チャプター12-3「反撃終了:第3ラウンド」
キューブの天辺に登って早々04号機から通信が入る
「お手柄やったな」
「お帰り〜、大丈夫だったみたいね、、。」
「ええ、なんとか生きてますよ。04号機さんの援護がなかったら今頃やられてました」
俺の無事を確認して隊長がまた動きだす
ピヨーン ガシャーン ピヨーン ガシャーン
「あの人戦闘は苦手なわりに、移動ははやいんやから」
半ば呆れる調子で04号機が答えた
確かに、移動だけは早い
次の敵が何処にいるか分かっているのだろうか
ああ、もう25メートルも進んでいる、、。
25メートル先では隊長が辺りを見回していた
先ほど同様、敵を探しているみたいだ
今の状況、頭数なら現在こちらの方が有利だが、少し疑問が残る
先ほど俺は03号機を助ける為に上空から降り注ぐように落ちていった
敵にぶつかって空を見るように仰向けの姿勢で倒れこんだ
それを04号機が射撃したにせよ、俺たちがキューブの上に登っている情報が少なからず
流れているはずだ
俺は大慌てで隊長へと通信を入れる
「隊長、俺達がキューブの上に登ってるって事敵にばれてるかもしれません」
「えっ! 何で?」
隊長から気の抜けた返事が返ってきた
そして通信の終わり際だろうか隊長の歯切れの悪い悲鳴と共に敵のライフルの射撃音がなった
「キャッ!?」
音に気が付き俺達の前方にいる隊長を見る、どうやら隊長機は無事なようだ
すぐさま、キューブ中央へ引っ込んだので直撃はしなかったらしい
暫くして、04号機が隊長と同じキューブへとたどりついた
そして俺も04号機に続くように正面にあるキューブへジャンプしようとした瞬間
地面から奇怪な音が鳴った
カチッ ポーーーーーーーン
グレネードランチャーの発射音だ!!
やがて上空に煙を噴いた丸い物体が姿をあらわし、俺達のはるか上空を過ぎ去っていった
その後ランチャー弾は、俺達の居る地点より大きく右の方へと流され
まばゆい光と共に、消失した
俺はと言うと、煙を吹く丸い物体に驚き
足を踏み外して、また地面で横になっている
「ああ、また地面を見る羽目になるなんて」
微かに咳き項垂れる俺は、自分の機体が先ほど同様起き上がるのを待っていた
それに、してもタフな機械だ
人工筋肉を使ってるって言ってたっけ
5メートルの高さから二度も落ちたのに
体力は減らないし(画面左下のゲージ)
ぶっ壊れないし、ロボット工学も進歩したものだな〜
TSCに関心している俺を尻目にまた奇怪な音が直ぐそばなった
カチッ ポーーーーーーーン
2発目のグレネードランチャー!!
どうやら敵さんは、キューブ上に居る隊長達へ射撃が届かないものだから
嫌気がさして、グレネードで一掃しようとしたらしい
だが、そのランチャー弾は無残にもまた右の方向へと大きく流されて行く
そして流されて行くグレネード弾は何所から撃っているのか俺の視界から良く見えた
音の鳴った場所で敵の居る位置も把握できる
多分俺の居る所の、左隅のキューブにある通路で敵機は上空を見上げているのだろう
やがて俺の居る所に03号機が到着した
足を踏み外して地面に落下する所を見ていたのだろうか
03号機が操縦するTSCの無表情さがやけに心に刺さるのを感じた
03号機が合流した事を確認して隊長達へと連絡を入れる
「どっから弾飛んできたか分かりますか?」
すぐさま04号機から通信が返って来る
「そこの隅っこやったと思うけど」
やはりそうだ、敵は左隅に居る
「ちょっと行ってきます、そこでジャンプでもして敵を引き付けておいてください、足踏みでもかまいません!」
「せやなー、ジャンプしとった方がおちょくっとる用にみえるわ〜」
「えっ!?敵さんを挑発しちゃうの」
暫く考え込む間があっただろうか
やがて隊長達が、キューブの天辺でジャンプし始めた
ドカ ドカという凄い音が敵の恐怖を誘う
急いで03号機へと通信を入れる
「03号機さん、そこの隅にいる敵を倒しますついて来てください」
俺は連絡を終えると既に走りだしていた
敵は今よほど混乱しているだろう
むしろ混乱していてくれないと困る
敵側も少しは固まって動いていたのなら、こんな状況にも対応できたのだろうけど
動き出した俺につられて03号機が俺の後をついてくる
左隅にあるキューブの通路へ飛び出した時
敵の青いサイクロプスは上空に向けて銃器を構えていた
俺達に気がついたのだろう、大慌てで地上組に照準を合わせようとする
だがもう既に遅かった
ダダダッ ダダダッ ダダダッ
ダダダッ ダダダッ
弾丸の波は敵が銃器を構えるよりも一瞬早く通過し
やがて、敵のサイクロプスは地面へと倒れこむと、そこで動くのをやめた
ここまで3体倒すのに4分
このままいけば俺達の勝ちなのだろうか
かなりの労力を使った感じがした
自分が動かしているのは指だけなのに、この疲労感はなんなのだろうか
そんな俺を尻目に隊長がまた動き出す
キューブの上なら幾分安全だと思ったのだろう
ピヨーン ガシャーン ピヨーン ガシャーン
次は右側へと隊長が移動しいて行く
やはり隊長の移動は早い
隊長は俺達を置き去りにしていち早く右隅のキューブへと移動していた
そして地上を見回すそぶりをしたのち
隊長から通信が入る
「なんか敵さんやられちゃってるみたいだよ?」
俺は少しばかりの混乱を見せる隊長へと直ぐさま連絡を返した
「やられてるってどう言う事ですか?」
「敵さんが、動いてないの、倒れこんでるっていうのかな〜?」
気になった地上組みも敵の残骸を確認しに行く
ガシャン、ガシャンと大きな音を立てながら03号機と残骸まで競争である
やがて隊長に言われた地点にとうちゃくすると
そこには確かに壁に寄りかかって倒れ込む敵の青いTSCの姿があった
「誰がやったんだろう?」
04号機も隊長と同じキューブへと到着する
「ほんにな〜、敵さんの無残な姿や〜」
敵残骸を見詰めながら辺りを見回すと、敵の背中の下あたりに
白銀の丸い物体を確認する事ができた
俺はしばらく丸い物体を見つめていた
そして見つめながら通信を入れる
「これって、ランチャー弾じゃないですかね?」
「なるほど、TKちゅう事か」
その発言に03号機と隊長は面を食らってる様子だった
確認するように連絡を入れる
「チームキルですよ、簡単に言うと仲間割れです」
俺の発言で隊長も先ほどの出来事を思い出したらしく
通信が入って来る
「ああ、あの煙を噴いて飛んでいったやっね」
03号機は相変わらず頭部を上下に振っていた
キューブの上から攻めてくるとは思っていなかったのだろう
敵は、慌てて頭上にいる敵に照準を合わせる羽目になったため
冷静さを欠いたのだ
見方が左隅から撃ったランチャー弾は隊長達のはるか上空を飛んで行き
右隅に居る見方へと飛んで行った
そこでやがて発光したランチャー弾は見事に見方を包み込む
不意に飛んで来た見方の一撃を回避する暇もなかった敵機は今無残な残骸となっている
「グレネードでチームキルって! どんだけリアルに作られとんねん!!」
「えっへん、凄いでしょ!」
04号機がすぐさま天狗になる隊長へと突っ込みを入れた
「えばんなや!!」
俺はそんな2人の姿を見て少し気が抜けていた
既に敵を4体倒した
残るは敵の隊長機だけで、ここからが問題だ
やがて気を引き締め直した俺は皆へと通信を入れる
「あとは敵の隊長機だけです、スナイパーライフルを持っているので気を付けてください」
「厄介な奴が結局残ったんやな」
04号機はさらに続けた
「ちょっと確認してくるわ」
そう言うと04号機はすぐさま動きだした
いつもなら隊長が先に動くのだけど
今は銀色の弾をまだ見ているようだった
自分達が作った物に見とれているのだろうか
「あっ、ちょっと待って!」
俺の静止にお構いなく04号機は進んで行く
やがてブルーチームのスタート地点正面のキューブへと04号機がたどりついた
そして、そんな04号機を追うようにして俺達も移動する
「おるでー、敵さんの大将や!!」
下を見回して敵リーダーの姿を確認したのだろう
04号機から通信が入ってきた
そして通信と同時にスナイパーライフルの乾いた重たい銃声が鳴る!!
タァ-----------ン---------
その銃声は第1ラウンド目で03号機を一瞬で沈めた音だ
敵リーダーのスナイパーライフルが火を噴いたのだろう
やがて画面の右偶に04号機がやられたという連絡表示が出現した
その表示と音に気が付き隊長機がやっと動き始めた
それと同時に04号機から通信が入る
「ぬぁーーーーーー、どくそがーーーーーーああああっ!!」
なり興奮気味の叫びだ
耳元では04号機の悲鳴が今もなお続いていた
「どうした?何があったんだ」
「敵のライフルにやられたんや」
俺が04号機の状況説明に耳を傾けていた時だ
03号機が俺の脇を通過した
多分、ポジションを捕ろうとしたのだろう
キューブの隙間を移動して行く
「ちょ、おま今敵将映ったぞ!!」
03号機の画面を見ていたのだろう、04号機から通信が入った
03号機もそれに気が付き足を止めたがすでに時すでに遅そかった
向こう側は一瞬写りこんだ影めがけてスナイパーライフルを一撃
タァ-----------ン---------
重たく乾いた弾丸の銃声がまた一発耳元を通過していく
敵のリーダーはかなりの名手なのだろうか
微かに見えただけの03号機の胴体を射抜いたのだ
全く外す気配を見せない
それでいてかなりこの囲まれた状況に全く動じていない
危険を感じ俺はすぐさま後退しようとした時
通路からレッドチームのスタート地点を一瞬自分の目で確認する事が出来た
それと同時に敵のリーダーの影が一瞬写りこむ
タァ-----------ン---------
「ああ、終わった」
俺は狭い空間の中で小さく眩いた
やがて隊長の画面に俺達の機体番号が表示されただろう
一瞬で3機倒され、気がつけば隊長は最後の兵員になっていた
隊長に通信を入れる
「逃げてください、敵はかなりの強敵です」
沈みきった声で隊長に通信を入れる
「どうしたの? 一体何があったの!?」
気がつけば3機やられたこの状況で隊長は混乱していた
キューブの上であたふたしている様子だ
そんな隊長はというと、ブルーチーム右正面2つ奥のキューブに居る
そこで危険を感じ止まっているのだ
たぶん女の感という奴なのだろう
そこから一歩も動こうとしなかった
幸な事にキューブの中心部分にいるため、 敵がキューブ上に登って来さえしなければ
隊長は敵にやられる事はないのだ
混乱する隊長から通信が入って来る
「どうしよう、どうしたらいいかな、、多分勝てないよ〜」
隊長の困りきった声が敗者達へと通達された
当の俺はと言うと自分の試験が終了した事で脱力しきっていた
隊長は未だ喚いている
そんな隊長のわめきを聞いて、ある事を思い出した
マーキスが始め説明していた特殊兵装の事である
確か隊長機の兵装は一般と違うんだっけ?
待てよ、隊長機ならグレネードがある
それがどんな形かは知らないにせよ
多分持っている事は確かなのだろう
この時点で残り時間はわずか10秒を切っていた
俺はすぐさま通信を入れた
「隊長、グレネード持ってますか?」
「えっ!? 何それ」
隊長の返答は予想通りのものだった
時間がなくあせっていた俺は隊長へ雑な返事を返す
「右薬指のボタンを押して、トリガーです!! 隊長の視点から1つ先のキューブの影に
敵がいるんです、そこめがけて投げて!!」
「急いで!!」「はよせんか!!」
隊長に俺達の最後の叫びが通じたかわわからない
やがて俺達の声に答えるように隊長の赤いサイクロプスは動きだした
腰辺りから丸く銀色に輝くボールを出すと、正面へと投げつけていた
そのボールはキューブ1個分飛んで行くと
地面へと吸い込まれるように落ちて行き、眩い光を放ちながら強烈に発光した
その発光を最後に、試合終了を告げるブザーが鳴り響く
そのブザー音と共に俺達の
激動の
適正試験が、今、終了したのだ