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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
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6 川での喧騒

お楽しみください。

 馬車で走っている。ギガク広野は国の西寄りにあった為、東南にあるノーリアの国境までは時間が掛かる。


 途中の町や村に寄って食材を買ったりした。とにかく急いでいるので、朝から夕方まで買い物以外は走りっぱなしだ。


 あとは川だ。水は買うよりも勿論川で汲んだ方がいい。町で人数分の水筒をいくつか買ってそれに汲む。


 川にはもう一つの目的もあった。


「暑〜い。汗が出る」


 馬車の中で愚痴を漏らすキサキ。確かに馬車の中は暑い。馬車の中はまぁまぁ広い。食事が出来るようにテーブルもある。側面には窓があり風は入ってくるが、四人いればさすがに馬車内は暑くなる。


「ねぇ、ユウマ、お風呂に入りたい! 今夜はどこかの宿に泊まろうよ」


「う〜ん、そうだなぁ。確かに風呂に入ってちゃんとした布団で寝たいね。でも、この辺りに町や村はあるのかな?」


 御者に聞いてみるが、この辺りには無いらしい。近くの町までは二日分ぐらい道を外れないといけないらしい。


 それを聞いて肩を落とすキサキ。ハイミも言う。


「ノーリアに入るまでは五日掛かるらしいよ。わたし達の今までで最長の長旅だね。その間にお風呂に入れないのは確かに辛いな〜」


 今までの移動は馬車や船で長くても丸一日ぐらいが最長だった。寝るのはお城か船だった。今まではあまり考えた事なかったが確かに辛いかもしれない。すると、御者が話しかけてきた。


「皆さん、近くに川がありますが、寄りますか? 水を汲んでおいた方がいいですよね」


 お願いします、と返事した。まだまだ水は余っているが、何があるか分からないから補充しておいた方がいいだろう。


 すると、隣でハイミとキサキが突然声を上げた。


「川? ……ねぇ、キサキ、川だって!」


「えっ、どうしたのハイミ? ……あっ、そういう事か!」


 急に元気になる二人だった。



「ねぇ、マズイよハルオ」


「嫌なら帰ってもいいぜ?」


「だってさ〜。バレたら殺されないかな?」


「俺は死んでも構わない!」


「えー! 何言ってるのさ!」


 今は川辺の草むらに隠れている。



 数十分前に遡る。


 川に着くと、俺とハルオが水筒に水を汲みに川に行った。いつもは四人で行くのだが、今日はキサキに「頼むわね!」と言われて二人で来た。さっきは川と聞いて盛り上がっていた二人だが、来ないんだろうかと思ったが違った。


 水を汲み終わって馬車に戻ると、待ってましたとばかりにハイミとキサキが立っていた。手には荷物を持っている。


「お帰り。じゃあ、今度はあたし達が行って来るね」


 キサキが言う。


「ん、何するの? 洗濯? 料理?」


「あっ、料理もいいわね〜。川辺でやる食事も美味しそうだけど、外れ。わたし達、水浴びして来る」


 なるほど、さっき盛り上がっていたのはこういう事か。風呂は無理だけど、水浴びだけでも出来ればいいわけか。ハイミは料理にも食いついたが。


「そういうわけだから、ここで待っててね」


 キサキが言う。


「うん、行ってらっしゃい」


 二人はウキウキしながら川へ歩いて行った。


「……よし、ユウマ行くぞ」


 二人の姿が見えなくなると、ハルオが小声で言ってきた。


「え、どこに?」


「全くお前は。着いて来い!」


 猛ダッシュするハルオに着いて行くと、草むらに着いた。さっと隠れる。


「よし、着いたぞ。……先回り成功だ。見てみろ、川だ」


 川が見える。さっき俺達が水を汲んだ川だ。誰もいない。ハイミ達はまだ来ていない。と、そこでハルオの企みに気付いた。もし、俺が考えている通りだったら恐ろしい事を考えている。


「ま、まさか、ハルオ?」


「当然じゃないか。一部始終を覗くぞ!」


 やっぱり。はぁ、とため息をついたところで、冒頭に戻る。


 しばらくはハルオとのやり取りが続いた。見るぞ! ヤバイって! 見たいだろ? それは……の繰り返しだ。ハルオを残して帰ることも出来たかもしれない。でも、足が動かなかった。まるで何かの呪いに掛かったように。これは何だろう。口ではヤバイと言っているが、足は言ってない。呪いなら仕方ないかなと思っていると、川に二人が現れた。遅かった。仕方ないかハルオを見張るという名目でここに居よう。


 二人共シャツを着ていた。丈が膝上ぐらいある。男物だろうがあんなのをいつ買ったんだろう。


「ちっ、さすがに服は着るか。甘かった。仕方ない、シャツで我慢しよう」


 隣でブツブツ言っているハルオ。何を悔しがっているんだろう。


 すると動きがあった。二人はシャツの裾に手をかけた。そして捲り上げた。そして脱いだ。


「おおー! ヤバイぞ、あれ」


 ハルオが小さく声を上げる。うるさい。バレるじゃないか。


 しかし、よく見ると確かにヤバイ。さらに脱がれたシャツの下に釘付けになった。


「ねぇ、あれってビキニじゃない?」


「おっ、ユウマいいねぇ〜。あいつらビキニなんて持ってたんだな」


「って言うか、この世界にビキニなんてあるんだね」


「ああ。絶対木下さんの趣味だぜ」


 木下さん、グッジョブ。


 川に入る為に準備運動をしている二人。


「見てみろよ、あれ。二人共スタイル抜群だな。腰のクビれとか凄いのに出る所は出てるぞ」


 準備運動は色々な動きをする。腰を捻ったり、膝を曲げたり。さらに、膝を伸ばした時に前屈みになる。角度的にヤバイ。胸はビキニで隠してあるが、前屈みになるとモロに見えてしまう。


「おい、サービスショットだな。くぅ〜、木下さん、ありがとう!」


「ちょ、ちょっと、聞こえるよ」


 興奮しているハルオ。もはや隠れている事を忘れている。



------------------------------------



「ねぇ、キサキ。これってビキニだったっけ? 買っておいてよかったね。水浴びで使う物なんだ」


 横でハイミがはしゃいでいる。ビキニは厳密に言えば、水浴びで使う物じゃないけど、別にいいか。


 ユウマとハルオには水を汲みに行ってもらっている。いつもはみんなで行くんだけと、あたしとハイミはある準備をしている。


「ルーべリアは島国なのに、海に泳ぎに行ったりしないの? あとは学校で水泳の授業はないの?」


「うーん、海で泳ぐ時は学校指定の水泳着を着るから」


 学校指定の水泳着ってどんなんだろう? スクール水着みたいな物かな。


 ハイミはビキニを着るのは初めてみたいだから、あたしが手伝う。ちなみに、あたしも初めてだ。現実世界では真面目な学級委員長なのでビキニを着て海ではしゃぐなんて出来ない。さらに現実世界のあたしはビキニを着るほどの体型を持ってない。幼児体型とまでは言わないが。ハイミがビキニを着るのを手伝っていると、胸、ウエスト、ヒップ、足とどこを見ても一級品だから自信をなくしそうになる。さっき偶然手の甲に当たった胸の感触は忘れられない。


 しかし、今のあたしは現実世界とは違う。下を見ると豊かに膨らんだ胸がある。お風呂で手を当ててみると、あたしの手では隠しきれかった。今までは下を見ると足が見えていた。手を腰に当てると、嘘みたいにクビれている。お肉が掴めないぐらい細い。その下には少し小さいが、ちょうどいい肉付きの綺麗なヒップ。美尻というやつだ。現実世界では色気も何もなかった。


 準備運動をする。水に入る前には体操をしていたような気がするし。屈伸して、アキレス腱を伸ばして……あとは何だっけ? まぁ、しっかりと下半身を伸ばしておけば大丈夫だろう。


「ん!? ……」


 ゾワっとする気配を感じた。何だろう、このいや〜な視線は。何かあたしの全身を舐め回すように見てくる視線だ。飢えた獣かな? いや、違う。もしかして魔族? 邪悪な気配ではない。


 見つけた! ……殺してやる。


「ねぇ、ハイミ。ハイミが使える最強の水の魔術は何?」


「えっ、ウォーターフォールだけど?」


 中級魔法だ。使い込めば、小さな木の小屋ぐらいは潰せる威力になるが、今の敵はバカ二体だ。


「ハイミ、あそこの草むらに何かの気配がする。あそこにウォーターフォールを打ち込んで! 魔族かも」


「本当に? 分かったわ! くらえ、ウォーターフォール!」


 素直に全力でぶちかます。


 草むらから、ギャー、と悲鳴が上がる。


「よっしゃー、命中!」


「えっ、えっ?」


 未だに状況が分かってないハイミだが、草むらから二人が起き上がり、ヨロヨロでこっちに歩いて来る。


「ユウマ、ハルオ、大丈夫!?」


 急いで二人に駆け寄るハイミ。ヨロヨロだった二人は眩しすぎるビキニ姿のハイミを見て一瞬鼻の下を伸ばしたが、後ろで腕を組んで仁王立ちのあたしを見て固まる。


「さぁ、何をしていたか話してもらおうかしら」



「はい、すみません」


 素直に謝るハルオ。俺も一緒に頭を下げる。


「素直でよろしいわね〜。言い訳はしないのね」


 キサキ怖すぎる。でも、意外に素直でキサキも強くは来ない。


「全く、あたし達の水浴びを覗こうなんて、いい度胸ね。欲情しないでよね、頼むから」


「本当にもうしません」


 素直に謝る。これで終わりだろう。先に馬車に帰ってよう。そう思ったが、ハルオが余計な一言を言った。


「欲情はしませんでした。お前らの子供体型では」


「なんですって! もう一回言ってみなさいよ!」


 うわっ、さらに油に火を注いだ! 素直に謝ってればいいのに。


「お前らの子供体型では欲情しなかったよ。まだまだだな」


「こんなナイスバディな美女を二人も捕まえて何言ってるのよ!」


 キサキも何を言っているんだろう。とりあえずは褒めてほしいんだろうか。よし。


「いや〜、二人共ビキニが凄く似合っているよ」


「本当!?」


 俺の言葉にハイミが嬉しそうに声を上げる。


「おっ、言うねぇ、ユウマ。全く、お子様好みは」


「まだ言うの? ハルオ」


 よせばいいのに、いちいち一言多いハルオ。それにわざわざ反応するキサキ。また騒がしい口論が始まった。


 そこで、横でその様子を見ていたハイミが言った。


「ねぇ、二人共せっかくだから一緒に水浴びしない? 混浴みたいで楽しそうじゃない」


 思いがけない提案に驚く俺達。


「ちょっと、ハイミ。本気?」


「えっ、本気だけど?」


 何かおかしい事を言ったのかな? という感じで首を傾げるハイミ。横ではキサキが顔を赤くしている。


「えっ、い、いいの?」


「うん、行こう!」


 俺の手を取って川に引っ張って行く。


「ちょっと待ってよ!」


 キサキが追いかけてくる。後ろからハルオも歩いて来る。



 川では水に浸かったり、かけ合ったり楽しんだ。ハルオは一人で何かしている。

 目の前にはビキニ姿の美少女が二人。楽しい。キサキも何だかんだ言って楽しんでいる。



 水浴びが終わって出発した。ドライヤーが無いから、ハイミの火の魔術で髪を乾かしていた。川で水浴びをした割には風呂上がりみたいないい匂いがする二人。


「気持ち良かったね、キサキ。また川があったら入りたいね。ビキニも可愛くて気に入っちゃった」


「う、うん、そうね。可愛かったわよ」


「ありがとう。キサキも可愛かったよ」


「そ、そう? ありがとう」


 今度は面と向かって一緒に水浴びをしようと言っても大丈夫かな。また川がないかなぁ。



 そんな事を考えながら馬車で進む。


お読みいただきありがとうございます。

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