再度俺の方に手を伸ばす桐山。
あ、あれ?
握り方がおかしかったか?
もう一度、桐山の方に手を伸ばすと桐山の手は引かれる。
なに? 何この遊び!? 知らない、俺知らない。
え!? この世界の常識かなにか!?
「どう言う事?」
行く先を失った手をどうしたらいいものか、彷徨わせながら疑問を口にする。
「どういうって、私は盗掘師、あなたは遺跡を使う人。盗掘師が何のために遺跡を人に渡すと思ってるの?」
・・・・・・。
ああ、ああ。 そういう、ああ! そう言うことか!!
「ガッカリだ!! 心底ガッカリだ! 桐山、お前最低だぞ!!」
「へ? ・・・・・・ああ! そう言う事・・・・・・あなたも十分最低だと思いますけど!?」
「はあ!? 俺の何が最低だって言うんだよ!?」
「命の恩人だって、女の子に迫ろうとしといて! 最低以外に形容できる!?」
「は、はあぁ~!? い、言ってないし! 俺そんな事一言でも言いましたか!?」
「十分態度で言ってたじゃない!! 最っ低! 野人! 野生動物!!」
「はあ!? 意味わかんないんですけど!! 大体何想像してそんな結論に至ったわけ!? ぷぷ! 最低なのはどっちの思考ですかね!!」
会っては、喧嘩を繰り返す俺と遠山。
けど、何となく日常というところに帰ってきたのかもしれない。
そう思える不思議な時間だった。
「兎に角!! 遺跡核使ったんだから、払ってよ!! 1000万!!」
「払えるか!!」
前言撤回!!!
「桐山、やっぱりお前はモテないわ。この銭ゲバ!!」
「あなたには関係ないでしょ! この変態魔術師!!」
「俺は変態じゃねー!!」
変態なんて人に向けて使う言葉じゃないからね!!
遅くなりました。申し訳ありません。
次回投稿は12/24を予定しております。
では、次回投稿で。




