Chapter.2「開幕」
遂に、戦闘描写を書くことになりました!何か至らない点など有ったらコメントをくれると嬉しいです。
さて、此処からがCELLの本番です。以前の話は幕間に過ぎません。血肉沸き踊る、狂気と凶気に塗れた殺し合いをお楽しみ下さい!
後、投稿を遅れた事をこの場で謝罪します。楽しみにしてくれていた方々、どうもすいませんでした。
――――――何処からか、波のせせらぎが聞こえる。
その音で、フランツィアは目を覚ました。周囲は狭く、そして有るのは闇だけだった。
夜目を凝らして周囲を観察すると、すぐ近くにボタンがあった。明らかに怪しいが、彼女は迷わずそれを押した。
―――――ブシュッ。
天井がスライドした。フランツィアは起き上がり、先ず周囲を観察した。
すぐ後ろは砂浜で、海が広がっている。どうやら流されてきたようだ。一体何に入れられて流されたのか。フランツィアは自分がいた場所を振り返った。
「…こんな狭苦しい場所に入れられていたのか…。」
それは、棺桶の様な黒い箱だった。丁度人が1人入って少しだけスペースがある。
「そう言えば、やけに体が動きやすいな。」
そう言って、自分の服装を確かめた。
「…道理で動きやすい訳だ。」
それは、彼女が『現代の斬裂魔』だった頃、着ていた黒い革のライダースーツだった。彼女のモデル顔負けのプロポーションがよく見える。
「それで、此処がその実験をする場所なのか?」
そう呟いた。その時、右手首から電子音が鳴り始めた。右手首を見ると、黒い腕輪が付いている。取り敢えず、腕輪に触った。すると、
『やあ、目覚めの気分は如何かな、レディ?』
癪に触るような口調で男が話し掛けてきた。
「ああ、凄く最悪な気分だよ、紙袋野郎。」
『そうかい、それはすまなかった。そんな事より、君は聞きたいことが有るんじゃないか?』
紙袋はまるで心を覗いたかのように話す。
「図星な所が気に食わないが、聞きたいことが2つ有る。」
『良いとも、答えよう。君は新人だからね。』
「1つ目。実験の具体的な内容は?」
『簡単な事さ。此処にいる囚人達で殺し合い、生き残った者が勝者だ。』
「成る程。だが、どうして私を呼んだんだ?」
『一部の犯罪者達が"異能力"を使うという情報が入った。それだけの事さ。』
「そうか。」
…彼女は表情には出さなかったものの、紙袋を警戒した。
(…こいつ、気づいてるのか?)
だが、今は気にしている時間は無い。彼女は、質問を続けた。
「じゃあ2つ目。囚人達は武器を持ってるのか?」
『ああ、勿論。あくまで、可能性だからね。1人1つは持たせているよ。それと、この島の至る所に、武器が隠されているから欲しければ探すと良い。』
「そんな物は生憎好みじゃ無いんでね。好きにやらせて貰う。」
『ふふ、そうかい。ならこの実験を楽しんでくれ。それじゃあ、また会える事を願ってるよ。』
そう言うと、通信が切れた。
フランツィアはそのまま砂浜を歩き始めた。
…どれくらい経っただろうか。
彼女は島を一周し、密林地帯に入っていた。
草を掻き分け突き進むと、開けた場所に入った。
―――――――そこは、正に死屍累々の地獄だった。
草木の緑にこびりついた赤。そして、灰色の破片に、ピンクのロープも落ちていた。
そう。もはや死体ではなく、肉塊となっているヒトガタだった。
「やあ、お嬢さん。こんな所に何か用かい?此処は今掃除したばかりだから、汚いよ?」
ねっとりとした、絡み付くような声だった。
「お前も参加者か?元国会議員の、田中議員?」
「いやぁ~、こんな美しいお嬢さんに覚えてもらえるなんて嬉しいね。」
「…で?此処で何をしたって?」
「あはは、仕事だよ仕事。邪魔だったから消しただけさ。議員時代と何ら変わらないだろう?」
目の前の小太りな男――――田中正男―――は、笑いながら言った。
田中正男は、汚職議員である。暴力団にパイプが有り、麻薬流通の利権を貪っていた。また、横領も多く、最悪な議員として人々の記憶に刻まれている。
「…そんな事で、人を殺したのか…?」
そう呟いたフランツィアの顔は俯いていてよく見えない。
「何を言っているんだい?手を下したのは私じゃぁ無い。」
そう言って彼が右手を上げた。
すると、回りから無数の銃口が、彼女を捉えていた。
「…ほう、頭数揃えて手荒い歓迎じゃないか。」
そこには老若男女問わず30人以上がいた。だが、彼らの顔には生気が無く、瞳も虚ろである。
「…こいつらに一体何をした…。」
田中が自慢気に答える。
「何をした、って?そんな質問は野暮ってもんだろう?此処は異能力の素質のある囚人の実験場だ。勿論使ったに決まってるじゃないか。」
そう言って田中は、自分の瞳を指し示す。
「そうだなぁ、私の異能はさしずめ『洗脳』と言った所だね。さあ、私の目を見てご覧?」
そう言われて、彼女は半信半疑で田中を見つめる。
その瞬間。
―――――――――従え従え従え従え従え従え私に従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従え従えシタガエ従え従え従えシタガエ従えシタガエ従えシタガエ従えシタガエシタガエシタガエシタガエシタガエシタガエシタガエ――――――――――――――――――――!
フランツィアの脳内でその言葉が荒れ狂う。
「さあ、私に従ってくれるね?」
勝利を確信した田中は、下卑た笑みを浮かべた。この時点で、田中は『本当の恐怖』を知ることが確定した。
彼女は少し頭を振り
「…煩い…。頭の中で騒ぐな、下衆。」
彼女に『洗脳』は効かなかった。
「な…何でだ!私の異能が…効かない訳がない…!有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない!」
田中は酷く動揺した。が、
「はははは、どうせ君は終わりだ。いくら何でも、この人数はどうにも出来まい。それじゃあ、さようなら。お嬢さん。」
田中が右手を振り下ろした。これで彼女を蜂の巣に出来る。そう確信した。
いつの間にか、彼女は田中のすぐ側にいた。一瞬、彼女の右手がブレた気がしたが、そんな事は田中には関係なかった。
だが、可笑しい。いつまで経っても、彼女が穴だらけになら無い。
(指示が失敗したのか?…ならもう一度だ!)
そう思い、右手を振り上げ…彼は気付いた。
(あれ?私の腕はこんなに軽かったっけ?)
ボトン、と何かの落ちる音。彼はその落ちたものを確認した。
――――――それは、彼の、田中正男の腕だった。
「…あああああああああ!?手ェ!私の腕がぁぁぁぁ!」
壮絶な痛みを感じ、田中は自分の腕が断ち切られた事を認識した。
その様子を見て、笑う女がいた。
「こんのォ…アマぁぁぁぁぁぁぁぁ!調子に乗りやがって!お前ら、早くこいつを殺せェェェェェェ!」
田中は後ろに下がりつつ命令した。
操られた者たちの反応は早かった。直ぐ様、彼女に狙いを定め、引き金を引く。
彼女は、その弾丸を避け、彼らを通り過ぎた。
その瞬間、その場に有ったモノが輪切りの肉となった。
鮮血のシャワーを浴びて、彼女は唯々狂気に顔を歪ませる。
「人には、犯してはならない罪があるのを知ってるか。」
彼女は、フランツィアは言った。
「それはな。――――――人の尊厳を奪い去る事だ。」
そう言いつつ、フランツィアは右手に握られた物を振るう。それは、一切の装飾の無い、黒い刀身の大きいナイフだった。
彼女がそれを振るう度に、鮮血が、脳漿が、臓器が飛び散った。
それはまるで、赤とピンクと灰色で描いた、絵のようだった。
操られた男が、銃を向ける。その手を両断し、首を撥ね飛ばした。
女が銃を撃つ。避けて、腹を裂き、臓器が全てずり落ちた。
そこは、殺戮の場でしかなかった。
田中は、腰が抜けて、股の間から流れる冷たい感触を感じる事しか出来なかった。
殺戮が終わり、真っ赤になったライダースーツを着た死神がやって来た。
「さあ。遊びはお仕舞いにしてあんたの番だ。」
フランツィアはナイフを振り上げる。
「ま…待て!待って下さい!まだ…まだ死にたくない!お願いだ!私には、妻と子供がいるんだ!見逃してくれ!」
彼女はその言葉を聞いて、彼を睨みこう言った。
「じゃあ、お前は同じ事を言って追い込まれていた奴らを助けたのか?唯、自分の欲望を満たすためだけに、食い潰したんじゃないのか?」
彼女の言葉が、田中には理解できなかった。
「ああ、そうさ!この世は全て弱肉強食だ!強いものは弱者を蹂躙し…」
そう言い終わる前に、彼女はその首を撥ね飛ばした。
それが、田中正男と呼ばれたモノの最期だった。




