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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
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13 貞操の危機?

お楽しみください。

「はっ?」


 国王と王弟の言葉に、明らかに不機嫌になったキサキが鋭く睨む。


 隣りでは、何を言っているのか分からないといった感じの顔をしていたハイミが、意味を理解したようでふぅ、と溜息をつく。


「いやいや、敵国の情報はあまり入ってこないのでね、ルイビンベールのお姫様がこんなに可愛いなんて知らなかったよ」


 国王の言葉に王弟も続く。


「そうですね、兄上。ルーベリアの魔術師さんもイケるね」


 いやらしく不敵に笑いながら言ってくる二人。


「国王陛下、わたくし達はギガク国王の使者としてこの国に来ただけに過ぎません。陛下達のお相手は別のお方にお頼み下さい。どうせ、沢山の側室をお持ちなのでしょう?」


 結構過激な事を言うキサキ。かなり強気である。


「そう言ってくれるなよ、お姫様。美しい女性を見ると一緒に過ごしたいと思うのは当然だろ?」


 キサキの強い言葉にも怯む様子も怒る様子も無い。


「陛下、そんな事よりもこの国の民の事をお考え下さい。わたくし達が寄った村では、魔族に子供が攫われて大変だったのですよ。他にもそんな村や町があるかもしれません」


 キサキの言葉に今度は国王がはぁ〜、と溜息をついた。うるさいな〜、言いたげな感じだ。


「分かってるさ。民の事は考えている。そうだ、君達が今晩相手してくれたら早速明日にでも動くか。どうせ、今日はもう遅い。城に泊まっていくといい」


 国王の言葉にさすがに頭に来て立ち上がって怒鳴り飛ばそうとした瞬間、一人の女性が現れた。


「全く、あなたたちは何を言っているのです。初めまして、客人方。わたくしはナターニャと申します」


 歳は国王よ少し上か、綺麗なドレスを着ている。


「これは、姉上。こんな所にどうしたんです? 今は客人と謁見中なんですが」


 国王の姉らしい。名前はナターニャというらしい。確かに品がある。ドレスからは豊満な胸に、綺麗な白い足が見えている。思わず見とれてしまうぐらい綺麗な女性だ。


「ルイビンベールとルーベリアからの客というから興味があって見に来ました。ギガク国王から書状を承ったらしいですね。ご苦労様です。……そんな客人にあなたたちは、全く」


 ナターニャが呆れた様に言う。国王と王弟は悪びれる様子も無い。


「いいじゃないですか、姉上。これが我等の楽しみみたいなものです」


 やれやれといった感じて首を振るナターニャ。


「よくありませんよ。キサキとハイミでしたね。あなたたちはわたくしの部屋にベッドを用意しましょう。客間ではオオカミに狙われて危険ですからね。よろしいですか?」


 勿論、ナターニャの提案は賛成だ。ここはノーリア国のお城。城内全てがアウェイみないなものだ。


「よかったな、キサキ、ハイミ。この城ではそこだけが聖域みたいなものだしな」


 ハルオが言う。ハルオも国王と王弟の態度にイライラしていたようで、口調が少し怖い。


「それじゃあ、お言葉に甘えます。ナターニャ様、よろしくお願いします」


 可愛らしくお辞儀をするキサキ。ハイミもそれを真似する。これでひとまず安心か。


 すると、ナターニャは両腕でガッツポーズをする。その動作で胸がプルンと揺れる。そして、小声で言った。


「よっしゃ!」


 それを見て俺達四人は僅かな違和感を感じる。何だろう? ナターニャの様子がおかしいような気がする。性欲の激しい弟二人から女の子を救えた事が嬉しいのか? それもあるかもしれないが、ナターニャは舌舐めずりをしている。ハイミとキサキを異性を見るような目で見ている。


 ハイミとキサキもナターニャの只ならぬ様子に気付いた様だ。何かを想像しながらニヤついているナターニャは獲物を今にも襲おうとしているトラだ。えっ、ハイミとキサキは狙われてるのか? それも女性に?


 舌舐めずりをするナターニャを見て国王が言った。


「姉上、よく言いますね。姉上は男と女どちらでもいけるでしょう。楽しもうとしてるのは姉上じゃないですか?」


「「えっ?」」


 ハイミとキサキが後ずさりする。


「「おー! マジで!?」」


 興奮する俺とハルオ。


「ちょっとユウマとハルオ! 何喜んでるのよ!」


 キサキに怒られた。顔は真っ赤だ。隣りでハイミも両手で口元を隠して顔を赤くしている。


 ナターニャが、バレちまったぜ、という感じで、ちっ、と舌打ちをする。


「何を言ってるのですか。野獣二人に蹂躙されるぐらいならわたくしが優しくお相手をして差し上げますのに」


「姉上が遊び終わった娘が回って来た事もありましたよね」


 国王、ナターニャ、王弟の三人がトンデモなない言い合いをしている。何となく興味があるので見入っている俺とハルオ。


「どうしよう、キサキ。もしかしてこれはわたし達の貞操の危機じゃない?」


 ハイミがキサキを揺さぶりながらすがるように言う。キサキは腕を組み考え込んでいる。


「いや、ハイミ、ここはナターニャ様にお世話になりましょう」


 キサキの言葉にハイミが驚いた様に言う。


「えー! キサキはこのままナターニャ様に貞操を捧げるの? そんな〜、わたしは……」


「違うわよ! いいからあたしに考えがあるの。任せて。ナターニャ様、わたくし達はナターニャ様のお部屋にお邪魔します。よろしくお願いします」


 キサキが言うと、国王と王弟と言い合っていたナターニャが振り向き言った。


「本当に? ハイミとキサキ、こんばんは楽しみましょうね。オールナイトでいきましょう! 寝かせないわよ」


「何だ、ハイミとキサキもそっちだったのか。残念だが、姉上、楽しんで下さい。じゃあ、客人達、客間に案内する。今晩は楽しみたまえ」


 国王が落ち込みながら言う。ハイミとキサキをナターニャに取られてもう俺達には興味を失ったらしい。国王と王弟は謁見の間から出て行った。


 何か変な話になってきた。ギガク国王の書状は渡したが、ザラ村やその他の村や町の自警団問題も解決してない。


「ひひひ、それではハイミとキサキはこちらへどうぞ。わたくしの部屋にベッドを準備します。じゅるり、若いお肌ね。おいしそうだわ〜」


 何かナターニャがおかしくなってきた。弟達を前にセーブしていた理性がどんどん緩んできて欲望丸出しになってきている。


 今更事の重大さに気付いたのかハイミとキサキはお互いに身を寄せたまま、ナターニャの様子を怯えながら見ている。ハイミは「わたしの貞操が」とブツブツ言っている。


「ん、どうしたの、お二人共? さぁ、行きましょう。今夜は裸の付き合いをしましょうね。……あれ、ヨダレが。さっ、行きましょう」


 出会った時は清楚そうだったナターニャだが、性欲により別人の様になっている。行きましょう、とハイミとキサキの手を取り引いて行く。ハイミの顔は引き攣っている。ブツブツと「わたしの貞操が……」と本気で心配している。


 俺とハルオは兵士に連れられて客間に案内された。今日はハルオと二人部屋だ。部屋には食事が置いてあるので食べる。普通の量の食事だ。ハイミはよく食べるのにこれで足りるんだろうか。いや、今は貞操の危機でそれどころじゃ無いだろうか。


 ……どうしよう。


お読みいただきありがとうございます。


女性通しというのはどうですか?

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