14 貞操の危機?2
お楽しみください。
食事が終わると、テーブルに座りハルオと向かい合っていた。勿論二人共顔は真剣である。
「ねぇ、ナターニャ様の部屋ってどこにあるのかな? 兵士の人達に聞いても教えてくれないだろうね」
ハイミとキサキの貞操の危機だ。助けに行かないと! というかノーリアの、そして世界中の危機のこんな時に、何でこんな事をしているんだろう。
「おっ、ユウマいいねぇ〜。お前の口から出るとは思わなかったぜ」
ハルオも乗ってくる。仲間の貞操の危機だ。気になるのだろう。
しかし、前途多難だ。まずはナターニャ様の部屋の場所が分からない。俺達がいるような客間からは離れた所にあるに決まっている。そして、ナターニャ様の部屋までには沢山の兵士がいるだろう。見つかると部屋に連れ戻されるかもしれない。
「当たり前さ俺が行かなくて誰が行くのさ! 勿論ハルオも来てくれるよね」
「おおう、当然だ。そりゃ、俺だって見てみたいしな。ハイミとキサキとナターニャ様がベッドの上で楽しんでいるのをな。くぅ〜、今から興奮するぜ。参加したいぜ」
「……何を言っているの、ハルオ? 早く助けてあげないと貞操の危機だよ。ままま、まさか、ハルオはナターニャ様の部屋に行って、その、三人がベッドの上で、えっと、アレしているのを覗こうと思ってたの?」
「当然だろ、こんなチャンスは二度とないぞ。お前は見たか? ナターニャ様のナイスバディを。覗いてみたいじゃないか」
確かにナターニャ様のナイスバディには目を奪われた。胸の大きく開いたドレスはヤバかった。ドレスだから足は隠れていたが、ウエストからヒップのラインはさぞ美しいだろう。
「もう、そういえばハルオは年上好きだったね。ナターニャ様は二十五歳だったね」
「二十五歳か。ナターニャ様に比べればハイミやキサキなんてまだ子供だ。はっきり言って、ナターニャ様のナイスバディを覗きに行くのが目的でハイミやキサキはついでだ」
ザラ村の武術少女ファイナちゃんはハルオの事をかなり慕っている。どうやら恋愛感情もあるらしい。ハルオは気付いてない。あんなに可愛らしい女の子に慕われているのに、何こんなに馬鹿な事を言っているんだろう。こんな姿はファイナちゃんには見せられない。
「作戦変更。ナターニャ様の部屋には行かない」
「何でだよ、ユウマ。ハイミ達の貞操の危機を守らなくていいのか?」
「ハルオは助けに行くのが目的じゃなくて、覗きに行くのが目的だろ? 行けるわけないじゃないか」
くだらない口喧嘩が始まった。この国の為にはこんな事をしている場合じゃないのに。
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「さぁ、お二人共お入りなさい」
あたしとハイミはナターニャ様に手を引かれ、震えながらナターニャ様の部屋に着いた。
ナターニャ様は謁見の間からここまでずっと「今日は、美女が二人も。な、何ヶ月ぶりかしら」等とブツブツ言っている。周りに兵士や付き人はおらず、あたし達三人だけだ。
拒否する間も無く連れて来られた。あたしの体は今日ナターニャ様に捧げるのか? まさか女性とは。隣りでハイミも泣きそうな顔をしている。小声で「ユウマ〜、どうしよう〜」と言っている。あたしと目が合うと涙を浮かべて「どうしよう〜」と言ってくる。
部屋に入ると、テーブルに座る様に促される。言われるままに座る。部屋を見渡すと、大きなベッドが目に入った。三人ぐらいは余裕で寝れそうな大きさだ。綺麗で豪華なベッドだ。ルイビンベールのあたしの部屋にあったベッドよりも豪華だ。あんなベッドになんか寝たこと無い。
「さぁ、早速お話しをしましょう」
ナターニャ様が言った。何の話しだろうか? どんな女性が好み? なんて聞かれたらどうしよう。
「ん、どうしたのかしら? 顔が引き攣ってるわよ。この国に来たからには何かよほどの事があるんじゃいかしら? ギガク国王からの使者ならなおさらね」
ナターニャの言葉に驚いた。どういう事だろう。
その通りである。ギガク国王から預かったのは、ノーリア国王に見せた書状の他にもう一通預かっている。この内容はノーリア国王には見せられない。あたし達は捕まって殺されるだろう。ギガクとノーリアは同盟国だが、あんな内容の書状を見せられたらどうなるか分からない。
ナターニャ様は真剣な顔をしてあたし達を見ている。さっきまでの、今にもあたし達の貞操を貪ろうとしていた顔とは大違いだ。王女の顔だ。
「実はギガク国王から秘密の書状を預かってます。ノーリア国王には絶対に見せない様にと。危険な時はすぐに燃やす様に言われてますので、魔術を使えるハイミが持っています」
「はい、こちらです、ナターニャ様」
ハイミが秘密の書状を手渡す。ナターニャ様が受け取る。
「そうですか。貴方達は内容をしっていますか?」
「はい、聞いています。……実はノーリア国王が愚王だと思ったらこれを信頼出来る人に渡す様に言われています。そして手伝うようにと」
あたしの返事を聞いて、書状を読み始めた。顔色を変えずに読んでいくナターニャ様。そして読み終え、顔を上げて言った。
「この時がついに来ましたね。実はノーリアで起こった『二週間戦争』に呆れた周囲の国王からはこういう声が前からあったんです」
この『二週間戦争』とは、現ノーリア国王と王弟が、前国王の死去後に権力争いで起こした内乱だ。国内の町や村から自警団を招集し私兵として戦わせた。死者も出たらしい。その時の死者の一人がザラ村のファイナの父親だ。
「ナターニャ様、立ち上がるのですか? もし、やるなら手伝う様にギガク国王から頼まれてます。国王陛下と王弟殿下はナターニャ様の実弟ですよね」
それを聞いたナターニャ様は上を向いて何かを考え込んでいたが、前を見て言った。
「この国の民の為です。やりましょう」
「分かりました。わたくし達も手伝います。ユウマやハルオも知ってますので大丈夫です。……ナターニャ様、女王になる覚悟はおありですか?」
ナターニャ様は不敵な笑みを浮かべて言った。
「そんなものは『二週間戦争』の直後からありますわよ。では立ち上がりましょう」
力強いナターニャ様の言葉に頼もしさを感じた。
「はい、何からやりましょうか、ナターニャ様? 兵士集めですか? 武器集めですか? わたくし達も戦いなら役に立てます!」
ナターニャ様は何かを考えている。今からこの国始まって以来最大の事件が起こる。ナターニャ様の覚悟は凄いものだろう。口を開いた。
「そうですわね。まずは……ベッドで楽しみません?」
あたしとハイミは盛大にコケた。
「ナターニャ様、こんな時に何を言っているんですか? この国の最大の事件が起こるんですよ!」
「そうなんだけれど、すぐに終わらせればいいじゃない? 短時間で精一杯楽しめるやり方を教えてあげるわよ」
「結構です! 早く作戦に入りましょう! 時は一刻を争います!」
つい怒鳴ってしまったあたし。隣ではハイミが「結局ヤルの? い、嫌だ」と怯えている。何かハイミもあたしが守らないといけない気がした。とにかく早く作戦に移そう。
ナターニャ様は「残念ねぇ〜」と呟きながらついに観念した様だ。そして言った。
「それでは始めましょう。我が国初めてのクーデター。国王と王弟を追放し、わたくしが女王となり国を救います」
ついに始まった。
お読みいただきあちがとうございます。




