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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第五章 北東大陸と北西大陸へ
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2 獣人族の村

久しぶりの更新です。お楽しみください。

 意外に何もなく森を抜けた。森を抜けたらコンパスも方位を指した。今は東を向いて走っている。


 ペテルサンクから北に真っ直ぐ走っていたはずだが、森の中で東に向き直して走っていた。迷いの森恐るべし。


 気を取り直して地図を見る。森を抜けて東に走っているという事は……。

 

「森を抜けて東に向かっているって事は、このリーマ村に向かっているのよね。どんな村なんだろうね」


 馬車を操縦しながらハイミが言う。村はもう目前だ。




 村に着き、入り口に入った。


 入り口横に馬車の停留所がある。この世界の小さな村や町は町の入り口に馬車の停留所がある事が多い。村内は道が狭いから基本は歩いて移動する為、馬車は入り口に停めておく。こういう村には、滞在中に馬車の馬の面倒を見てくれる人がいるから心配もない。


 それにしても、村内は異様に閑散としている。人がいない。……いや、でも気配を感じる。


「おい、誰もいないけど気配はするな。さらに殺気も感じないか?」


 ハルオが言う。確かに沢山の人に見られている様に視線を感じる。殺気を纏った視線だ。


「まぁ、確かに視線を感じるけど、人に会わないと何にもならないからね。地図に載ってる村なら大丈夫だよね。奥に行ってみようよ!」


 キサキが元気よく歩き始める。確かにそうだが、得体が知れないから無茶はしない方がいい。


「ちょっと、危ないよ。何があるか分からないって」


 急いで追いかける俺達。人はいないけど気配はする。さらに殺気もある。絶対危ないに決まっている。


「止まれ!」


 声と同時にビクッと止まる俺達。周りを見渡して驚いた。武装した村人だ。


「キャー!」


 さっきまで威勢の良かったキサキが悲鳴を上げる。俺達も急いで身構える。


「ちょ、ちょっと何よ! あたし達は怪しいものじゃないわよ! ちゃんと村の入り口から入ってきたじゃない!」


 キサキがうるさい。が、それも分かる。村人の殺気が凄いのだ。明らかに殺すことを目的に武器をこっちに向けている。


「み、皆さん、ちょっと待って下さい! わたし達は旅の者です。森で迷ってこの村に辿り着いたんです!」


 ハイミが村人に向かって言う。必死な表情だ。


 すると、殺気を剥き出しにした村人達の中から初老の男性が出てきた。


「私はこの村の村長です。森に迷い込んでしまうとは災難でしたな。無礼な歓迎は許して下され」


 禿げかかった頭を少し下げながら言う。


 そこで俺は一つの事に気付いた。剣や槍を構えて殺気を送ってくる村人達。その村人達は老人や女性ばかりだ。若い男性がいない。


 今まではどの町や村でも若い男性が自警団をしていて、初めて入る村ではだいたいまずは男性の自警団員が近付いて来た。


 よく見たら武器を持っている老人や女性なら、俺達四人で倒せそうだ。でも、さすがにそういう訳にはいかない。村長は武器も持っていない為、俺達を無理矢理追い返そうというわけではないだろうから、ここは大人しく言う事を聞こう。


「俺達は王都に向かっていたんですが、森で迷って西の方に出てきたみたいです。また森を抜けたいんですが、森の地図や分かりやすい道標はありませんか?」


 俺が言うと、やっと村人の殺気が和らいだ様な気がした。戦う気も暴れる気もない事を分かってくれたのかもしれない。


「そうですか。申し訳ありませんが、この森はいわゆる《迷いの森》です。地図はありません。私達、リーマ村の者は子供の時からこの森に薬草を取りに行くので感覚で戻って来れますが、初めての人には無理でしょう。それよりもこの森に入ってよく何もなく出て来れましたね。数日間出て来れない人もいるんですよ」


 とんでもない事を聞いた。やはり迷いの森だったみたいだ。


「そ、そうでしたか。数日間はヤバかったです。まぁ、食料は持ってますが。馬車だから移動スピードが早かったのが良かったですかね」


 俺の言葉に村長が少し笑いながら言う。


「まぁ、森案内ですか。取り敢えずは私の家へお越し下さい。この村は色々ありまして外からの客に敏感です。どうぞ、こちらへ」


 村長が歩き始める。俺達は後に付いて行くが、武器を持った老人や女性も俺達に付いて来る。武器を向けたままだ。



 村はそんなに広くないらしく、村長の家にはすぐに着いた。


「お客様方、ここが私の家です。お入り下さい」


 村長に言われて入ろうとするが、武装した村人達が俺達の前に立ちはだかった。


「村長、この者達は本当に大丈夫でしょうか?」


 村人の一人が言う。初老の男性だ。体も鍛えている訳では無いのか年相応の体型だ。痩せている。そんな体では満足に武器も扱えず、俺達は勿論だが、白竜人族も倒せないだろう。そんな老人や女性ばかりが武器を持っている。


「いいんだ、みんな。私の勘だが、彼らに危険は無い。心配なら話しが終わるのを家の外で待っていてくれ」


 村長の言葉に村人達はまだ迷っている様だ。そこで、ハイミが口を開いた。


「失礼ですが、皆さんはオッドアイですね。左目が青いです。ここは《獣人族の隠れ里》ではないですか? それならわたし達に警戒する気持ちも分かります」



 俺は行く先々で新聞や本を読むようにした。この世界の事を勉強する為だ。魔王と戦う為ではない。俺は半年前にこの世界にやって来たから、この世界の常識や歴史を知らない。生活する上で、またこの世界で生まれ育ったハイミと一緒に行動していく中でこの世界の事を知らないというのは怪しまれそうだと思ったからだ。


 新聞を読めば、魔王軍の事も情報が入って来た。魔王の配下には竜人族、魔導士族、そして獣人族がいると書いてあった。


 新聞で獣人族の隠れ里についても読んだ。世界のアリス教国にあるらしい。ここはアリス教国ベルマだ。


「そうです。ここはベルマの獣人族の隠れ里リーマ村です。心配しないで下さい。わたしは皆さんを歓迎します」


 村長が言った。しかし、その表情は沈んでいた。

お読みいただきありがとうございます。

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