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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第三章 真実と使命
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行間4 それぞれの時間

お楽しみください。

 兵士の人に教えてもらった川辺に来た。


 部屋でゆっくり寝て過ごそうかとも思ったけど、ここはファンデス5の世界で、さっき木下さんからエクスカリバーをもらったから、技を試したくなった。


 今の俺のレベルは三十ぐらいだといっていた。それなら割と沢山の技を使えるはずだ。


 剣を両手で持ち、右腰の辺りに構える。両足を肩幅より少し広めに開いて左足を一歩分前に出す。


 そして剣を思いっきり左上に向かって振り抜く。


「強振剣!」


 威勢良く技名を叫ぶ。その名の通り、剣を強く振って衝撃波を出す技だ。


 技は成功し、衝撃波が川辺から川に向かって飛んで行く。


「やったー!」


 いい感じだ。エクスカリバーはいい剣のはずなのに重さも全く感じない。俺との相性も抜群なんだろう。


 次の技だ。片手技だが、この剣の重みなら出来そうだ。


 両足を大きく開いて左足を大きく前に出す。右手で剣を持って腰の辺りに構える。右足を蹴って前に出し、その反動で剣も前に突き出す。


「突進剣!」


 成功し、衝撃波が川の上を飛んでいく。対岸の地面に当たって衝撃波は消えた。

 基本技はやはり簡単に成功する。体も勝手に動く感じだ。


 技には使用回数が増えると効果が上がる物がある。『強振剣』なら、素早く剣を二回振ることで、『双・強振剣』になるし、『突進剣』は、素早く何回も突く事で、『突進剣・連撃』になる。これを熟練技という。基本技に対して熟練技だ。


 試したが、熟練技はまだ出来ない様だ。使用回数が少な過ぎるからね。

 今日は晩ご飯まで何回も『強振剣』と『突進剣』を繰り返して熟練技を出せる様にしよう!


 数時間後、二つの熟練技をマスターした。全身汗びっしょりだ。この世界にも筋肉痛があるなら明日はヤバイだろう。川辺にへたり込んだ。


 しかし、次の瞬間にこの疲れの全てを癒してくれるような可愛いらしい声が聞こえた。


「あ、こんな所にいた! ユウマ、晩ご飯だよ!」


 ハイミだ。わざわざ呼びに来てくれたんだ。左手をお尻の辺りにもっていき、右手をいっぱいに伸ばし手を振っている。……服装はワンピースにエプロンだ。どんな治癒術よりも良く効きそうだ。抜群の目の保養により体力は回復した。


「うん、今行くよ!」


 ハイミの方に走って行くと、両手を後ろに回して満面の笑みで言う。


「お疲れ様!」


 木下さんの差し金とは言え、俺はこの笑顔の為に頑張るんだ、と決意する。



-------------------------------------


 部屋の鏡の前に立った。全身が写る大きな鏡だ。


 よし、と気合いを入れて作戦に取り掛かる。


 ①まずは両手を後ろに回す。


 ②左手で右手首を掴む。


 ③それを腰の辺りに持って来る。


 ④足は右足を前に交差する。


 ここまでは簡単だ。次だ。


 ⑤少し首を右側に倒す。首を傾げる様に。


 ⑥そして可愛い笑顔を作る。


 で、甘い声で言う。


「ね、ユウマ、一緒に行こう?」


 ……ぐわっ、気持ち悪い。自分で自分が気持ち悪い。恥ずかしくてしゃがんで両手で顔を隠す。


 現在、初めての『キサキの女子力アップ作戦』を実行中である。


 モデルはハイミ。究極のマニュアルが側にいる。


 人間のあたしが、ゲームのキャラクターを参考にするというのはどうかと思うが、隣にいられたんじゃしょうがない。


 あたしは現実では、どちらかと言うか真面目キャラだ。一人称も『わたし』である。別にそういうキャラを演じている訳じゃない。ずっとこうだった。


 こっちの世界に来てからは向こうとは違うキャラを演じている。せっかくだから楽しまないとね。


 ユウマに会った時にはビックリした。いつかはファンデス5の主人公であるクリフがあたしを冒険に連れ出してくれると思っていたが、来たのはクリフではなく、クリフの格好をした、クラスメイトの人見悠馬だった。


 体が弱く、たまに学校に来ても、机に座って勉強をしているか、別室で課外授業を受けている。


 小学一年生から同じクラスという事もあり何か放っておけなくて、ユウマの家に学校の重要な連絡や宿題は学級委員長のあたしが届けた。玄関であたしを迎えるユウマは顔色が良くない事もよくあった。


 この世界で会ったユウマは違った。今までには見たこと無いぐらいによく笑う。学校にも友人はいたみたいだが、休み時間や昼休みは遅れてる分の勉強をしている事が多かった。


 隣にはハイミとハルオがいた。ハイミとは本当の幼馴染みたいに仲がいいし、ハルオの事は本当の兄の様に慕っている。ユウマがハイミをエッチな目で見て、ハイミが怒り、ハルオがからかう、というトリオ漫才がいつもきれいに決まる。


 ハイミにベタベタされて照れているユウマを見て、やっぱり男の子なんだな、と思う。今までは、学級委員長として、小学一年生からの腐れ縁みたいな感じで届け物をしていた。その時は見たこと無かった面を見た。ハイミは絶世の美少女だからあたしでもベタベタされたら照れてしまいそうだ。


 さっきの『作戦1』は自分で気持ち悪くて失敗だった。とても人には見せられない。が、負けてられない。秘密兵器を出そう。何かと言うと、ジャジャーン、『ハイミのパクリのワンピース』だ! 秘密裏に購入していたのだ!


 着てみた。……胸が空きすぎじゃん! 恥ずかしい。……あたしに胸の谷間がある! 無縁だと思っていた! 意外に足も綺麗? ハイミと張り合えるかな。

 よし、またさっきの①〜⑥を行う。


 二回目だからか、さっきよりは自分が気持ち悪くない。露出が多いからか、色っぽくなった様な気がする!


 すると、何か物音がした。キッと部屋の入り口を見る。扉が少し空いていて、向こうに誰かいる? 笑っている?


「ふふふ、あっ……」


 誰かがさっ、と隠れた。上着を着て、ダッシュで扉の向こう側を見る。


「……見つかっちゃった。ところで、キサキ何やってたの?」


 ハイミだ。まだクスクスと笑っている。一気に顔が赤くなる。手を引いてあたしの部屋に入れた。


「ハイミ見てたの? どの辺りから?」


「うーん、ワンピースに着替えて鏡の所に立つ辺りから」


 そうか。「ね、ユウマ、一緒に行こう?」は見られてないのか。ホッとした。


「晩ご飯だから呼びに来たら、扉が空いていて、いないのかと思って覗いたら、……つい、笑っちゃった」


 まだクスクスと笑っている。穴があったら入りたいと言うのがよく分かった。


「ところで、キサキ、可愛いワンピース持ってるね。わたしも似たのを持ってるよ、ほら」


 エプロン姿だったが、エプロンを脱ぐと、その下にはあたしのにそっくりなワンピースを着ていた。


 まさか、ハイミを参考に、女子力アップ作戦をしているから、ハイミのをパクったとは言えない。


「ほ、本当だね。ハイミが着ると可愛いから羨ましい〜」


 え〜、と照れている。両手を後ろに回して腰の辺りに置き、下を向いてモジモジしている。あたし的には百点だ。スマホがあれば動画を撮影したい。


「キサキも可愛いよ〜。こう見ると、キサキって胸大きいね。……えい!」


 目の前で起こった事を理解するのに数秒掛かった。少し視線を落とすとハイミから白くて細い腕が伸びている。さらに視線を落とすとハイミの手がある。その手が何かを掴んでいる。真下を見ると、その何かが分かった。あたしから豊満に膨らんだ胸だ。こっちの世界でのあたしの胸は凄いな。現実では膨らみはほとんど無いからね。それを掴んで……揉んだ。


「ふふっ、柔らか〜い」


 あたしは両手で胸を隠してしゃがみ込む。胸を揉まれるなんて初めての経験だ。現実では無いからね。あ〜、ビックリした。


 ハイミを見ると、してやったり、みたいな感じで両手を後ろに回して微笑んでいる。『女子力アップ作戦』の教科書ハイミ。こんな事もしてくるのか。勉強になる。


 やり返してやった。素早く立ち上がり、両手を突き出す。あまり抵抗もなくあたしの両手が柔らかい物を捉えた。触られるのも初めてだが、触るのも初めてだ。こんな胸の大きい娘はそうはいない。揉んだ。これは凄い。女だけど病み付きになりそうだ。しばらくハイミの胸を掴んだ状態だ。二十秒ぐらい経過した。


「ハイミ、何で嫌がらないの?」


 ま、まさか、ハイミって、変な性癖が?


「ん? これでおあいこだね」


 笑顔で言われた。はぁ、と手を下ろす。もういいの? と首を傾げている。


 ハイミには敵わないな。やることなすこと可愛い。無意識でやっているから余計可愛い。『女子力アップ作戦』は前途多難か。


「ところでキサキ、柔らかさならわたしの勝ちだね」


 急に何を言い出すの? そしてあたしの負け? 納得いかない!


「そんな事ないわよ! あたしの胸だって柔らかいわよ。さらに張りならあたしの方がいいしね」


 これは本当にそう思う。ルイビンベールの王妃であり、あたしのこっちでの母親は、かなりの巨乳だが、年のせいか張りが無かった様に思う。


「えー、わたしだって張りにも自信があるよ。そうだ、今度誰かに審査してもらわない? 実際に触ってもらって」


「いいわよ、受けてたつわ。誰に審査してもらうの?」


 変な勝負だけどいいだろう。あたしだって負けないんだから。


「う〜ん、ユウマとか」


「えー!」


 思いもよらない審査員につい、大声を上げてしまった。顔が赤くなっているのが分かる。本気かな?


「冗談よ。さ、ご飯を食べに行こう。わたしはユウマとハルオを呼んでくるから、先に食堂に行ってて」


 可愛くてを振って、笑顔で部屋を出て行く。その様子をポカンと見送るあたし。


 色んな意味で師匠を超えるのは大変そうだ。


 今度から心の中では師匠と呼ぼう。


お読みいただきありがとうございます。

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