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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第五章 北東大陸と北西大陸へ
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5 三人旅

お楽しみ下さい。

 森を歩きながらアラデスは姫と話していた。やはり姫はこの国であるベルマの女王らしい。お姫様である。歳は十七らしい。アラデスと同い年である。マリンも十七歳らしい。


「そう、あたし達三人は同い年なのね。よろしく」


 お姫様によろしくと言われても、とアラデスは思ったが、気にしない事にした。


 無事にリーマ深林の出口に着いた。普通の人は迷って出れなくなるが、アラデス達リーマ村の村人は長年の感覚で出て来れる。


「凄〜い、出れたわね。ご苦労様」


 姫はアラデスの肩をドンドンと叩きながら言う。


「ちょっと、痛いですし、マリンさんが目を覚ましますよ」


 マリンはもう少し寝かせてやった方がいいと思う。おぶって思ったのだが、やはり女の子らしく軽い。そして、体を密着させて気付いたのだが、思った以上に華奢だ。こんな細い体でよく剣を振り回してビッグベアと戦ったものだとアラデスは思った。


「あっ、ご、ごめん。……マリン起きないわね。仕方ない。アラデス、もう少しマリンをおぶっていてくれない? まだ明るいから少しでもお城まで歩きたいから」


「えっ、森も抜けた事ですし、馬車とかを拾わないんですか? 歩いて帰る気ですか? お城まではどれぐらい掛かるんですか?」


「勿論歩いて帰るわよ。お城までは五日ぐらいかな。いつもなら寄り道をしながら歩くから時間が掛かるけど、今回は真っ直ぐお城を目指すわ。それと、お金はあまり持って無いからお城までの宿代でなくなるかな。歩くからこそ、お城に着くまでが楽しいんじゃない」


 本当は、馬車を拾えば一泊ぐらいで済むから、お金は足りるのだが、世間に疎いアラデスはあまり深くは突っ込まなかった。


「しかし、一国の姫が普通の宿や、一般の街道を歩くのは危険じゃないですか? もしもの事があったら大変ですし、下手すれば国を挙げての戦争になりますよね」


 アラデスの言葉に、姫が言った。


「な〜に言ってるのよ。マリンがいるから襲われても大丈夫よ。今はあなたもいるしね」


「えー!」


 姫の言葉に驚くアラデス。姫の危機感の無さは致命的だ。マリンも大変だなと思う。というか、一つ気になる事がある。


「姫、もしかして僕もお城まで付いていかないといけないんですか?」


「えっ、当たり前じゃない。怪我をしているマリンだったら、何かあった時にあたしを守りきれないかもしれないじゃない。それに貴方はそれなりに強いみたいだからボディガードにちょうどいいわ。ふふふ」


 使えるボディガードを見つけたと嬉しそうな姫。呑気に笑っているが、アラデスはとんでもないと思った。


 アラデスからすれば、姫とマリンは初めて出会う獣人族以外の人間だ。獣人族はオッドアイだが、普通の人間は違う。現に姫とマリンは両目が黒だ。


 何故、オッドアイの自分を見て姫とマリンは何も言わないんだろうとアラデスは思った。獣人族はこの世界では有名なはずである。二百年前の魔族襲来は、人間の学校なら必ず習うと聞いた事がある。


 さらに、このベルマ王国の獣人族の隠れ里であるリーマ村の周りにはリーマ深林という、いわゆる迷いの森がある為、リーマ村に人間が来る事はほとんど無いが、他国では人間達に怯えて暮らしている隠れ里もあると聞く。


 アラデスが考え込んでいると、姫が口を開いた。


「もうすぐ夕方になるわ。そろそろ町や村を探して宿を取りましょう。この辺なら……向こうに村があるはずよ。少し急いで行きましょう」


 地図を見ながら言って早足で歩き出した。マリンをおぶっているアラデスはしっかり背負い直して早足で歩く。



 村に着いた。小さな村だ。もう夕方なので人気も少ない。これなら人に顔を見られる事も無さそうだ。


 宿を見つけると、姫はすぐに三人分の部屋を取った。姫が全ての手続きをしてくれたから、アラデスはマリンをおぶったまま少し離れた所で待っていた。


 しかし、問題が起こった。何と、三人で相部屋らしい。勿論抗議するアラデス。


「姫、何故僕まで同部屋なんですか!?」


「何言ってるのよ。二部屋取るより安上がりだし、あなた達二人にはあたしを守ってもらわないといけないから一緒の方がいいでしょう? そういう事よ! アラデスだって無一文でしょう? それなら文句言わない!」


 ビシッと言われて黙るしかなくなったアラデスだった。



 部屋に入ると、姫が直ぐに布団を敷いた。そして言う。


「さぁ、アラデス、マリンを早く寝かせて」


 アラデスの背中で寝ていたマリンを布団に寝かせる。戦ってそのままだったので、髪もボサボサだし、顔も汚れている。


「全く、マリンったら。可愛い顔が台無しじゃない」


 そう言って姫が濡れたタオルでマリンの顔を拭く。下手だ。力を入れすぎている。それをアラデスはハラハラしてみている。


「あ、あの、姫。そんなに強く拭くと起きてしまいますよ。もっと丁寧にした方が……」


「えっ、何? そうなの? 分かったわ。……あっ」


「……んっ、う〜ん。」


 姫の力加減を知らない行動と、大きい声でマリンが目を覚ました。


「あ、起きちゃったわね。おはよう、マリン」


「あっ、姫。おはようございます。あれ? わたし、寝ていたんですか? というか、ここはどこですか?」


 上半身を起こしてキョロキョロ見ている。


「宿を取ったの。クマさんと戦った後、あなた倒れちゃったのよ。運ぶの大変だったんだから。ねっ、アラデス」


「えっ、アラデス? あっ!」


 マリンはアラデスを見つけると、相当ビックリしたのか、目を大きくした。そして、言った。


「あ、あなたは森での! 姫、なぜ彼を連れてきたんですか!?」


 いきなりすごい剣幕で姫に言うマリン。起きたばかりだが、迫力が凄い。


「い、いきなりどうしたの? 大きい声を出して」


 マリンのあまりの剣幕に少したじろいている姫。そこで、少し我に返ったマリンが言った。


「大きい声を出してすみません、姫。しかし、お気付きですか? 彼は獣人族ですよ!?」


 マリンははっきり言った。少し離れた所で見ていたアラデスはそれを聞いて俯いた。

お読みいただきありがとうございます。

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