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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第四章 南東大陸へ
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1 ギガク王国のカルボ村

新章です。お楽しみください。

 ギガク王国に着いた。船からボートに乗り換えて岸に上陸した。無人の砂浜だ。

 アリウスの船が帰って行く。ハイミが手を振っている。



 周囲を見ると、五百メートルぐらい先に村が見えた。少しは人が居そうだ。お城までの道程を聞こう。馬車が出てるといいが。村なら換金所はないだろう。買い物もしたいが、残金が気になる。


「あそこの村に行こうよ。いろいろ準備をしにさ」


 皆は賛成してくれた。それしかないしね。



 しばらく歩くと村の入り口が見えてきた。小さな村だと思っていたが、家はそれなりに沢山ありそうだ。これなら馬車もあるだろう。


 村に近付いた時に、周囲に沢山の人の気配がした。四人とも気付いたらしく、立ち止まる。すると村の入り口から沢山の人が出て来た。大人の男が約三十人。全員剣や弓で武装している。身構える俺達。すると中から一人の老人が出て来た。


「これは、若いお客さんですね。ワシはこの村の村長です。さっきのアリウスの船から降りて来た方達ですかな? てっきり、アリウスの使者かと思いましたが、あなた達は?」


 殺気漲る男達の真ん中で村長が穏やかに話す。


「俺達はアリウス教皇の使者とし来ました。俺はルーべリア騎士団長シュバードの息子、ルーべリア騎士団ユウマです」


「同じくルーべリア騎士団ハイミです」


「同じくルーべリア騎士団ハルオです」


「わたくしはルイビンベール王女キサキです。アリウス教皇からギガク国王への書状も預かっています。お城へ行く為に参りました」


 後ろの男達は、ルーべリア騎士団と聞いて驚いていた。それに、シュバードという名前に妙に反応していた様な気がするが、キサキがルイビンベール王女と聞いてさらに驚いていた。後ろでザワザワと騒ぎ始めている。村長は笑っていた。


「これはこれは、世界三大剣豪として名高いシュバード殿のご子息とは。会えて光栄ですな」


 それは初めて聞いた。


「世界三大剣豪? そうなんですか?」


「何と、ご存知無かったか? 有名なのは非アリス教国だけかもしれませんな。敵には容赦無く悪鬼の様に立ち向かうとか」


 そういえばゲームでそういう設定があった気がする。隣ではハイミも丸い目をして驚いている。


「おじさんが世界三大剣豪? 悪鬼っていうか、お酒を飲んでそのままテーブルで寝て、数日風邪をこじらせて、よくおばさんに怒られてたわよ。わたしが行くと、『ハイミちゃん、看病してくれよ。母さんが怖いんだ』なんて言ってね」


 場に笑いが起こった。悪鬼の人間らしい一面が意外だったのかな。しかし、村長はすぐに笑いを引っ込めて真剣そうな顔をして言った。


「それにしても、ルイビンベールのお姫様も一緒とは変わった組み合わせですな。一応我が国は非アリス教国なので、アリス教国の、それも姫君が来たとなると慎重にならざるを得ません。国王にアリウス教皇からの書状を届けたいとの事だが、要件は何ですかな?」


 俺達は顔を見合わせた。ここで全て話していいんだろうか。キサキがお姫様らしく言う。


「そうですか、仕方ありませんね。この書状を一刻も早く国王に届けないといけないんですけど」


 いつの間にか殺気が戻っていた男達の前で、村長が言った。


「それなら村の者に馬で城に使いを出します。申し訳ないが、帰って来るまではワシの屋敷に滞在してくれませんかな? 留め置いて申し訳ないが、これも国王陛下からの指示ですのでな」


「分かりましたわ。使者はどれぐらいで戻って来れますか?」


「早ければ、今日の深夜。遅くても明日の午前中には戻って来れるでしょう」


 本当に急用なのだが仕方ない。使者の人に任せるとしよう。皆もそれで納得した様だ。


「分かりました。それではお願いします」


 俺が言うと、ようやく村人から殺気が消えた様だった。


「それでは屋敷に案内します。申し訳ないが屋敷に着くまでは村人に監視させてもらいます。連行みたいになりますが、国の決まり事なので許してくだされ」


 村長が頭を下げて言う。


「構いません。一応わたくしはアリス教国の王女ですからね。そちらのご都合もよく分かりますわ」


 キサキの王女言葉が面白くてハルオと一緒に笑いそうになる。ハイミは目をキラキラさせて、村長と話すキサキを見ている。普段とは違ってテキパキと会話をこなすキサキを尊敬の眼差しで見ている。キサキの学級委員長での経験が生きたかな?



 村長を先頭に武装した村人に周りを固められて俺達は歩く。俺達に危険は無いと判断したのか、村人達には殺気は無くそれぞれ会話している。ハイミがキサキにさっきの事を聞いていた。


「キサキ、さっきの村長さんとの会話はカッコ良かったよ! さすがはお姫様だね。お城では難しい礼儀作法みたいな家庭教師がいたの?」


 キサキが焦っている。本人はただお姫様っぽく喋っていただけだろう。勘だろう。現実の授業で礼儀作法なんて無い。お嬢様学校はあるかもしれないが。


 俺とハルオはキサキが何て返事をするのかワクワクしながら見ている。


「ま、まぁね、あれぐらい余裕よ。礼儀作法の先生は厳しかったんだから。色んな事で怒られたわ」


 乗り切ったかに思われたが、ハイミが聞く。


「ヘェ〜、例えば?」


 うっ、と少し後退りをして目がピクッと動いた。言い訳を用意しているんだろうか。


「うーん、色々よ。もう、思い出せないぐらい」


 言い訳は用意していない様だった。


「そうなんだ。わたしは礼儀作法の授業なんて受けた事無いから機会があったら教えてほしいな」


 ハイミの言葉に顔が引きつるキサキ。


「あたしなんてまだまだだよ。今回の旅で中途半端だし。旅が終わってあたしがもっと詳しくなったら教えてあげるわ」


 そう、と頷くハイミ。お姫様って肩書きも大変だな。これからも世界の要人とルイビンベール王女として会話する事があるかもしれない。俺は騎士団長の息子だ。それも世界三大剣豪らしい。大丈夫かな。まだ戦った事も無いし、無様な姿を見せたらシュバードに迷惑がかかりそうだ。



 この日から俺は剣の特訓を、キサキはこの世界での礼儀作法を勉強し始めた。


お読みいただきありがとうございます。

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