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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
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17 楽しい昼食

お楽しみください。

 翌日はいつも通りに起きて朝食を食べた。昼頃にナターニャ様……じゃなくて女王様から報告があるはずだからそれまでは空き時間だ。


 俺は朝食を食べた後に、広めの中庭を兵士の人に案内してもらい、素振りを行った。いつもは晩御飯の前にやる事が多いけと、昨日はそれどころじゃなかったのだ。


 中庭だから派手な技は出せない。少し物足りないが仕方ないか。勢い余って中庭の物を壊してしまったらシャレにならないから。


 心地よく汗を流したところで昼前になっていた。客間に戻る。いい匂いがする。


「お帰り、ユウマ! ご飯出来てるよ」


「さぁ、座って。食べましょう!」


 キサキとハイミだ。二人共ワンピースにエプロンだ。


「……何で二人してその服装なの?」


 俺の素朴な疑問にキサキが満面の笑みで答える。


「えー、可愛いでしょう〜! ねぇねぇ、見てよほら」


 両手を広げてクルリと回るキサキ。「さぁ、次はハイミ!」と促されて、ハイミがノリノリで回る。


「おー、いいねぇ。可愛いよ、二人共」


 いつの間にか座っていたハルオが手を叩きながら言う。指笛を鳴らしながら盛り上がっている。


「キャー、可愛いわねー! ワンピースにエプロンなんて何てマニアックなのー!」


「「「女王様!」」」


 俺とハイミとキサキが驚きの声を上げる。女王様がいつの間にかハルオの隣に座っていた。指笛を鳴らしているハルオと一緒にテーブルや手を叩きながら歓声を上げる。


「女王様、何でこんな所に?」


 俺の質問にハルオが答えた。


「この辺の廊下をウロウロしていたから、誘ったんだよ。ハイミとキサキが昼食を作っているからご一緒にどうですかってな」


 突っ込みどころ満載だ。突っ込みを入れる俺。


「そうなんだ〜。それで女王様は何で共も付けずにこの辺りをウロウロしていたんですか?」


 俺の質問に女王様は右人差し指をピッと上げて答える。


「それはね、報告が早目に来たからあなた達に知らせてあげようと思ってね。わたくしの部下は優秀でしょう? ふふふ」


 少しドヤ顔で言う。何か気が抜ける。


「それはちょうど良かったです。沢山あるから女王様も食べていきませんか? お城のコックさんが作った物には劣るかもしれませんけどね」


 ハイミが言うと女王様は嬉しそうに言った。


「えー、いいのかしら。それじゃあ、お言葉に甘えましょうかね。それにしても美味しそうねぇ〜。ウチのコックにも負けてないわよ」


 女王様に言われて恥ずかしそうに照れて下を向くハイミ。


「女王様、これはあたしも少しだけ手伝ったんですよ。えっと、これとこれとこれ……の皮剥きを。ハイミは料理の手際が良すぎて付いて行けなくて」


 キサキが一生懸命アピールしている。これも久々の『女子力アップ作戦』の一環なんだろう。最近暇がなかったのかな。ハイミは隣りで「キサキも上手くなってきたよ〜」とフォローを入れている。


 すると、女王様がハイミとキサキをじぃ〜っと見ているのに気付いた。何を見てるんだろうと思っていると、女王様が口を開いた。


「そのワンピース可愛いわね〜。どこで買ったの? ノーリアにはそんなに肩や胸が出た物はないはずなのよね」


「これですか? わたしは元々持ってました」


 ハイミが言う。


「あたしは、ハイミが着ているのを見て可愛いと思ってアリウスで買いました」


「「いつの間に!?」」


 アリウスで買ったと言うキサキに、つい突っ込みを入れる俺とハルオ。あの短い滞在でいつの間に買ったんだろうか。さすがは大臣の目を盗んで城から抜け出していただけはある。忍び並みの素早さか?


 女王様はふぅ〜ん、と聞いていたが、ハイミが言った。


「よろしければ、女王様も着てみます? わたしは何着か持ってるから一着差し上げますよ」


「本当に!? ありがとう、ハイミ。早速着てもいいかしら?」


「はい、こちらへどうぞ。わたし達の客間で着替えましょう」


 ウキウキしながらハイミに付いて行った女王様。


 ……数十分後……


「ほら見て、どうかしら!?」


 ワンピースに着替えた女王様が、上機嫌で見せてくる。クルリと回ったりポーズを取ったりしている。


「おー! 女王様、似合いますよ!」


 年上好きのハルオが声援を送る。女王様は25歳なので、ハイミやキサキよりは七歳上だ。やはり七歳分の色気がある。スリーサイズもハイミとキサキよりは一回り大きく見える。


「女王様、悩殺ポーズをお願いします!」


 ハルオのリクエスト。


「ん、こうかしら?」


 前屈みになり、左腕で胸を持ち上げる。谷間が押し上げられる。足は肩幅より少し広めに開き、右手でスカートの裾を太腿が全て見えるぐらいまでに上げる。もう少しでパンツが見える。


「「ぐわ〜っ!」」


 これにはハルオと一緒に俺もかなりのダメージを受ける。心地よいダメージだ。ハルオとハイタッチをする。ハルオのリクエストのお陰で良い物を見れました。


「ちょ、ちょっと、ユウマ! 何喜んでるのよ!」


「ゆ、ユウマ、エッチな目で見ないで! もう、ハイタッチまでして……」


 キサキとハイミに怒られた。それも俺だけだ。隣りで声援を送っているハルオにはお咎めなし。不公平だ。この様子を見て女王様は「あら、ユウマは大変ね」等と呑気な事を言っている。




「「「いただきまーす。」」」


 俺、ハルオ、女王様が言う。


「「召し上がれ」」


 ハイミとキサキが返すと同時に食べ始めた。テーブルには俺とハルオが並んで座っており、向かいにはハイミ、キサキ、女王様が座っている。3人共露出の高いワンピースだ。


「それで女王様、報告はいかがでしたか?」


 昼食を食べながら、急にキサキが真面目に切り出す。一騒動あったが、女王様の要件はこれだったのだ。


「あ、そうだったわね。報告だったわね。え〜っと、そうそう、やはり海岸線に魔族の目撃情報が多いわね。意外な事に魔族が暴れて死者が出たっていう報告はなかったわ。どうやら自警団がいなくなった町や村は、周囲を高い柵や深い堀を作って守りを固めていたみたいですわ」


 女王様の報告を興味深く聞く。この国は少し前まで国王と王弟が権力争いをしていた。この二王の争いは戦闘までに発展したが、この戦闘には自警団が招集され戦わされた。


 そもそも自警団とは、国内の町や村の住民が組織し、自分達の村は自分で守ろうという意図である。他国が攻めて来た時に騎士団が来るまで持ちこたえれば最低でも自分達の財産は守れる。家や田畑や商売道具等である。


 ノーリア国王と王弟は自分達の欲の為に、国内の町や村を丸裸にしたのだ。さすがに魔族の襲来は予想していなかっただろうが、国防を考えたらこんな事はあり得ない。敵国か攻めて来たら、丸裸の町や村を壊滅させて一気に王都まで進行されてしまう。


 しかし、この国の民は二王の愚行に対して冷静に行動した。町や村に残るのは老人や女子供が多数だろうが、柵や堀を作るという最低限の備えはしたんだろう。まぁ、柵を作ったり堀を掘るのも、老人や女子供にはかなりの重労働だっただろうが。


「そうですか、分かりましたわ。海岸線を中心に回ろうと思います」


 キサキが言う。女王様はコクリと頷き言った。


「それではお願いしますね。何かあれば遠慮なく言い付けて下さい。援助は惜しみませんわよ」


 キサキが、ありがとうございます、と礼を言う。でも、丁重にお断りした。豪華な援助を受けるよりは、質素目に楽しく旅をした方がRPGっぽいと思ったのはキサキも同じだった様だ。最初にルーベリアを出る時にシュバードから貰った金貨もまだ沢山あるから換金すれば、宿や食べ物には当分困らない。




 俺達は昼食を食べると、早速出発の準備を始めた。まぁ、荷物は少ないから準備なんかすぐだ。


 女王様は家臣に、勝手にいなくなって客間でくつろいでいる所を怒られて謁見の間に戻って行った。女王様のワンピース姿にも驚いていた。


 謁見の間に挨拶に行く。


「ついに旅立つんですね。この国の事を任せてしまって申し訳ありません。どうかお気をつけて。この国を回ったらもう出国してしまわれるんでしょう? 出国前にはぜひお城にお寄り下さい。改めてお礼を言いたいですからね」


 女王様の言葉に、分かりました、と約束し王都を発った。この世界に来て初めての少し自由な旅だ。とはいえ魔族から国民を救うのが目的だ。俺達がいるからには一人も死人を出すものかと決意し、旅立った。

お読みいただきありがとうございます。

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