アバター―avatar―
「そーう! これがあなたのこの世界での姿! すばらしいでしょう? 美しいでしょう? なんたってあんなにきれいなモノを使ったのですから!」
彼は混和くしていた。まあ、理由は明白この世界での姿? を見たからである。
とりあえず、この世界が現実と違う。それだけは分かった。
「どういうことだ? ここ、いや、この場所は俺の家じゃぁないのか?」確かに、この場所は家とはどこか違うところがあるが……彼の過ごす家とは同じように見える。
「さっきから言ってるじゃないですか、違うと。この世界はゲーム『アヴァターO』の世界。アヴァターOとは、RPG、カード。格闘ゲーム、カーレース。あらゆるゲームを取り扱っております。ええ、そしてそのあらゆるゲームを行う上においてのあなたの姿。いわゆるアヴァターです」
アヴァター、だが彼のは彼自身が想像しているモノとは違った。なんと言うか。俺の思っていたアヴァターとは違うような気がする。アヴァターといったら人に近い形で、なんと言うかこれはアヴァターと言うよりかは、怪物? そう思ったのだった。
「まあ、これが俺のアヴァターって言うのは分かった。で、俺のアヴァターの名前はテンプル。って言ったよな」理解したようでどこか腑に落ちないそんな顔をしている。
「何か、おかしな点が。……どこかにあったでしょうかねぇ」
「テンプルの意味は何といった?」そう、彼はなかなか勉強ができる方なので疑問に思ったのだった。
「心理、ですが」さっきも言っただろといいたげな顔で彼の方を見るのだった。だが彼からしてみたら、こいつは何を言っているんだ? といった顔をしたかった。そう、「テンプルの意味が違うだろうが。テンプルの意味は『こめかみ』とか、神殿とかそういった意味があるんだよ。なのになんだ心理って。これは中二病を生み出すためのゲームなのか?」まあ、分かるとおり若干切れ気味である。まあ、第三者から彼を見た限り怒っているように見えるだけの話だから、本当に切れているかは分からないのだが。
「いや、そういう訳ではないんですがね。この世界では心理って意味で解釈してもらえば、と言うことです。はい、ええ」それを聞いた彼はやはり腑に落ちないといった顔をしていたが、この世界のことなら仕方がない、と思ったのかあきらめてソファーに座った。
「それで、俺はこの世界で何をすればいいんだ?」
「いや、何をすればいいという訳ではないですよ、何をしてもいいです。リアルの友人と遊ぶもよし。ゲーム世界をボッチで過ごすもよし。それとゲームのあらゆるところで手に入れられるCP、これを使うと現実世界でも能力を使うことができす」
すごいでしょ、と言いたげなドヤ顔がまたむかつく。
「で、ゲームを終了するにはどうしたら」
「ああ、それはですね、ご自信の携帯端末のアヴァターOのアプリを開いていただけたら自動的に消えますので」
「そうですか、じゃあ早速。失敬」
「ちょ、まtt……マdあ花s………せ」
彼にとってはゲームの世界なんてどうでもよかった。ただ気になったことが一つだけ「………………『あのお方の』とか言ってたな。アイツ」いつも以上に疲れた気がする幸幸人であった。
「もう、八時半か……」
とりあえず気持ちを抑えるために彼はコンビニへと向かった。今日は水曜日なのであの人がいるからだ。
「あ、こんばんわ、ゆき君。どうしたの? 水曜は夜に来ないんじゃなかった?」
彼女の名前は千春。彼とはこのコンビニで知り合った。気品があってやさしく。仕事をしっかりとこなす学生だ。学生で分かることだが当然ながらこのコンビニにはアルバイトとして働いている。
「いや、そうなんですが……ちょっと落ち着かなくて」そういいながら彼はコンビニに陳列されている商品を品定めするのだった。
「あ、ゆきじゃねえか。どうした? 珍しいなお前がこの場所に一日に二回も来るなんて」彼はこのコンビニの店長。とてもいい人だ、店長といってもまだ三十代で若い。
「家にいても落ち着かなくて……そういえば店長、アヴァターOってアプリ知ってます?」気になった彼は聴いてみた、アイツが友人ともできるといっている限り、結構広まっているアプリなのだろうと思ったからである。
だが店長は「なんだ、そのオルトって。聞いたことないな」悪いな、とちょっとトーンが下がりながらそう言った。
「そうですか……」
「ちーちゃんは知らないの? アヴァターOって」
「さあ、ちょっと……わかんないですね。ごめんねゆき君」彼女もまた、ごめんね。と言うのだった。
「大丈夫です。じゃあ、肉まん一つ」