表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
35/60

7 魔族の誘拐事件

お楽しみください。

 ついにギガクの国境を越えた。ここまで操縦してくれた御者さんとはお別れだ。ここからは自分達で操縦する。ハイミが操縦できるらしい。



 ギガクの国境を越えてノーリアに入るには、その間にある《四国境の森》を抜けないといけない。そんなに深い森ではないが、途中で一泊した。



 森を抜けると、すぐにノーリア王国に入った。そして、村が見えた為、そこを目指した。


 村の入り口には見張りもいなく、村に入ったがあまり人気がない。とりあえず村の中心部を目指した。



 村の中心広場には人が集まっていた。馬車で近付いて行くと、やっとこっちに気付いた様で村人は一斉に視線を向けて来た。


 俺達は馬車を降り、馬車の前に並び、礼をする。すると村長が出て来た。


「これはこれは、お客様ですかな? ザラ村にようこそ起こしくださいました。その馬車に付いた紋章はギガク王国の物ですね。ノーリア国王への使者ですか?」


 村長は平静を装っているが、周りの村人は明らかに何かを気にしている様だ。かなりソワソワしているが、それさ俺達の事ではなさそうだ。


「わたくし達はギガク国王の使者として参りました。わたくしはルイビンベール王女のキサキと申します」


 ルイビンベール王女という言葉に明らかに驚いている村人達だ。


「何と、ギガクからアリス教国のルイビンベール王女様が使者としてお出でになるとは驚きですな。よほどの事があったのですな」


 さすがに何かを察したのだろう。既にギガクは十万もの魔族と正面からぶつかった。ルーべリアは滅亡した。もう隠す必要もないだろう。


「はい。わたくし達は五日前にギガクを出ましたが、ギガクは十万の魔族と戦闘中です。


 こちら三名はルーべリアの者です。こちらから、ユウマ、ハイミ、ハルオです。ルーべリアは十万の魔族の奇襲を受け滅亡したと思われます」


「何と十万ですと? それは本当ですか? かの永世中立国のルーべリアが滅亡? いくら奇襲とはいえ滅亡とは。敵は魔族ですか? そうですか……」


 何かを考え込んでいる村長。すると、村人の一人が言った。


「村長、魔族という事はさっきの者達はやはり……」


「さっきの者達? 何かあったのですか?」


 キサキが聞くと、村長が話し始める。


「実は、数十分前の出来事なんですが、村の子供が二人誘拐されました。そして、目撃者の話しによると、犯人は三人で、人ではなかったという事です。人型だった様ですが、肌が白く、背中には翼があったらしいのです」


「それは間違いなく魔族です。翼があるという事は竜人族です。しかし、肌が白かったという事は最弱の白竜人族のはずです。三人なら村の自警団でも十分戦えたはずです」


 キサキが聞くと、唇を噛み締めながら村長が言った。


「今、村には自警団はいません。国王からの招集命令で王都に行っているんです」

 ギガク国王が言っていた事を思い出した。ノーリアは内乱があって自警団が戦わされたと言っていた。キサキが謝り言う。


「申し訳ありません。その事はギガク国王から伺っています。内乱があって自警団にも招集命令があったのでしたね。という事は国内の村や町の自警団はまだ王都に残っているんですか?」


「おそらくそうでしょう。こんな辺境の村まで魔族が来るぐらいですから、海岸線近くの町や村は大変だと思います」


 さらに続ける。


「こんな状況の村なので、大した抵抗も出来ずに攫われてしまったんですが、一人の娘が魔族を追いかけて行ったんです」


 驚いたキサキが聞く。


「女の子が一人で行ったんですか? 無茶じゃないですか。どんな娘なんですか?」


「実はこの間の内乱で招集された自警団の兵士の娘です。歳は十五歳で、名前はファイナといいます。その兵は内乱で戦死しました。そのせいもあって彼女は自警団が戻るまで、父の代わりに村の警備を頑張ると言って普段からパトロールをしていたんです。でも、まさか魔族が現れるとは思わずに、攫われてしまいました。魔族を止めれなかった自分を凄く責めてすぐに追いかけて行きました」


「でも、いくら何でも女の子が一人ではどうにも出来ないのでは? すぐ助けに行った方がいいでしょう。わたくし達が行きます。方角を教えて下さい」


 村長が申し訳なさそうに言う。


「本当ですか? ありがとうございます。戦死した兵士は村一番の戦士で、若い頃は王都から声が掛かった事もある武術家でした。ファイナは父に武術を習っていて、かなりの強さです。この村では父の次に強かったんです」


 戦死した父の為に健気に村を守っていたという少女。隙を突かれたとはいえ悔しかっただろう。


「魔族はこの村から真っ直ぐ東に逃げて行きました。馬車ぐらいは通れる道があります。ファイナは足も早いから敵がそんなに強くないなら追い付いているかもしれません」


 キサキは頷き言う。


「では、行ってきます。この馬車は早いからわたくし達も、すぐに追い付けますわ。では、早速行って来ます」


 よろしくお願いしますと村人達。馬車に乗り、ハイミの操縦で出発した。



「村に着いたと思ったらバタバタしてまた出発だね」


「うん、女の子を助けてあげよう! あたし達の手で!」


「まぁ、いいけどな」


 俺、キサキ、ハルオが言う。まぁ、女の子一人に魔族三人では、いくら武術が出来ても、もしかしたらと言うこともある。


 さらにキサキはノーリアとは敵国となるアリス教国ルイビンベールの王女だ。実際にルイビンベールの王女と聞いて村人は少なからず反応していた。言い方は悪いが信用を得る為に点数稼ぎをしていた方がいいかもしれない。



 馬車のスピードが早いため、本当に早くファイナと魔族に追い付いた。



お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ