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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
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10 ガールズトーク

お楽しみください。

 宴が始まった。村での宴なので、お城みたいな豪勢な料理では無いが、村を挙げてのおもてなしだ。どんな豪勢な料理よりも美味しく感じる。



 ハルオが子供達の人気者になっている。見た訳では無いが、ファイナに勝ったという事で村で一気に有名になった様だ。


 特に男の子達が集まっている。


「お兄ちゃん、スゲーな! ファイナお姉ちゃんに、勝ったんだって!?」


「ファイナお姉ちゃんって馬鹿みたいに強いんだぜ!」


 子供達は口々に言う。


「俺なんか悪さした時にゲンコツされたんだけど、痛くて泣いちまったら、『男の子なら泣くな!』ってさらに怒られたんだぜ。悪魔だよ」


「ああ、ここだけの話さ、ファイナお姉ちゃんはゴリラなんじゃないかって噂なんだ」


 子供だから遠慮を知らない。声がデカイ。


 俺はハルオと二人で食事ている。ファイナはハイミとキサキと打ち解けたようで、少し離れた所で三人で談笑している。


「こら、あんた達、聞こえてるわよ! 誰がゴリラよ!」


 子供達の声が聞こえた様だ。勿論本気で怒ってるわけじゃないだろうが、子供達は、「うわっ、姉ちゃんが怒ったぞ! 逃げろ」と言いハルオの手を掴み少し離れた所に座る。


 子供に懐かれて心なしか嬉しそうなハルオだった。



-----------------------------------



 ファイナちゃんと子供達のやり取りを、あたしとハイミは笑いながら見ていた。


 戦っている時は勇ましく、普段は可愛らしく、怒ったら怖い。ファイナちゃんも普通の女の子である。


「もう、聞きましたか? ゴリラってヒドイですよね」


 あたしとハイミに同意を求めてくる。


「そうだよね。こんな可愛い娘を捕まえておいてね」


 あたしの言葉に顔が赤くなるファイナちゃん。ありがとうございます、とお礼を言ってきた。



 何かファイナちゃんがハイミの事を気にしている。どうしたんだろうと思っていると、ハイミも気付いたようだ。


「ん? ファイナちゃん、どうしたの?」


 ハイミが首を傾げながら尋ねる。


「えっ、いや、その〜……ハイミさんってよく食べるんですね。痩せてる割には」

 やはり初めて見る人はそこに目が行くんだろう。次々と料理を持って来て食べている。


「う〜ん、どれも美味しいからどんどん入っちゃうんだよね〜」


 あたし達からすればいつもの光景だ。いつも美味しそうに食べる。好き嫌いは無いみたいだし。


「ハイミはいつもこんな感じよ。これだけ食べても全然太らないよね。」


「はぁ〜、羨ましい」


 あたしの言葉に溜息まじりで言うファイナちゃん。


「さらに、ハイミの体にはある秘密があるのよ。ファイナちゃん聞きたい?」


「えっ、聞きたいです!」


 太らない秘訣でも聞こうとしてるんだろうか? 残念ながらそんな事じゃない。思いっきり勿体ぶって言う。


「それはね〜……ハイミは食べた分だけ全部胸に付くのよ。ハイミがナイスバディなのはせのせいよ」


「えっ、そうなんですか? そんな事があるんですか?」


 冗談のつもりだったのに意外に食いついてきた。ハイミは「そんな訳無いよ〜」と否定しながら相変わらず食べている。


 何かファイナちゃんのリアクションが可愛くて調子に乗ってしまう。


「うん、だからファイナちゃんもよく食べた方がいいよ!」


「そうか〜、よく食べるか〜。あたしは食べると太るかと思ってあまり食べる量は少なめにしてたんですよね〜。う〜ん……」


 何かを考え込んでいる。深刻そうな顔をして。


「ファイナちゃん、どうしたの?」


 ハイミが聞くと、ファイナちゃんがあたし達の方をくわっ、と見て言った。


「あの、お二人に聞きたい事があります! ……お二人のバストのサイズはいくつですか?」


「「えっ?」」


 思いもよらない質問に少し驚くあたし達だが、ハイミが答える。


「わたしはDカップだよ」


「あたしもDカップ。ハイミはDじゃなくない? Eは絶対あるよ」


「えっ、そうかな〜。最近測ってないからな〜」


 そんな会話をしていると、横で何やらファイナちゃんがブツブツ言っている。

「Dカップ、Eカップ……羨ましいな〜」


「ファイナちゃん、もしかして気にしてるの? ファイナちゃんは何カップ?」


 あたしが聞くと元気無く答えた。


「ギリギリでBカップです。多分。ギリギリあると思います。お二人はスタイル良くて羨ましいです」


 あたし達と自分の体を交互に見ながら言っている。


「でも、ファイナちゃんは背も高いし、武術をやっているだけあって体も締まってるよね。胸も程良く膨らんでて、ウエストからヒップのラインも綺麗だと思うけどな〜」


 あたしはファイナちゃんも綺麗な体のラインをしていると思う。治癒術師のあたしや、魔術師のハイミとは違って体が締まっている。ファイナちゃんは顔も可愛いから、もしこれが現実世界なら、美少女武術家としてテレビにも出れると思う。


「そうですか? ありがとうございます。あたしは自分の色気の無さに、いつもガッカリしてたんです。これじゃ、男性は振り向いてくれないかなと」


 ファイナちゃんの言葉にハイミが反応した。


「えっ、男性? ファイナちゃんは好きな人がいるの?」


 ファイナちゃんも十五歳の年頃の女の子だから好きな人ぐらいいるかもしれないが、確かに気になる。


 さらにファイナちゃんはかなりしっかりしている。自警団がいない村を一人で守って、子供達の世話もしているみたいだ。こんなによく出来た娘のお眼鏡に叶ったのはどんな人なんだろう。決して大きくないこの村にそんな人がいるんだろうか。……気になる!


「どんな人? 教えて教えて!」


 ファイナちゃんはあたし達の反応に驚いている。思った以上の食い付き具合だったのだろう。


 だが、ここまで来たら聞きたくなる。隣ではハイミが目を大きく見開いてファイナちゃんの答えを待っている。


「えっと……憧れの人ならいます」


「えー、どんな人?」


 楽しそうなハイミ。女の子はコイバナが好きである。目をキラキラさせているハイミ。


 勿論あたしも好きである。年頃だからね。聞いてやろう。


「その人はファイナちゃんの気持ちに気付いてるの?」


「気付いてないと思います」


 何て男なんだ。こんな小さな村でこんなに可愛い娘の気持ちに気付かないなんて!


「えっ、気付いてないの? そう。どんな人?」


 ハイミが尋ねる。


「えっと、あたしより強くて、少しドジで、大人らしい人です」


 言いながらどんどん顔が赤くなっていくファイナちゃん。可愛いリアクションである。


「えっ、ファイナちゃんより強いの? そんな人がこの村にいるんだ。ハルオとどっちが強いかな〜」


 ハイミが言う。確かにそんな人がいるんだろうか。王都に召集されている自警団の人だろうか。


「う〜ん、どうですかね。分かりません」


 それ以上は教えてくれなかった。どうせあたし達は知らない人だろうしね。


「というかお二人はどうなんですか? 顔も可愛いし、スタイルもいいからモテるんでしょう? 実はお付き合いしている人がいるとか?」


 今度はあたし達に振られた。あたしが答えに困っているとハイミが答えた。


「わたしは好きな人いるよ。内緒だけどね」


 人差し指を口に当てながら言う。ハイミの好きな人はなんとなく分かる。多分、あいつだろう。


 それを聞いてファイナちゃんは、「キャー、いいなぁー!」と両頬に手を当てならがら言う。


「ヘェ〜、キサキさんは?」


 うわ、こっちに来た。ここはやり過ごそう。


「あ、あたしは内緒!」


 ハイミの様に人差し指を当てて言う。


「え〜、内緒ですか〜。……でもその反応は好きな人いますね? あたしの目は誤魔化せませんよ!」


 鋭い。女の勘は怖い。あたしも口を割らなかった。どうにか喋らせようとするファイナちゃん。横でハイミはニコニコしながら見ている。


 う〜ん、ガールズトークは楽しいな。


お読みいただきありがとうございます。

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