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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
30/60

2 子供にもモテる?

お楽しみください。

 村長の屋敷に着いた。まぁ、村の屋敷にしては大きい方だろう。俺達四人が寝る部屋ぐらいはありそうだ。


「ただいま! エリナはおるか?」


 村長が呼ぶと一人の女の子が出て来た。


「はーい! おじいちゃんお帰りなさい。……そちらはお客様?」


 可愛らしい少女だ。年齢は十歳とちょっとといったところか。黒髪ツインテールという定番だ。


「他国からのお客様だ。失礼の無い様にな。早速だが彼等にお茶を出してくれ」


 はーい、と奥に走って行った。


「可愛いわねぇ〜」


 ハイミがニコニコしながら言う。


「孫のエリナですじゃ。可愛い孫です。両親もこの村にいるんですが、訳あってよく屋敷に来るんです。その度に手伝いがてらに色々教えてるんですよ」


 村長が嬉しそうに言う。自慢の孫なのだろう。



 客間に通された。大きなテーブルに俺達四人が並んで座り、向かいに村長が座っている。


「使者は先ほど立ったようです。申し訳ないが、皆さんは使者が戻るまでこの屋敷に滞在して下さい。お城みたいな豪勢な食事は出ませんがね」


 いえいえ、と首を振る。


「十分です。武装した方達が出て来た時は縄を掛けられるかと思いましたし」


 ふぉっふぉっふぉ、と笑う村長。


「この国は、ここ数年ぐらいで色々な事があったんです。それで大人達は少しピリピリしています。まぁ、その事は国王に会えば話があると思いますがね」


 穏やかに言う。村長というだけあって落ち着いて堂々としている。


 そこで、エリナがお盆にお茶を乗せてやって来た。手元がかなり危なっかしいが。


「お待たせしました、どうぞ!」


 俺達の前にお茶を並べて行く。並べ終わるとまたキッチンへ下がり、今度は茶菓子を持って来た。


「ごゆっくりどうぞ。……おじいちゃん、この人達がさっき海岸線にやって来た船に乗ってた人?」


「こら、客人だぞ。失礼の無いようにせんか。……何じゃ、船の件を知っておったのか」


 胸を張って自信満々に言うエリナ。


「当然よ! あたしだって情報収集を怠らないんだから! 将来は剣士になって自警団でこの村を守るんだから!」


 自警団? とハイミが聞いた。すると、エリナは大きく頷き言う。


「はい。この国では十二歳で剣術を習い始めます。そして十五歳で自警団に入ります。あたしは今、十一歳だから来年から剣術を習い始めるんです!」


 すると隣で村長が溜め息をついて言った。


「エリナ、剣術を習うのは十二歳の男子だ。お前は女の子だろう?」


 エリナは少し怒った様に頬を膨らませて言う。


「何で女の子はダメなの? あたしだって剣術を覚えて村を守りたいのに」


「女の子は戦う男子を影で支える為に剣ではなく家の事をこなさないといけないんじゃ」


 納得いかないという風に下を向いている。女は家で男を支えろなんて随分古臭い考え方だと思う。俺達の世界ならこんな事を為政者が言ったら男尊女卑だと失脚させられるだろう。まぁ、ここはゲームの世界だし仕方ないのかなと思う。


「エリナはワシを説得しに毎日屋敷に来てるんです。ダメだと言っても聞かなくて」


 困った様に言う村長。そこで、エリナが妙に俺の事をチラチラ見ている事に気付いた。


「ん、エリナちゃん、どうしたんだい?」


 声を掛けるとたたたっと俺に寄って来た。異様に目をキラキラさせている。十一歳か。可愛いな。


「あの、お兄ちゃんは剣士ですか?」


 手を胸の前で組んで顔を近づけてくる。何か照れてしまう。黒髪ツインテールなんて、俺の好きな人気声優の『早瀬沙織』みたいだ。それにお兄ちゃんって嬉しい。


「うん、そうだよ」


 戦った事は無いけどね。さらにキラキラさせて言う。


「うわ〜、触っていいですか?」


 驚いた。十一歳の女の子に触られるなんて。……どこを触るんだろう。


「い、いいけど、どこを?」


「あの、立ち上がってもらっていいですか?」


 立ち上がるのか? 大丈夫だろうか。でもこの黒髪ツインテールのお願いだ、断れない。


 立ち上がるとエリナちゃんがゆっくり手を伸ばしてきた。何故か目を瞑ってしまった俺。


 ペタペタと感触がした。触っている? どこを? 恐る恐る目を開ける。


「うわ〜、この剣カッコイイ! 村の自警団の剣より豪華だ! 鎧もカッコイイ! わ〜」


 ……剣と鎧をペタペタ触っている。村長が呆れた様に言う。


「全く、止めなさい。客人だぞ。すみません、ユウマ殿。この娘は剣や鎧に目がないんです。エリナ、客人の宿泊部屋の準備をしてきなさい」


 はーい、と素直に離れて、てててっと走り去って行った。


 ビックリしたけど、可愛いな。大きくなったら早瀬沙織みたいに可愛くなるんだろうな。


 そこで、ふと複数の視線に気付いた。横を見るとニヤニヤしたハルオとキサキがいた。


「なーに目を瞑ってるんだよ、ユウマ。お前は子供にもモテるんだな。何か期待したんじゃないんだろうな?」


「ほんと。『お兄ちゃん』なんて呼ばれてデレデレしちゃって」


 ハルオとキサキが言う。


「べ、別に期待なんかしてないよ! デレデレしてもいいだろ」


 俺、ハルオ、キサキがギャーギャー騒いでいると、隣で首を傾げていたハイミが言う。


「ユウマは『お兄ちゃん』って呼ばれたいの?」


 今の『お兄ちゃん』の部分は女の子っぽく可愛い声だ。早瀬沙織は女の子、大人、男の子何の声でも出来るが、こういう声も好きだ。俺としてはエリナちゃんも可愛いが、ハイミの方がよっぽどグッと、グラっとくる。俺はロリコンじゃないしね。


「ち、違うよ。何て言ったらいいかな……」


 いつもの喧騒に戻った。


「ほっほっほ、アリウス教皇からの大事な書状を持って来た割には随分リラックスされてますな」


 村長の言葉に、すみません、と謝る俺達四人だった。



 夕食まで自由時間が出来た。俺は勿論特訓だ。ハイミは村人と夕食の準備だと言っていた。ハルオは村長から村人に武術を教えて欲しいと言われて張り切っていた。キサキは……女子力アップ作戦だろう。何をやってるんだろう。ハイミに付いて料理を覚えればいいのに。



 剣を振った。基本技の『強振剣』と『突進剣』は百回ぐらいで熟練技の『双・強振剣』と『突進剣・連撃』が使える様になった。しかし、熟練技はすでに百回は使ったが、それ以上の技は出ない。もっと出さないといけないんだろうか。または実践で使わないと意味が無いとか。うーん、何とも言えない。


 それにしても、自分でも上達が分かる。『強振剣』から出る衝撃波なんて最初の頃なんて目じゃないぐらい大きい。基本技は百回で熟練技を覚えるが、基本技自体の威力もどんどん上がるんだろう。



 今日も有意義な特訓が出来た。熟練技も百五十回は使っただろう。熟練技以上の技を覚えないのは残念だが仕方ない。今出来る技を十分鍛えればいい。


 もう、いい時間だろう。夕食が待っている。最後に思いっきり一発打って終わろうと思う。いくぞ!


「強振剣!」


 ズババっと勢い良く衝撃波が飛ぶ。満足な出来だ。実践で使いたい。


「おーい、 剣士のお兄ちゃん、晩ご飯ですよ!」


 見ると、エリナちゃんだった。手を振っている。見た目は少し違うが、小さくなったハイミみたいで可愛い。


 それじゃあ、帰ろうかなと思っていると、エリナちゃんがこっちに走って来た。


「さっきの技凄いですね! 『強振剣』ですよね? 村の自警団でも何人か使えるんですよ。でも、お兄ちゃんの方が威力が凄いです!」


「村の自警団は技が使えるの? 凄いね! ……ん、どうしたんだい?」


 キラキラした目で俺を見ている。前に一度見た目だ。あの時はこの後にああ言ったんだった。


「あの、触っていいですか?」


 ほら来た。それにしても剣と鎧が好きだな。将来は剣士になりたいだけある。どうぞ、と鞘に入れた刀を差し出す。するとキョトンとして言った。


「あの、ここに座ってもらっていいですか?」


 大きめの石を指差して言った。座るのか? 何故だろう? 不思議に思いながら石に座った。


 ……ペタペタ感触が来た。ん、どこを触ってるんだ? 剣でも鎧でもない。鎧は体全体を覆っているわけじゃなく、肩、肘、膝、胸、腹を隠しているだけだ。……体を触っている! 服の上からだけど。


「ちょ、ちょっとエリナちゃん?」


「うわ〜、見た目は細身なのにガッチリしてるんですね。あの、力こぶ作って下さい! あと、太ももに力入れて下さい!」


 注文が多い。でも素直に従ってしまう俺。


「すご〜い、固ーい! ……あの、お願いがあるんですが」


 俺の太ももを触りながら、上目遣いで言ってくる。あと、五年後に会いたかったよ。……今でも十分いいけど。くすぐったさを我慢しながら言う。


「うん、何だい?」


「鎧を脱がせていいですか?」


 驚いたけど、もう、何でもいい。いいよ、と言うと、手慣れた様子で鎧を脱がせていく。子供に鎧を脱がされる。エロい光景だ。ロリコンには堪らないだろう。俺は違うけどね!


 鎧を脱がし終わると、待ってましたとばかりに触りだした。俺の胸板だ。遠くから見たら絶対エロい事をやっていると思われる。近いからエリナちゃんからフワッといい匂いがする。子供でもいい匂いがするんだな。……あくまでも俺は興味無いが。


「胸板も固いですね。トレーニングとかしてるんですか?」


「いや、特別にはやってないよ。一生懸命剣を振っているだけだよ。エリナちゃんは筋肉も好きなの?」


 すると触るのを止めて、うーんと腕を組んで考えて言った。


「あたしも、剣術を習いたくてトレーニングしたいんですが、おじいちゃんに怒られるんです。女の子らしくしろって」


 それはそうだろう。この世界には女剣士はいる様だが、祖父としては孫娘には危険な事はして欲しくないのかもしれない。


「村長に反対されてたもんね。村を守りたいなら治癒術を習うのもいいと思うよ」


 治癒術なら村長も反対しないだろう。


「治癒術で村を守るっていうのはピンと来ないんです。治癒術じゃ敵を倒せないし、剣士の方がカッコイイし」


 うん、まぁ両方本音なんだろう。カッコ良く剣を振って、敵をバタバタと倒したい。男の子なら誰でも憧れるだろうが、戦いには治癒術師も不可欠なのでその辺が分かれば剣士じゃなくても納得しそうだが。説明しようと思ったら迎えが来た。


「おい、ユウマ、晩飯だぞ!」


 ハルオだ。意外な迎えだ。脱いだ鎧を持ってエリナちゃんとハルオの元に行く。妙にくっついてくるエリナちゃん。かなり懐かれたな、と思う。



「はぁ〜、お前は子供にもモテる様になってるんだな」


 エリナちゃんと別れた後にハルオが言う。


「えー、エリナちゃんは剣士に興味があるだけだよ」


 俺の春はいつ来るんだ! なんて言っているハルオ。そんな事知らないよね。


お読みいただきありがとうございます。

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