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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第三章 真実と使命
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6 ボーイズトーク

お楽しみください。

 ハイミと一緒に食堂に行くと、キサキとハルオは先にテーブルに座っていた。


「ユウマおそ〜い! あたし、お腹ペコペコなんだから」


 テーブルに両肘をついて手に顎を乗せ、こっちを見て言うキサキ。


「ご、ごめん、先に食べててよかったのに」


「何言ってんだよ。料理長がいなければ食べられないじゃないか」


 ハルオが言いながらハイミを見る。


「え、料理長?」


 ハイミを見る。


「えへへ、もうちょっと待っててね。最後の仕上げをしてくるから」


 楽しそうにキッチンへ行った。


「もしかして、今日の晩ご飯ってハイミが作ったの?」


 ハルオに尋ねると腕を組んで答える。


「ああ。ルイビンベール料理を作っているらしいぞ。この大聖堂のキッチンにある食材を使っていいって言われたらしい」


 へえー、とハイミを見る俺。キッチンには大聖堂の料理人も料理をしているが、邪魔にならないようにテキパキと作っている。


「ハイミって凄いね。ある物だけでルイビンベール料理を作るなんて」


 隣でキサキが感心している。


「あたしも料理を勉強しようかな。『キサキの女子力アップ作戦』の為に」


 ボソッと言ったが、俺とハルオは聞き逃さなかった。


「え、何それ?」


 俺が尋ねると、かなり慌てたようにキサキが言う。


「え、聞こえた? いや、あたしもさ、ハイミを見てもうちょっと女の子らしくなろうと思ってさ。ははは」


 苦笑いで言う。


「ふーん。でも、キサキって向こうの世界では色んな気配りが出来る女の子だったよね。学級委員長として皆に慕われてたよ」


 隣でニヤニヤしているハルオが言う。


「うーん、そういう事じゃないんだよなキサキ。分からないかな〜」


「ちょ、ちょっとハルオ!」


 顔を赤くして怒っているキサキ。どういう事だろうと思っていると、ハイミが沢山の料理を持って来た。


「お待たせ〜。まだまだ沢山あるよ。待っててね。キサキ、運ぶの手伝ってくれない?」


 分かった、とキッチンへ向かうキサキ。うーん、女の子の拘りかな? よく分からない。ハルオはいつまでもニヤニヤしてるし。



「おっ、いい匂いがするな。私も一緒にいいのか?」


 木下さん、じゃなくてアリウス教皇だ。


「手紙読んでくれたんですね。私室に行ったらいなかったから、手紙を置いておいたんですよ。ルイビンベール料理です。一緒に食べましょう。お世話になりますし」


 ハイミが呼んだらしい。気が利くな。凄い女の子だ。


 キサキがメモを取っている。料理のレシピかと思いきや、『女子力アップ作戦』の為にハイミの行動で参考になる所をメモっているらしい。


 いただきます、と五人で食べ始めた。ルイビンベールで食べた物との違いが分からないぐらい美味い。すぐに平らげてしまった。



 ハイミとキサキは二人で片付けをしている。今は俺、ハルオ、木下さんの三人だ。


 ボーイズトークの始まりだ。まずは木下さんが言う。


「ユウマ君、君はハイミとキサキ君だったらどっちが好みだ?」


 飲んでいたお茶を吹き出して咽せ返ってしまう。ハルオが待ってましたと言わんばかりに食い付いた。


「おっ、それは俺も聞きたいですね」


「ゴホッ、ゴホッ、い、いきなり何ですか?」


 ニヤニヤしている二人。


「うーん、決められませんよ、そんなの。二人共大切な仲間ですから」


 それを聞いて、はぁ、と溜息を付く二人。


「そりゃ、ハイミは可愛くて、料理も出来て、スタイルも抜群だ。でも、キサキ君だって明るくて、何に対しても一生懸命で、優しい所もある。可愛いしスタイルもいい。贅沢な悩みだな!」


 はっはっは、と笑いながら言う。恥ずかしくて下を向いているとハルオが言った。


「キサキはお前のクラスメイトだったよな? 学校ではモテるのか?」


「キサキは学校とここでは別人だよ。学校では眼鏡をしていて真面目っぽいし。

こっちでは、初めて会った時はあまりのキャラの違いにビックリしたんだ」


 ハルオは、その様子が想像出来ないのか、腕を組んで考え込んでいる。


「そうなのか。何か想像出来ないな。で、どっちがいいんだ?」


 しつこく聞いてくる。


「だから、二人共大切な仲間だから決められないって」


 納得してなさそうなハルオだ。そこで、木下さんが言った。


「ハルオ君はどっちがいい?」


 急に話を振られても慌てる様子がないハルオ。


「うーん、そうですね。俺は現実では二十二歳ですし、もっと大人っぽい方が好みなんですよね」


 大人の回答に感心するが、これも逃げているのか?


「えー、それなら例えばどういう娘がいいのさ」


「俺は、ルイビンベール王妃だ! やっぱり、あの大人の色気がたまらん! 年月を重ねて成長した巨乳と、子供を産んで次のレベルに達したあのお尻! ハイミやキサキにはあと二十年は出せないでしょう」


 意外な答えに驚く俺と木下さん。


「ハルオ君、ここでルイビンベール王妃を出すとは中々女性というのを分かってるじゃないか。ルイビンベール王妃は完全に私の好みで作成したキャラだったんだ。私もあの色気がいいね〜」


 意気投合する二人。


「所で木下さん、ルイビンベール王妃は何歳ですか?」


「三十七歳だ!どうだ、女盛りだろう?」


「たまりませんね! また会いたくなりましたよ! 実は夜の食事会で飲み比べをやったんですが、それはもう色っぽいお酒の飲み方に見てるだけで、色んな意味で酔いそうでした。一つ言わせて貰えば、未亡人って設定があればもっと良かったです。」


 馬鹿な成人男性の会話だが、それを聞いて思い出した。


「そういえば、食事会の後にお城のバルコニーで休んでたら王妃が来てさ、酔っていたみたいでかなり絡まれたよ。体を凄くくっ付けてくるし困ったよ」


「「何ー!」」


 ハルオと木下さんが同時に言う。怒りの眼差しで。


「ユウマ、お前は王妃にまで手を出していたのか。ハイミとキサキという美少女二人がいるにも関わらず! たまには代わってくれてもいいじゃないか」


「ユウマ君、それは知らなかった。若いハイミはともかく、君は熟女もイケる口だったんだな」


 殺気が漲る二人。何か怖い。さらに、二人同時に同じ様な事を言った。


「で、どうだった? ユウマ、大人の色気は?」


「ハイミやキサキ君には無い色気が堪らなかっただろう?」


 二人に促されて、つい本音が出た。


「はい、凄い色気でしたね。途中で使用人の人が迎えに来なかったら押し倒されても構いませんでした。ははは」


 よく言ったと頷く二人。俺は何を言ってるんだろうと自分で思っていると、後ろから声がした。


「ねぇ、ユウマはルイビンベール王妃みたいな大人の女性が好みなの?」


 えっ、と思って振り向くと下を向いて今にも泣き出しそうな顔をしたハイミが立っていた。


 ヤバい、聞かれた、と思ってハルオと木下さんを見ると、聞かれちゃったな〜、と他人事な顔をしている。パニックだが、とにかく弁明をしよう。


「ち、違うんだよハイミ。俺が今言ったのは……」


 ここで初めて気づいた。ハイミの右斜め後ろに鬼の形相のキサキが立っている事に。ハルオ達も気付いたみたいで、小声で、ヤバいヤバい、と言い合っている。


 すると、キサキが右手を顔の横に上げた。このポーズは指パッチンだ。これをやると俺、キサキ、ハルオ、木下さんの現実から来た四人だけが入れる真っ白な世界に変わる。指パッチンをした。周りの風景が無くなり真っ白な世界に移行した。


「ちょっとあんた達、そこに座りなさい!」


 かなり怒っていらっしゃる。座ると言っても椅子なんてないから正座だ。


 長い説教が始まった。声が大きく、話しが長い為、内容が入って来ないが、要するに自分だってあと数年すればお母様みたいなナイスバディになるんだから! って言ってる気がする。こっちの世界ではルイビンベール王妃はキサキの母親だからあり得るかも、そう思ったとたん、ハルオがトドメを刺した。


「でも、お前は向こうの世界ではAカップなんだろ? 無理じゃないか?」


「び、Bカップよ! それにまだまだ成長期だからこれからなんだから! ……そうじゃなくて!」


 ハルオが余計な事を言うから説教が長引いた。


「Bカップ……そうかな〜」


 つい、言ってしまった。顔を赤くして震えている。


「う、うるさーい! あたしだってこれからなんだから見てなさいよね!」


 何の為にわざわざ真っ白な世界で行った説教だったのか分からなくなっていた。


お読みいただきありがとうございます。

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