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サイクロプス  作者: NEO,s
6/21

チャプター5「絶望のバス」

その鐘の音を聞いたは朝になってからの事だ


寮の玄関に設置されているチャイムの音が

けたたましく、室内を過ぎ去っていく

その高音は俺の安眠を妨げ、深い眠りの中から外の現実世界へと引きずり出してくれた。


時計を見るともう6時35分を回っていた


寝ぼけ眼で玄関へと向かい

覗き穴で外にいる人物を確認する前に返事をした

「だれですか?」

朝、早すぎる時間の来訪客に少し不安を覚えながら

おぼろげな口調で尋ねる

ドビラの向こうに居る不審者はあっさり答えてくれた

「自衛軍です」

その言葉を聞いた俺は、昨日の事を思い出した

「あ!?」

覗き穴から外の様子を窺うと

扉の向こうには自衛官が一人、綺麗に敬礼の姿勢で立っていた

「今日入隊だと聞き、お迎えにまいりました」

「○○であります」とか言わないのかな、、、、。

自衛官といえば「であります」といった感じだと思っていたのだけれど


恐る恐る扉を開けると、扉の向こう側の自衛官は爽やかな笑顔で接してきてくれた

「朝早く大変ですね」

扉あけた俺の顔は急に目覚めたせいで

未だ皺くちゃで、はっきりしない表情をしていた

呑気だと思われたかもしれない

「いえいえ、仕事ですから」

ハキハキとした口調で

続けて自衛官が喋りだす

「それよりも準備はできていますか?、当分ここへは帰ってこれないので」

呆然と立ち尽くしている俺に問い掛けてくる

「え、ええ、まあ」

淡々と喋る自衛官

「そうですか、赤紙にも書いてあったと思いますが、私物の持ち込みはいっさいできませんので」


自衛官は更に淡々と話を進めていったせいで

俺の頭は回りきらずに話の内容がまるっきし入ってこない

さらに言ってしまえば、私物の持ち込みを禁止しになっている時点で

準備するものなど全くないのだ


唖然と見つめる俺に

一拍の間を挟んで自衛官が答える

「家族への連絡はすんでますか?」

その一言で大切な人達を思い出した、、、。


あっ、親に連絡するの忘れてた

昨日はあのままずっと寝てたし、、。

「いえっ、まだですけど」

慌てて、部屋の奥で野放しになっている携帯電話を手にとって電話をかけようとする

そんな俺を自衛官が注意した

「ダメだよ〜、ここら辺一体は情報規制がされているから、電話類は一切使えないんだ」

そんな事を言って自衛官が自分の持っている携帯電話を貸してくれた

確かに自分の携帯電話のアンテナは圏外になっている


早速実家へと連絡をしてみると電話の奥で聞きなれた声の主からいきなり質問攻めだ

暫くの会話をしただろう

親を安心させるだけでかなり精一杯だった

自分が直接軍隊に関らない事とか、まあ色々。


電話を切り一言おれいを言って、電話を返却する

「ありがとうございました」

ごく一般的な人への挨拶だ

「それでは行きますか」

その後自衛官へと連れられて

寮の外へ出た俺は、寮の前へと止まっている自衛軍の車両を確認した

映画でしか見た事の無い装甲車だ

さらにその後ろには自衛軍のバスが何台も列なっている


俺は自衛官の後ろをゆらゆらと歩き

自衛官はそんな俺をバスまで誘導する


そんな俺は

ふと異様な光景を目にして立ち止まった


「隣の部屋が、、。」


それは普通のお隣さんの部屋だった


俺の住んでいる寮は各階6部屋の二階建てになっている

そして俺の部屋はというと、1階の102号室

1階の正面から入って2番目の部屋だ

その部屋は調度自分の部屋の左隣に位置していたるので

外へ出掛ける時は必ずその部屋を横切って行かなくてはいけないのだ


確かそこの住人は女の学生が住んでたと思う

全てが俺の通っていた学校の生徒なので大体の寮の人の顔は覚えている

そしてそいつの事もハッキリと覚えていた

覚えていたといっても隣に住んでいるのに挨拶もろくにしていない俺は

印象に残っている程度といったところなのだが


その部屋の扉を見るや、俺は言葉を失っていた

「、、、。」

その部屋の扉が打ち抜かれていたのだ

見るも無残な姿になっている

車が正面の扉に突っ込んだ後のように

ポッカリとその部分だけがないのだ


気になってしまったので俺の先頭を歩く自衛官に部屋の事を聞いてみることにした

「ここの部屋、どうしたんですか?、扉が無いですけど、、。」

その時の俺の口調はとても弱々しかったと思う

確かにその扉、昨日買出しに行った時には、はめ込んであったはずなのに。


少し言葉を選ぶ素振りをしたあと

自衛官が答えてくれた

「ああ、そこの部屋ね、チャイムを鳴らしても返事が無かったから扉をくり貫いたんだ

よ、案の定中に住人は居なかったけどね」

少しの溜め息の後、自衛官がまた喋りだす

「困っちゃうよね、後で探す身にもなってほしいよ」

困ってしまうのはこっちの方だと心の中で咳きながら

逃げなくて良かったと少しの安堵を噛み締めた


またトボトボと自衛官の後ろを歩く俺

やがてバスに乗り込むと、見知っている顔の多さに驚いた

まあ仕方ない話なのだろう、学校全体が徴兵されているのだから

状況が状況なら軽い遠足である


少して先ほど俺を誘導した自衛官と上官らしき人が入り込んできた

「それにしてもこのバス誰も喋っていないな」

そんな事を呟く俺の正面で

自衛官と上官らしき人が会話をしている

話の内容が良く聞き取れる

「ここでの徴兵は以上であります!!」

「ご苦労、それでは出発する」

どうやらここら一帯の徴兵は以上で終了したという事らしい

説明もなくバスのドアは閉まり

エンジンの音が座席全体に伝わってきた

いよいよ発進するらしい

発進する直前各座席に目隠しが手渡され説明が入る

「今回君達が運ばれる先は軍の重要施設である、機密には最善の注意をはらい君達には

目隠しをしてもらう」

この状況下で逆らう者が誰一人も居なかったのは奇跡というしかないだろう

まあ逆らうのなら、予め逃げ出しているか

文句言って殴られるのも嫌なので

みんなしぶしぶ目隠しをする

目隠しする直前の眼光は目の前の自衛官を直視していた


しばらくして絶望のバスが走り出した、詳しい到着場所も告げずに



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