3話
「この世界の特徴、覚えてる?」
俺のいた世界と似て非なる世界。
何を置いても上げられるのは、魔法の存在だろう。
「あぁ、魔法を担保するのに神様たちが天上の国があるとかないとか?」
そう、この世界には神様たちが存在、滞在する場所がある。
もちろん、神様と対になる存在もいるが、彼らも要するに神様の一種だ。
そんなファンタジーな場所を含めてこの世界は構成されている。
「そや、魔法が先か神さんが先かはえぇとして、神さんと共存している世界と理解してくれたらえぇから」
「はぁ」
詳しくは理解できなかったが、この世界を創った神だけではなく、別の世界を創った神達もこの世界を訪れているらしい。
ざっくりと、神様の保養所という理解でいいかな。
「神さん言うんは、人と共に成長するもんなんやけどな? 若かりし時のやんちゃってヨクアルヤン? 神になるとその規模もけた違いでな。やれ、大陸に大穴開けてみたり、遺跡に天候操作する機能つけてみたり、火山を操作してみたり色々やってしまうやろ?」
え? 天候操作? 火山の操作?
そんな危険なものをやんちゃ? そんな可愛いものではないと思うんだけど。
「そういった人に見つかっていない危険な遺跡を封印することが、魔術師の仕事やったんや? でもな・・・・・・ある時からイタイ人らが邪魔するようになってん。私が神の代行者だ~ってな。」
まぁ、居ても不思議じゃないけど、実際コンタクトをとれる相手がいるのに、それを自称しちゃうの?
ああ、だからイタイのか。
「当の神さんは、若気の至りを見せつけられて、仕事も手につかんくらいへこむんや。顔覆って何ヵ月も床転がりはってな」
黒歴史掲げられて、崇め奉られる訳か・・・・・・それは死にたくなるな。
あ! 俺の黒歴史・・・・・・は、存在が無くなったからそれも無くなったのか。
怪我の功名って奴だな。
「そんな訳で魔法使い総出でボコってたんやけど、同時多発したら対応出来んくなるやん? そんで生まれたのが少数で制圧から封印までこなせる魔術師という訳やな」
「魔法使いと魔術師って同じじゃない?」
「アッホやなぁ~、この世界で魔法使えない奴おらんのよ? その中で魔法使い名乗れて、更にその上の魔術師名乗れるような奴は、次元が違うわ!」
まあ、確かに。魔法を使うだけなら小学生でも出来るらしいし。
そんな世界の魔法使いか・・・・・・想像もできないな。
「分かった分かった、で? それをやるメリットは?」
「先ず給料が良い」
「具体的には?」
「聞いたとこやと、これくらいやな」
マジで! 前の給料の何倍だよ!
やる! やります!
あ! でもな、それだけ危険な仕事なんだろうな。
迷うな。
「後は、キミの身体の子が使った遺跡由来の力について不問に出来るかも」
え?
遺跡? 不問って?
「いや、どの神さんの遺跡かはわからんのやけど、多分遺跡の力使わんと君がここにいる事説明できんし、遺跡の使用ってかなりの重罪やねん。実はな」
え? 聞いてない。
「うん、言ってない」
俺が償うの? 他人・・・・・・ではないけど、俺じゃないよ?
「言いたいことは分かるで? でもな、何とでも理由つけられんねん。残念ながら」
確かに何らかの危険があるとか言って、幽閉ぐらいは出来そうだ。
何せ、人間の限界まで魔力を引き上げたらしいからな。
それにしても、重罪って。
嘘・・・・・・だろ。異世界来たら刑務所暮らし?
「やから、魔術師になって、魔術教会に所属すればえぇねん」
魔術教会? 確か国際機関だとか言ってた、あれ?
魔術は神様がもたらしたものだから、神に仕える機関が必要で、
「せやせや。教会なら国もおいそれと手出しできんし、色々と建前も作れるし、上手くすればキミを巻き込んだ奴をボコることも出来るかも」
確かにそんな事手紙に書いてあったな。彼女だっけ?
黒幕か、いたら確かに殴りたい。こんな事に巻き込んでくれたんだ、男女がどうとか言ってられない。
って言うか、絶対殴る。これ決定事項だな。
若い子の人生と俺の人生を弄んだやつが、普通に生活してて俺は刑務所暮らしなんて冗談じゃない!
魔術師になれば、ソイツの情報も、手にはいる可能性もある。
代償は、危険な特殊任務って訳か・・・・・・。
正直、危険なことに首を突っ込むのは、俺の心情からは外れるけど。
やられっぱなしってのも、面白くはないな。
何を企んでいたかは知らないけど、一泡吹かせないと気が済まないよな。
よし! 決めた!
「俺、やります!」
「ええ返事や、じゃぁ、お偉いさんに会いに行こか」
再度、キツネのあとについて行きエレベーターでかなりの上層階に連れていかれた。
このエレベーターも電気じゃなく、魔法由来の力で動いているのかと思ったら、どこか恐ろしく感じてしまう。
窓から外を伺うと、ここがどこかがやっと理解できた。
あの電波塔のような建造物。
その中に、いるみたいだな。
眼下には、俺の生家に似た建物も見える。
「おーい、こっちやで」
あり得ない角度から見下ろしていた我が町とそっくりな街並みから目を外し、キツネの後を追う。
大きな自動扉を潜ると、そこには普通の中年男性。
見るからに中間管理職と言った風体の人が待ち構えていた。
「ようこそ、魔術協会日本支部へ」
典型的な日本人に見える男性は、両手を広げてハグをしてきた。
俺の知っている日本とは、若干文化の違いもあるみたいだな。
「いや、この人だけやで。ワシの時は頬ずりもあったけどな、部下の人らは握手までやったで」
「いあや、失敬失敬。私は支部長と本部理事も兼任していまして、向こうの癖が抜けないんですよ」
HAHAHAと、笑う姿はちょっとだけイラっとさせられた。