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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第五章 北東大陸と北西大陸へ
48/60

1 一段落

前回の更新から時間がかかってしまいました。


お楽しみください。

 この世界であるマルスカに来て半年が経った。


 初めは大変だった。現実世界では体が弱く、趣味といえばゲームぐらいだった俺『人見悠馬』は、人気ゲームの最新作である『ファンタジー・オブ・デスティニー5』、略して『ファンデス5』をプレイ中に、ゲームの中に転生してきた。


 その転生を可能にしたのは、『ファンデス5』の発売元の、ゲーム会社である『SENDOH』の代表取締役社長である『木下昇』が開発した《ヘッドホン&ゴーグル・3Dシステム》である。


 このシステムはヘッドホンでリアルな音声で、特殊なゴーグルでリアルな3D映像を、というのが名目だったが、木下さんはヘッドホンに特殊な信号を流す事で俺達の意識だけを、いわば強制的に拉致した形になった。


 転生と同時に俺は『ファンタジー・オブ・デスティニー5』の主人公である《クリフ》に《人格同調》した。人格同調により、顔はゲーム内のクリフの顔ではなく、人見悠馬の顔だった。名前も《ユウマ》だった。


 そして転生から目覚めると、幼馴染であるハイミに出会った。顔も名前も違うにも関わらずに何事も無かったように接して来た。これが人格同調の効果らしい。昨日と違うにも関わらずに、次の日には何時ものように接する。何と都合のいい事が。


 次には、同じくゲームの《クラーズ》に人格同調した『宮尾春男』こと《ハルオ》に出会う。そして、その後にルーベリアが魔族襲来によって滅亡する。


 この事を報告に俺、ハイミ、ハルオの三人で訪れたルイビンベールでゲームの《ティアラ姫》に人格同調した『里宮姫咲』こと《キサキ》に出会う。そしてキサキが加入して四人のパーティーが出来上がった。


 次にアリス教総本山アリウスを訪れ、この一連の仕掛け人である木下さんに会って全てを知った。そして木下さんの期待を背負い、旅立った。


 ここまでは国王や教皇の依頼で書状を持って国を訪れ、その国の国王に会うことがほとんどでバタバタ移動していたものだった。まぁ、これはこれで楽しかったが。


 ただし、クーデターがあり国王が変わるという大事件や、ハルオが告白されるという事があったノーリアからは、依頼もなく自由な旅に出かけた。


 ノーリア→コクシ→モーシュ→ギガクと旅し、ギガクから船でペテルサンクに渡った。


 この間は町や村を拠点に、クエストを受けたりして過ごした。受ける内容はほとんどが魔族退治や、素材集めだった。素材は自分達の装備や持ち物のレベルアップというよりは、村人の生活用品が目当てだった。


 ノーリアからペテルサンクの旅は約半年に渡ったから魔族退治ではかなりの魔族と戦った。だが、現れた魔族は白竜人族ばかりだった。何体出ようと敵ではなかった。簡単に蹴散らしていってクエストを成功させた。




 ペテルサンクを一通り旅して、次はその北にある《ベルマ》に入る。ベルマはアリス教国である。


 ペテルサンクとベルマの間には二国の中立地帯である《ラトバラ平野》があり、ラトバラ平野を馬車で抜ける。


 ラトバラ平野を抜けるとベルマに入るはずだが、何故か森の中にいた。


「ねぇ、何かかなり深そうな森に入ったね。何だろうね、ここ」


 馬車を操縦するハイミの隣りに座って俺が言う。ペテルサンクで最後に訪れた町では、「ここから真っ直ぐ北に進めばベルマに入るよ」と町民に教えられたから真っ直ぐ北に進んだつもりだった。


「う〜ん、ちょっと東にズレたのかもしれないね〜。ここ見て」


 ハイミが地図を見せてくる。ペテルサンクとベルマの間にラトバラ平野があるが、ラトバラ平野の北東に《リーマ深林》があり、深林をさらに東に抜けると《リーマ村》がある様だ。


「ん、何だ? 迷ったのか?」


 馬車内で寝ていたはずのハルオが顔を出して言う。さらに馬車内からは「えっ、迷ったの? 大丈夫? 大丈夫ならまた寝ようかな」というキサキの声がする。


「多分ここは地図にあるリーマ深林で間違い無いようね。地図を見た限りではあまり広い森じゃないみたいだけど、なんか不気味ね。何か雰囲気が迷いの森みたい」


 不吉な事を言うハイミ。確かにこの森には人気が無いし、人が頻繁に行き来している様な痕跡が無い。


「ちょっと不吉な事言わないでよ、ハイミ。まさか呪われた樹海って事はないと思うけど」


「でも、それはそれで楽しみね。それこそ冒険って感じじゃない?」


 気楽に言うハイミだったが、迷ってしまった。この森ではコンパスも使えないらしい。勘で馬車を走らせている。一応人は通るのか、馬車が通れるぐらいの道はある。



 結局一泊した。陽があまり当たってないからジメジメしていて、地面には寝れないから馬車内で寝た。しかし、馬車内は狭いから二人で寝て、残り二人は交替で見張りをする事にした。


「……かなり深そうな森ね」


「えっ、どうしたの? 珍しくしんみりしてるね。出れるか不安なの?」


 いつもと違うキサキの雰囲気に驚く。今は馬車から少し離れた所に二人で座っている。


「な、何よ〜、いいじゃない。不安って訳じゃないわよ。……半年経ったわね。お父さんとお母さんは元気かな」


「……うん、そうだね。まぁ、ウチの父さんと母さんは元気だと思うけど」


 この半年間は意外と楽しく、あまり現実の事は考えなかった。敵はあまり強くなかったから簡単に倒せる。技は相変わらず基本技と熟練技しか使えないのが不満だったが。


「まぁ、しんみりしても仕方が無いよね! 明日には森を抜けれるといいわね」


「切り替えが早いな。まぁ、そこがキサキの良い所かもね」


 俺が褒めると、えへへ、と頭を掻きながら照れていた。



 しかし、気になる事は無いでもない。俺達はアリウスで教皇こと木下さんに経験値を貰い、レベルが三十ぐらいになったらしい。この半年間は敵が弱く、現在のレベルでも十分に倒せた。でも敵が弱い為にレベルアップをほとんどしていないと思う。今まで戦った敵は白竜人族と、かなりの少数だが白魔導師族のみだ。


 魔族は強さが体の色で一目で分かる。一番弱いのが白、中間が灰色、一番強いのが茶色という風に三色に分かれている。


 あと、魔族は三種類いる事もこの半年間の内に分かった。まずは竜人族だ。竜人族とはかなり戦ったから分かる。竜というだけあって翼があるが、飛べない。次に魔導師族だ。白魔導師族とは一度だけ戦ったが、名前の通りに魔術を使ってきた。キサキがムキになって対抗していたが、キサキの魔術の方が強く、白魔導師族も相手にならなかった。


 最後に獣人族だ。聞いた話によると、どうやら獣人族はこの世界であるマルスカに住む魔族らしい。俺も少し調べたが、世界中に《獣人族の隠れ里》があるらしい。人間界に住む魔族が魔王側に付いたんだから、少し憤りがする。


 俺達の最終目的は魔王を倒して現実世界に戻る事だが、敵が弱いからレベルが上がらない。そうするといつまでも魔王城に乗り込めないからいつまでも元の世界に戻れないからキサキの不安な気持ちも分からないでもない。


 さらに最近倒した敵の中に気になることを言った白竜人族がいた。白だから大した強さではなく簡単に倒せたが、こんな事を言って息絶えた。


『くそっ、魔王様が復活すれば貴様達なんかに負けないのに。覚悟しろよ。もうすぐ魔王様が復活される。復活したら世界中の形勢は逆転する。貴様等の命運も尽きる。覚悟するんだな』


 ただの負け惜しみかと思ったが、嫌な予感がしなくもない。もし、強い敵が出てきたら今の俺達に勝てるのか? 各国の騎士団や自警団は国を守り切れるのか? 考え出したら色んな事が浮かんでくる。


「ん? ……ユウマ、難しい顔してどうしたの?」


 キサキが俺の顔を覗き込む様にして聞いてきた。キサキの顔が近く照れてしまい、自分でも顔が赤くなっているのが分かる。


「いや、何でもないよ。早くこの森を抜けれるといいね」



 次の日の正午前には森を抜ける事が出来た。村が見える。当然、次の目的地をその村に決めて馬車を走らせた。

お読みいただきありがとうございます。


新章の始まりです。

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