チャプター1「仮想戦争」
ふと気がつくと、俺は戦火の中にいた
「爆発するぞ!!」
鳴り止まぬ轟音、耳元を吹き抜けていく銃弾
まさに不快と言うしかない現状の真っただ中に今俺はいる
第二次世界大戦が終了して、世界は一時的な平和を手に入れた
だが、それは一時的な平和といっていいだろう
大戦以降も戦争は各地で勃発し、絶える事のない民族紛争は今でも続いている
そんな中、遂にアメリカが戦争の火種を落とした
そう、みんなの記憶に新しい「イラン空爆」である
空爆以降、世界の情勢は乱れ原油の値段は高騰し、混沌とした世界情勢はついに
第三次世界大戦を引き起こした
ロシア、中国を代表とする連軍、新世界連合軍は、アジア全土を一瞬にして飲み込み
領土を拡大していた
一方
アメリカ、EUを代表とする連軍、国際連盟軍は、新世界連合の数で圧倒する戦略に苦戦していた
この頃の日本といえば酷いものだ
防戦虚しく、新世界連合の植民地と化していたのだから
元々の軍事力はあるのに、同盟国、アメリカとの距離や、中国の軍事力の増大に対処しきれなかったらしい
そんな中、俺は戦場に立っている
しかも中国の大都市内
既にここも廃墟と化してしまった
そんな俺達の任務はと言うと新世界連合軍の拠点衛星施設まで行き
施設を爆破するミッションらしい
今俺は傭兵だ!!
俺の隣にいる傭兵仲間は誰とも、何処の国出身なのかも解らない
そして
一人、また一人、仲間がやられていく
「伏せろ!!」
隊長の掛け声で隊が動く
そんな隊長の掛け声を聞いて
一斉にみんな伏せるのだが
そんな中、身を伏せずに撃ち続ける奴
タァー―――ン――――――――
案の定そいつは狙撃された
「バカが無駄死にしやがって」
思わず口にしてしまう一言
「仕方ないさ、今は戦争中、目的の達成だけを考えろ」
隊長は冷静だった
「それよりもヤバイな、このままだとみんな狙撃されちまう」
さっき狙撃された兵士を見て隊長がいう
「道の選択を間違ったか、そこの角を左に入ってビルの隙間に入る、みんな着いて来い!!」
ここは広い大通り、大きなビルが建ち並ぶ繁華街だ
調度、その中心あたりにあるバリケードを盾にして銃撃戦をしている
そんな中、調和を乱して射撃を続けていた兵士の一人が敵軍のスナイパーに狙撃された
そこで隊長は中央突破の作戦を急遽変更して
ビルの路地を縫って通り、隣の大通りへ行く作戦へと変更したのだ
作戦を変更しても戦況はたぶん変わらないだろう
俺達は隊長の後を追うように路地へと入って行った
そんな俺達を見て敵軍も隣の通路へと移動する
どうやら先に路地を抜けて待ち伏せする作戦らしい
路地を半分くらい進んだ時だろうか
先頭を進む隊長が急に止った
「おーし、止まれ、引き返すぞ!」
隊長の一言で隊が動く
先頭は入れ替わり
路地を引き返す
俺達の隊は圧倒的に不利な状況だった
敵軍の数はこちらの5倍はあるだろう
爆破ミッションであるがゆえに
大人数で押し寄せて行くなど考えられない状況なのだ
そんな状況の中、小隊が敵の中部隊に発見されてしまった
まず正面から行けば勝ち目はないだろう
戦争とはそういうものだ
英雄などいない
数がいつも物をいう世界なのだから
路地を引き返す小隊
少し前に居た通りまで引き返す
路地から少し覗いてみると
案の定敵は分散していた
「守りの兵士は2人だけか〜」
こちらの残りの兵隊は5名といった所
正面から行けば数で勝てるはずだ
そんな事を考えていた時だ
手前にいた兵士の一人が敵へと手榴弾を投げて牽制を仕掛ける
その瞬間脳裏に衝撃が走った
隊長も同じ事を考えていたらしい
「不味い事をやってくれたな〜、あれじゃー分散していた兵士が音に気が付いて戻ってきてしまう」
隊長と俺はすでに路地へと逃げ込んでいた
先ほどの大通りから銃声が激しく聞こえる
前衛の3人は今も大通りで戦っているだろう
数秒後の後、手榴弾の爆発音を聞いた
果してあの状況下で何人が生き残っているのだろうか?
そんな事を考えている内に、路地から反対側の大通りへと抜ける
先頭にいたのは隊長だ、隊長が先に路地へと足を踏み出した瞬間だったか
スナイパーライフルの甲高い銃声を聞いた
タァー―――ン――――――――
それを後ろから見た俺は動く事が出来なかった
次は俺の番なのか
結局こんな作戦無理だったじゃないか
いろんな事が脳裏を過った
数秒の後、大通りから現れた敵兵は何も言わず
最後に見た光景は俺にライフルを向ける敵兵士の姿だった
程なくして
俺は甲高い音を聞いた、、、、、。
一瞬だろうか
目の前が真っ暗になった
少しの間の後
仲間を上空から見つめる事が出来た
キーボードの「Tab」を押すと
今残っている兵士の人数を確認する事ができるようだ
どうやら手榴弾を投げた組が敵の裏取りに成功したみたいだ
ディスプレイの左下にチャットが表示されていた
ID
島根の隊長「惜しかったね(・3・)b」
Ore 「まあ次がありますからねw」
島根の隊長「敵のスナイパーが優秀でさーーー」
ボルボ 「w」←最初に撃たれた奴
鷹の爪 「うわーーーーん」←分散した時に味方の手榴弾をくらった奴
敗者のチャット場が荒れる前にアナウンスが流れた
「レッドチームの勝利!!」←爆破側
どうやら勝負がついたみたいだ
キール 「プゲラ」←敵のスナイパー
Kouji様が入室しました
Kouji 「んっごいもぢいぃぃぃぃぃwww」
Kouji様が退出しました
Kouji様が入室しました
島根の隊長「('A`)」
Kouji 「お前ら弱すぎwwwww」
島根の隊長「厨乙w」
Kouji 「( ´_ゝ`)」
そう、これは現実の話ではない
FPSというネットゲームの話だ
決して現実ではない
3年前の話だったと思う
アメリカがイランを空爆した
その事実は今でも世界に波紋を呼んでいる
そしてその事実をゲーム会社が取り上げて、10年後の世界を舞台にしたゲームを作成した
そんなFPSにも色々あるが
今俺がやっているゲームが一番人気だ!!
さてもう一勝負しようか!!