小太郎 魔法の兜
端午の節句
至る所に 青空を壮大に泳ぐ鯉の群れ
小太郎5歳の こどもの日
「母ちゃん!俺も鯉のぼりが欲しい!」
「小太郎は 兜飾りがあるでしょ」
「でも 俺も鯉のぼりが欲しいぞ!」
小太郎も鯉のぼりを持ってはいた
「おぉ!でかした!男孫だ!」
小太郎のじいちゃんにとって 2人目 の男孫
小太郎が産まれて 3日目
「ほ〜ら 鯉のぼりだぞ!」
「お父さん…まだ早いよ…」
「早いなんてあるか!」
「だって…それ 来年まで上げられないよ…」
小太郎が産まれたのは 5月5日
「母ちゃん!おじちゃん達来たぞ!」
「お兄さん いいところへ!」
「小太郎!ほらお土産だ!」
「おじちゃん!ありがとう!」
「お兄さん これ 上げてやりたいんだけど…」
「おぉ!任せろ!」
「小太郎!鯉のぼりは何故 空に泳がせるかわかるか?」
「何でだ?」
「鯉はな 滝を登り切ると 龍になるんだぞ!」
「そうなのか!」
「そうだ!」
鯉のぼりをあげる一説として
滝を登りきった鯉は 龍と化し 天に昇るとされている
龍のように強い男の子になるようにと鯉のぼりが出来たのだ
「小太郎来てみろ!」
「おぉ!鯉のぼりだ!」
黒 赤 青の鯉が悠然と空を泳いでいた
「お兄さん ありがとね ウチの人いないと上げてやれなくて…」
「簡単に上げられるようにしておいたから この紐を解いて 引けば降りるし 逆に引けば上げられるから」
「ありがとう」
「母ちゃん…葉っぱが…」
「小太郎!葉っぱは食べないの!」
おじちゃんのお土産 柏餅をそのまま食べる小太郎
「小太郎 誕生日おめでとう!」
「おぉ!ケーキだ!」
「ほら 小太郎!これはおばちゃんからプレゼントだよ」
小太郎の誕生日
おじちゃん おばあちゃん そして小太郎の従兄弟のあんちゃんが来ていた
「あんちゃん!いいもの見せてやるぞ!ちょっと待ってろ!」
「見ろ!」
現れた小太郎は 鎧姿だった
「小太郎!着ちゃダメって言ったでしょ!」
「カッコイイだろ!」
「全くもう…」
「いいんだぞ!小太郎 それはな 小太郎が病気や怪我をしないように守ってくれるもんなんだぞ!だから 着てもいい ただ 大事にするんだぞ!」
「おぅ!俺 大事にするぞ!」
兜飾りを持ってる男の子なら一度は憧れる鎧姿
「母ちゃん 今回も父ちゃんは帰って来ないのか?」
「そうだね…ゴールデンウィークは父ちゃん 一番忙しいみたいだから」
「そうなのか…」
小太郎が産まれた時も 父ちゃんは居なかった…
「父ちゃん 俺の誕生日忘れてんのかなぁ…」
「そんな事ないよ」
「俺…父ちゃんに会いたい…」
「小太郎…」
やんちゃな小太郎だが まだ5歳児…
翌日
「小太郎!ちょっと来てみな!」
「どうした?母ちゃん」
「父ちゃんから小太郎に荷物届いたよ!」
「何!本当か?」
開けてみると 手作りの紙で作った兜が入っていた
「なんだこれ?」
「小太郎 これは こう被るんだよ」
「おぉ!カッケー!」
「小太郎 父ちゃんから手紙も入ってたよ」
「母ちゃん 読んで!」
※小太郎 誕生日おめでとう
なかなか 帰れなくてごめんな
だが 小太郎も もう5歳だ
母ちゃんを 父ちゃんの変わりに助けてやるんだぞ
一緒に贈った 兜 は 父ちゃんが作ったんだぞ
何かあったら それを被れ!
誰にも負けない強い男の子になれる魔法を父ちゃんがかけておいた
母ちゃんを頼んだぞ※
「これを被ると強くなれんのか…」
「小太郎…本当にそれで幼稚園に行くの?」
「おぉ!これ被れば あそこ 通れるんだ!」
小太郎は 幼稚園までの道のりで一ヶ所避けて通る場所があった
そこは 大型犬を飼っている家
繋いではあるが 子供が通ると勢いよく吠えてくる犬で みんな そこ を避けていたのだ
「母ちゃん 行って来るぞ!」
「幼稚園に着いたら 兜 脱ぐんですよ…」
「おぅ!」
幼稚園の門のところに園児達が登園してるのが見える
いつもなら この角を曲がり 犬がいる家を迂回して幼稚園に行く小太郎
他の園児も そうしているのだ
しかし 今日の小太郎は 魔法の兜を被っている
誰にも 負けない 兜を…
「みんな〜!」
幼稚園の門前に居る園児が 声のした方を一斉に見る
「アレ?太郎ちゃん 何被ってんだ?」
小太郎5歳児 みんなの注目を浴びたいお年頃…
「見てろよ〜〜!」
「よし!行くぞ〜〜!」
小太郎は 迂回せず 真っ直ぐ歩き出した
「太郎ちゃ〜ん!危ないよ!」
「小太郎く〜ん!犬に吠えられるよ〜!」
門前に居る 園児達が小太郎に注意をしている
小太郎は 脇目も振らず 幼稚園の門を目指した
犬がいる家の前に差し掛かった時 小太郎の緊張はピークに…
あまりの緊張で 右足右手 左足左手が一緒に…
その時
「ワン!ワンワンワン!…」
小太郎は 一瞬かなりな勢いで飛び上がる…
それでも 前に一歩一歩進む小太郎
「太郎ちゃん!後ちょっとだよ!」
「小太郎くん!もう少し!」
門前にいる園児達の声は 注意から 声援に変わっていた!
「後少し!後少し!…」
園児達の 後少しコール
既に 犬は吠えていないが 小太郎 園児達はそれには気付いていない
小太郎がみんなの居る 門にたどり着く
「やったぁ!太郎ちゃん スゲー!」
「小太郎くん すご〜い!」
「父ちゃん!俺やったぞ〜!」
まるで RPGでラスボスを倒した英雄と化した小太郎
「母ちゃん!ただいま!俺やったぞ!」
「小太郎 おかえり 何をやった…小太郎!ま〜たそんなに汚して!」
「そういうなよ 母ちゃん…怒るとシワ増えるぞ!」
ペシッ!
「痛っ!」
兜を被る小太郎!
「これで 母ちゃんも怖くな…」
ペシッ!
兜を取り上げ叩く母ちゃん
「母ちゃんには効かないよ!」
兜の魔法…母ちゃんには効かなく出来ていたようだ…