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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
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15 女王即位

お楽しみください。

「助けに行く!」


「いや、覗きに行くんだよ!」


 俺達の言い合いはまだ続いていた。ハルオも一歩も譲らない。


「ユウマ、お前だってあの三人のベッド上での絡みを見たいだろ?」


「そりゃ、見たいよ! ……いや、そうじゃなくて!」


「ほら見ろ。理性には正直になるんだな」


 もう数十分はこうしている。というか、もう事は始まっているんじゃないか? 早く行かないと、二人が淫らな餌食に!


 もう埒が空かないからハルオを置いて一人で行こうと思った時、この部屋の扉がノックされた。ビクッとなる俺とハルオ。


「ハルオ、誰だろう? ま、まさか、ハイミとキサキはナターニャ様に全てを捧げましたっていう報告かな?」


「そんなまさか、もう終わったのか? 早すぎる。ちょっと出てくるよ」


 ハルオが扉の所に行き開ける。すると兵士が一人立っていた。なんの用事だろう? 何故か俺の鼓動が高鳴る。


「ユウマ殿、ハルオ殿、お話しは伺っておいでですね? ついに、先ほど始まりました」


 兵士は静かに言った。始まりましたという報告に愕然とする俺。間に合わなかった。膝から崩れ落ちる。


「本当ですか? ナターニャ様ですか? おい、ユウマ急いで行くぞ!」


 立ち上がれない俺。ハルオの言葉に兵士が言う。


「はい、ナターニャ様です。お急ぎ下さい、ナターニャ様はお二人にも参加して欲しいと仰ってます」


「「えー!」」


 驚愕の声を上げる俺とハルオ。参加して欲しいという事は五人でするのか? いや、さすがにそれはいけないだろうと思い、ハルオを見た。


「本当にナターニャ様が仰ったんですか? 俺達も一緒にと? そ、そうですか、それなら仕方ない。おい、ユウマ行くぞ。何をビビる必要がある。こ、ここは、ど、堂々と、い、行こうじゃないか」


 ハルオが動揺してる。ビビって緊張してるな。何だかんだ言って気が小さいんじゃないか?


 でもこのシチュエーションは困った。俺も男だ、興味は非常にある。相手は色気ムンムンのナイスバディであるナターニャ様だ。嫌じゃないけど、こういうのは嫌だ。俺はもっと健全なのがいい。でも、ハイミとキサキは身を委ねたんだな。それならどうしよう。


「ん、いかがしました? 早く準備をお願いします」


 悶々している俺達に兵士が言う。


「あ、あの、準備って何を持って行けばいいんですか?」


 あんな場面に必要な物といえば何だろう? すぐにはピンと来ない。


「ん? いつも使っているもので構いませんよ。四人で旅をされている時に使っている物で」


 普段使っている? そんなの無い。というかナターニャ様やこの兵士は俺達が普段何をやっていると思ってるんだろう? ましてや四人でなんて。この国では常識なんだろうか。


「とりあえずお急ぎ下さい。もう動き始めてるんですよ!」


「えっ、もう動いているんですか? まだ序盤なのに、は、激しいんですね」


 ハルオが驚愕の顔をする。俺もビックリだ。ハイミとキサキは耐えられるんだろうか? 実は二人共経験豊富だったりして。何か嫌だ。やっぱり見たくないし、行きたくなくなってきた。


「激しい? 当然です。この国始まって以来最大の大事件になるでしょう。同盟国にも急いで報告をいれないといけません」


 この国始まっての以来最大の大事件? ナターニャ様は普段からそういう事を楽しんでいるのかと思ったらそうでもないのか? 何か話しがおかしくなってきた。すると、次の兵士の一言で真実を知る。


「もう始まっています。我が国初のクーデターが」


「「クーデター?」」


 俺とハルオが同時に聞き返した。


「はい。ギガク国王からの秘密の書状の話しはご存知ですよね? ナターニャ様は決断されました。弟二人を追放してご自分が女王となる事を。ハイミ殿とキサキ殿に言われてお二人をお迎えに参りました。御仕度が出来ましたら早速行きましょう」


 そうだった。ギガク国王からの秘密の依頼は『君達が見て、ノーリア国王と王弟がダメだと感じたらこの書状を信用出来る人に渡してクーデター決起を促してくれ。決起を確認したらギガクもクーデター側に味方すると宣言する。他の同盟国もこちら側に付くだろう』との事だった。ハイミとキサキはナターニャ様を信用出来る人として書状を渡したんだろう。


「ナターニャ様にはすでに各町や村の自警団が忠誠を誓っており、騎士団も次々とナターニャ様の元に集まってます。あとは国王と王弟と、その側近を捕らえれば終わりです。そっちには既に刺客が向かっているので大丈夫でしょう」


「はい、すぐに準備します。……少々お待ち下さい」


 恥ずかしすぎる勘違いをしていた。ギガク国王からの秘密の書状は知っていたが、謁見の間であんな話を聞いていたから全く忘れていた。


「それじゃあ、行こうか、ハルオ。謁見の間らしいよ」

「そうだな、行こう。期待と違って少し残念だが」


「もう、いいよ、その話しは」


 そうさ、ハイミとキサキの貞操は守られた。もう心配ないだろう。早く気持ちを切り替えよう。うん、残念なんかじゃないよ。




 謁見の間に着いた。兵士が仰々しく並んでいる。騎士団がいる。騎士団と違う装備や服装の人達が自警団だろう。


 ハイミとキサキを見つけたから走り寄る。俺達に気付いた二人は大きく手を振ってくる。


「おまたせ、遅くなってゴメン」


 口ではそういうが、ついハイミとキサキの髪や服の乱れが無いかを探してしまう。……見た感じは何も無い。何もされなかったんだろう。ナターニャ様は理性を抑えた? いや、クーデターをするのにそんな場合じゃないだろう。


「うん、ギガク国王からの書状を見せたんだ。ナターニャ様はあたし達がギガク国王から何かしらの命を受けていたのを何となく気付いていたみたい」


 キサキの言葉に俺とハルオは感心する。美女二人に性欲丸出しに見えたナターニャ様だが、俺達がギガクからの使者だと聞いて冷静に状況を理解して動いた。中々の器だ。


「そうなんだ。さすがだね」


 王の玉座を見るとドレスを着たナターニャ様が座っている。すでに威厳があり、この国を背負って立つ器がある事が分かる。俺達が来た事に気付いたらしく、こっちを見て、パチッとウインクをしてきた。かなり色っぽい仕草にドギマギして下を向いてしまう。


 するとナターニャ様が口を開いた。


「皆さん、よく集まってくれましたね。わたくしは決断しました」


 広い謁見の間によく澄んだ声が響き渡る。騎士団も自警団も皆ナターニャ様の言葉に耳を傾けている。


「わたくしは国王と王弟を追放する事を決めました。彼等には既に刺客を送り込んでます。『二週間戦争』での罪は重く、とても許されるものではありません」


 自分達の都合で自警団を私物化し戦わせ、死者まで出す。さらに、国内で魔族の被害が出ているにも関わらず、未だに自警団を解放せずに留め置いている。


 その自警団と騎士団員から大きな拍手が出る。ナターニャ様が右手を挙げて拍手を止める。


「わたくしが女王となりますが、皆は付いて来てくれますね!?」


 騎士団員と自警団の、「おぉー!」という怒号が響き渡る。再びナターニャ様が右手を挙げて場を静まらせる。


「皆さんの気持ちは分かりました。意義のあるものはいませんね。よろしいです。王と王弟が捕らえられるのは時間の問題でしょう。もうしばらく報告を待ちましょう」


 それから間も無く、国王と王弟が捕らえられたと報告があり、謁見の間に連行されて来た。



お読みいただきありがとうございます。

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