4 プレゼント
お楽しみください。
エクスカリバーと経験値というRPGとしては十分なプレゼントを貰ったが、まだあると木下さんは言った。さらに、すでに貰っている様だ。三人で顔を見合わせ首を傾げ、首を横に振る。
「俺達はすでに頂いてるんですか? すみません、気付きませんでした」
「そうか、人見君。君のが一番いいと思うが。まぁいいか。宮尾君から教えようか」
「えっ、俺ですか? 俺にも何かあるんですか? ユウマはその鎧かと思いました」
確かにそう思った。
「あるとも。君を観察していて分かったんだ。君へのプレゼントは……身長だ! 180cmだ!」
「「えー!」」
俺とキサキが驚く。ハルオは口をあんぐり開けて固まっている。
「私は気付いていたよ。君は大学で一人の女の子をいつも目で追いかけていたな」
キサキがニヤニヤし始めた。嫌な予感がする。
「へぇ〜、ハルオにもそんな人がいたんだ〜。ねぇ、木下さん、それってどんな人ですかぁ」
木下さんが乗ってきた。
「知りたいか、キサキちゃん?」
何故かちゃん付け。いきなり馴れ馴れしくなる。そんな事を気にせず、ひっひっひ、と笑いながら横目でハルオを見る。
「知りたい、知りたい」
「よーし、教えよう。すらっとしていて背が高い。165cmはあるな。長い黒髪が特徴だ。顔はかなりの美人だぞ。芸能人みたいだ」
「ふ〜ん、見てみたいな〜。……ん? ところで、ハルオは現実で何センチなの?」
俯いて小さな声で答えた。
「……160cm」
「あっちゃ〜、叶わぬ恋かな?」
キサキが腕を組み、うんうん、と頷きながら言う。うるさいな、と怒るハルオ。そこで俺は気付いた。
「あれ、でもこの世界で背が高くても意味が無いんじゃない?」
皆が確かに、と頷く。木下さんも今気付いた様だ。
「まぁ、いいじゃないか。そう言う人見君は気付いているのかい?」
俺は全く心当たりが無い。いや、一つだけ。
「……俺は、体が丈夫って事ですか?」
現実では薬を飲まない日なんてあり得ない。肉だってこの世界での数日で、今までの一生分は食べた気がする。数時間歩く事や、乗り物にも乗る事も考えられない。
だが木下さんは、いや、と首を横に振った。
「君は主人公という大役を任せたんでな、大サービスだ! 羨ましいな、少年!」
うーん、と考えていると、ハルオが言った。
「もしかして、女ですか? ユウマは目を話すと、すぐ女の子に囲まれてますね」
「正解だ。人見君、ハイミや他の女の子にベタベタされる気分はどうだい?」
思い掛けない言葉にビックリした。確かにハイミは俺にすぐくっついて来る。でも、それは幼馴染としての親密さだと思っていた。
「えー、そんな事なんですか!?」
俺の言葉に何故かハルオが怒る。
「こら、お前は何贅沢な事を言ってるんだ! そういう事だったのか。羨ましいぜ。というか、お前はハイミにベタベタされてデレデレしてたじゃないか」
何怒ってるんだ、と思いながら反論する。
「そ、そりゃあ、ハイミみたいに可愛い娘にあんなに事をされたら照れちゃうよ! 妙に胸を当ててくるし」
ぐわー、羨ましい、と悶絶しているハルオ。そこで木下さんが冷静に言った。
「でも、良かっただろう?」
「……はい」
木下さんとハルオがゲラゲラ笑う。しまった、反射的に。
すると、隣で唯一笑ってないキサキに気付いた。
「……ユウマ、何考えてるの?」
冷たく言われて、言い訳を考えていた俺に木下さんがフォローをくれた。
「まぁまぁ、いいじゃないか。勿論里宮君にもプレゼントがあるんだ。気付いてくれたか? というか、今の話しの流れで気付いたんじゃないか?」
うっ、と後退りして言った。
「あ、あたしの事はいいです」
遠慮気味に言う。せっかくだから何を貰ったか聞きたい。
「いいじゃん、教えてよ」
「ユウマは黙ってて!」
怒られた。すると、ハルオが何かを木下さんに耳打ちした。
「ちょっとそこの二人、何をコソコソしてるの!?」
二人でクスクスと笑っている。
「ユウマ、教えてやろうか?」
「え、ハルオ知ってるの?」
「よしユウマ、キサキの口を抑えとけ!」
分かった、と素早くキサキの口を抑えた。
「ん〜ん! んんんんんん!」
ちょっと! 何すんのよ、と言っているんだろう。激しく抵抗しているが、所詮は治癒術師の女の子の力だ。俺でも十分に抑えられる。そしてハルオの言葉を待つ。すると口を開いた。
「お前は胸を大きくしてもらったんだよな?」
キサキの抵抗が止まった。俺の力も弱まった。キサキを後ろから抑えていたが、そんな事を聞くと、つい目がいってしまう。俺からの視線を感じたのか、キサキが素早く俺から離れ、両手で自分を抱く様に体に回し、赤い顔でこっちを見ている。
そこでふと、思い出した。この世界で初めてキサキに会った時の違和感だ。
「そう言えば、この世界で初めてキサキに会った時に何か違和感を感じたんだ。眼鏡や髪型かなと思ったけど違ったんだよね。でも、今分かったよ! 胸が大きいね、この世界では」
木下さんが自慢げに言う。
「ああ、Dカップにしておいた。ハイミと同じだ」
ワナワナし始めたキサキに気付かずにハルオが続ける。
「ハイミはDカップなのか? もっとあるかと思ったぜ」
それはね、と木下さんが答える。
「ハイミはよく食べるだろう? 食べた分は胸に優先的に付くんだ。もう、かなり育ったのかな? だからかなり体型は太りにくいと思うよ」
「という事は、ハイミはユウマを喜ばせる為に、よく食べているのかもしれないな」
とんでもない事を言うハルオ。
「そ、そんな訳ないよ。ハイミは食べるのが好きなだけだよ」
「でも、ハイミはお前といる時は、よく胸や肩が開いたワンピースを着てるよな。あんな服でくっつかれたら堪らないんじゃないか?」
木下さんも畳み掛けてきた。
「ん、人見君は積極的な女の子は嫌いか? ハイミは君に一生懸命尽くしてるんじゃないか?」
「そ、そうかな。そりゃ、嫌な気はしないよ。あんなに可愛い娘がくっついてくるんだから」
周りが見えなくなってきた俺。ハルオが面白がって言う言葉に、横で震えてるキサキに気付かずに答えた。
「で、ハイミの胸はどうだ?」
「うん、すっごい柔らかいんだよ。服の上からでも分かるぐらい」
そこで、キサキの何かが切れる音が聞こえた……様な気がした。
「ちょっとあんた達、そこに座れ!」
ビクッとビビる俺、ハルオ、木下さん。黙って言う事を聞く。
キサキの説教が始まった。だいたいあんた達、とかなり長い説教だ。でも、キサキの説教の中身は、ハイミの胸の話をするな、ハイミの胸を見るな。たまに、あたしの胸だって負けてない、と言う様な事も言ってる気がする。
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