12 ノーリア王国
お楽しみください。
ノーリア城に着いた。城門前に来た。馬車を降りて門番に近づく。
「ちょっと待て。あの馬車の紋章はギガクの物だな。ギガクからの使者か?」
馬車の紋章を見た門番は俺達とその紋章を見比べながら聞いてきた。ギガクは同盟国だからすんなり入れると思っていたが、何か疑われている。
「はい、そうです。わたくし達はギガク国王の使者として参りました。ノーリア国王へ書状を預かっております。謁見を希望します」
書状を出してキサキが言う。門番は書状を見て何か考え込み言った。
「分かった。所で、お前達は何者だ? その鎧や服の紋章はギガクの物ではないな? 確かその紋章は……」
鋭い門番だ。隠すのも良くなさそうなのでキサキが自己紹介をする。
「はい、わたくしはルイビンベール王女キサキです。こちらはルーベリア騎士団員ユウマ、ハイミ、ハルオです」
自己紹介をした俺達四人をゆっくり一人ずつ見ていく門番。
「分かりました。ギガク国王からの使者なら入城を許可します」
急に態度が緩くなる門番。同盟国であるギガクからの使者だからだろうか。ルイビンベールの王女と聞いたからか。これで安心かと思ったが……
「ただし、皆さんには縄を掛けさせてもらいます。一応敵国と、中立国なので。申し訳ありませんが規則なのです」
「えー、ちょっとー、なんでよー! ギガク国王からの書状もあるのよ!」
キサキの言葉使いが崩れている。確かに縄を掛けられるのは嫌だが、規則なら仕方ないし、何よりもこの国の国王は愚王との事だ。何をされるか分からないからここは大人しく従うべきだろう。
「分かりました。従います」
俺が言うとキサキはえっ、とこっちを見るが、小さく頷き従う事を了承した。
「ありがとうございます。取り敢えず皆さんは控え室にご案内します。そこで国王との謁見をお待ち下さい。ギガク国王からの書状をお渡し下さい。国王に渡します。」
書状を渡すと、両手を後ろに回し、手首を縄で縛られた。そして一列に並んで歩いている。最前列と最後尾にはノーリアの兵士だ。
正面から城内には入らずにお城の裏に回って入る。あまり人気がいなかったのでほとんど場内で人に会わずに控え室まで行けた。
俺達が控え室に入ると、ここまで引率した兵士は、「国王との謁見まで少々お待ち下さい」と言い部屋を出て行った。出て行く時に縄を緩めて行った。元々大してきつく締められていた訳じゃなかったが、あまりいい気分じゃないのですぐに解いた。……いいのだろうか。
「あ〜もう、縄を掛けられるなんて! あたしはルイビンベールのお姫様なのに!」
手をブラブラ振りながら愚痴っている。
「本当だよね。でも、城内に入れたんだからいいんじゃない?」
ハイミはのんびりと言う。すでに控え室の椅子に座りくつろいでいる。
「そうだよな。謁見っていってもいつまで待たないといけないんだろうな。縄も解けたしゆっくり待とうぜ」
確かにすぐに国王に会えるとは限らない。数日待たされるという事はないだろうが、焦っても仕方ない。
「でも、簡単に城内に入れたり、縄を解けるように緩めたりって何か無用心じゃない?」
俺が言うと、他の三人目も頷く。愚王の治める国の甘さかなとも思う。
控え室に入って一時間ぐらいで兵士が来た。国王が謁見すると言う。一応俺達は捕まった身だからまた縄を手に結ぶ。
謁見の間に行くと、豪華な玉座がある。見た感じでもかなりの宝石が使われている。
その玉座には若い男性が座っている。この青年が国王だろう。ギガク国王が言うには二十三歳らしい。そして玉座の隣りにも男性が立っている。こちらが王弟だろう。二十一歳だという。
そして、なぜか二人共妙にニヤニヤ笑っている。
「よく来たな、ギガク国王からの使者であるルイビンベール王女とルーベリア騎士団員よ。ギガク国王からの書状を読んだぞ。世は大変な事になってるみたいだな」
ノーリア国王の言葉に違和感を感じる。世は大変な事になってるというが、それはノーリアも同じだ。いや、むしろノーリアの状況はかなり悪い。最悪と言っていい。何せ国の至る所に魔族が出没し、ザラ村では魔族による誘拐事件が起こったほどだ。かなり国の防衛が機能してない。
「はい、ギガク国王からの書状に書かれてる通りで、ルーベリアは滅亡したと思われ、魔族は世界中を襲い始めています」
キサキの言葉をうんうん、と頷きながら聞く。
「ああ、この国にも魔族が現れているというのは聞いている。そうだな、早く対策を立てなければいけないな」
ノーリア国王が言った。まだ対策は立ててなかったんだろうか。ザラ村から王都までにはかなりの魔族に会った。もしかしたら襲われている村はザラ村だけではないかもしれない。
「はい、わたくし達が行ったザラ村では魔族による誘拐事件があり、村人が苦労してました。早く自警団を返して村や町の防備を固めて下さい。あと、国の騎士団も国内に……」
キサキがそこまで言った所でノーリア国王が言葉を挟んで来た。
「ルイビンベール王女よ、分かってるさ。心配しなくていい。我が国は自分で守れるさ」
そうですか、とキサキが言う。本当に分かっているんだろうか。魔族が現れたと報告があったにも関わらず、未だに自警団を私物化している国王と王弟。
疑心になっていると、国王が言った。
「まぁ、長旅疲れただろう。今日は城内に部屋を準備するからそこで休むといい」
「お気遣いありがとうございます。それでは特に自警団の事はよろしくお願いします」
キサキが言うと国王は、「分かった分かった」と話しを面倒臭そうに終わらせた。そして、言った。
「ところで、ルイビンベール王女キサキと、ルーベリア騎士団ハイミよ。そなた達は美しいな。どうだ、余の相手をしないか? 勿論報酬はする」
すると、隣でずっと黙って聞いていた王弟も口を開いた。
「兄上、独り占めですか? 一人だけ楽しもうなどとは人が悪い」
いやらしく笑う二人。一瞬何を言っているのか理解出来なかった。
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