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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第三章 真実と使命
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3 真実

お楽しみください。

 イギリスが魔族によって滅亡し、魔族の国が出来る。普通なら考えられない事だろう。さらに続ける木下さん。


「そこからは悲惨だったよ。中には魔族と手を組む国や集団も現れた。核も持った。最悪な殺し合いの始まりだ」


 強い者に付く、自分達の欲の為に悪と手を組む。人の性だろうか。信じられない。


「でも、それはあくまでも木下さんの夢ですよね? 毎日の様に同じ夢を見るというのは確かに変わってますが、それが何故今のこの状況になるんですか?」


 何よりもそれが一番の疑問だ。正夢も無いとは言えないが、こんな正夢はあり得ないように思う。夢はあくまでも夢である。


「私はある事がキッカケでこれは現実に起こる事だと確信する様になったんだ。それは夢で見る新聞やニュースだ。夢の中で私は色々な所にいるんだ。日本人だったり、アメリカ人だったり、イギリスの軍人だったり」


 異様にリアルな夢だ。信じられない。


「夢の中での私は夢の世界で普通に生活している。朝起きて、朝食を食べて、学校や会社に行く。さらに夢で見ていたニュースや新聞はよく覚えている。そのニュースや新聞で見た記事が現実で起きるんだ」


「それは、どういう意味ですか?」


 夢での出来事が現実で起きる。まさに正夢だ。


「東日本大震災、アメリカ同時多発テロも夢で知っていた。さらにはアメリカの大統領選の結果も知っているし、まだ無名のスポーツ選手も夢の中ではオリンピック金メダルの英雄だ」


「それって予知夢みたいなものですか? 夢で未来が見えるとか」


 キサキが聞く。


「予知夢か。まぁ、確かにそれだけならただの予知夢で済ませただろうが、初めて夢の事象が現実に影響を及ぼして来たんだ」


「夢が現実に影響を及ぼしす? 何があったんですか?」


 俺が聞くと、木下さんは驚くべき事を言った。


「高校生の頃、私の自宅にある私物のパソコンに、夢で毎日見ている魔族を束ねる魔王から動画付きのメールが来ていたよ。宣戦布告状みたいだったよ。見せてあげよう」


 そう言うと、この真っ白の空間に大きいスクリーンが現れた。映像が映し出される。この時、初めて魔族というのを見た。魔族と言うからよくあるファンタジー物に出てくるゴブリンやオークみたいな物を想像したが、少し違った。意外と端正な顔立ちをした男だ。筋肉隆々の体格や頭には髪の毛の中に小さい角が見える。背中には羽。


『初めまして、木下昇君。私は魔族を束ねる魔王である。君も知っているように、今私達はマルスカに進行する準備をしている。マルスカの次は勿論、地球だ。君は何故か未来が見えるみたいだね。これは君への宣戦布告状だ。まだ子供みたいだからすぐには何も出来ないかもしれないな。だが、私達も、まだまだ準備が必要なんだ。準備が出来次第、マルスカに進行する。その時は私達を迎え撃ってくれるのかな? 楽しみにしているよ。唯一私達の企みに気付いた地球の少年よ』


 魔王とは思えない程、静かに、冷静な、堅実に話した。賢く、人の上に立つ器量が感じられる。映像が消える。


「これが、魔王。すごい迫力だったね」


 俺が言うと、ハルオも続いた。


「それで木下さんはSENDOHに入社してゲームで世界を再現して迎え撃ったのか?」


「そうなんだ。いいアイデアだろ? ファンデスはその為にずっと開発してたんだ。人気が出て良かったよ。そのおかげで君達みたいな優秀なゲーマーを見つけれたんだ」



「あたし達みたいなゲーマーを見つける? どういう意味ですか?」


 キサキが聞く。


「今の家庭用ゲーム機はネットに繋いでオンラインでプレイするものが当たり前だろ? 私はファンデス1からずっとネットを監視してたんだ。オンラインに繋いだ状態のプレイヤーのゲーム画面は全て私の自宅パソコンでモニターしていた」


 そんな事が出来るのかと俺達三人は驚いた。


「そんな事が出来るんですか? それで日本中のファンデスのプレイを監視して、何故あたし達三人が選ばれたんですか?」


 俺も聞きたい事だ。ファンデスは累計五百万枚を売り上げる人気ゲームだ。日本中に、いや海外にもプレイヤーはいるだろう。


「君達三人を選んだ理由か。直感だ。プレイ画面を見て比較的早い段階から君達三人に目を付けていた。住まいも東京だったしな。実は、君達三人を見たりもしていたんだ。通学の時や、大学での様子、里宮君が人見君の家にニコニコしながら行く様子」


「え、キサキが俺の家にニコニコ?」


 首を傾げてキサキを見ると、慌てたように言う。


「き、木下さん、早く続きをお願いします!」


「なんか、ストーカーみたいだな」


 ハルオが言う。


「まぁ、すまないと思ってるよ。どうしても実際の目で見ておきたくてね。でも、実際に見てみて君達なら大丈夫だと確信したよ。ファンデスの操作も上手いしね。世界観にもすぐに順応できると思った」


「そうですか。何故今魔族が攻めて来ると分かったんですか?」


 俺が聞く。


「これも直感なんだ。でも、ファンデス5からはいつ来てもいい様に、ヘッドホン&ゴーグル・3Dシステムを開発したんだ」


 ヘッドホン&ゴーグル・3Dシステム。それはファンデス5の限定五千セットに付いていたヘッドホンとゴーグルでよりリアルな映像と音声を楽しめるという機能だ。最初は完全別売りの予定を変更し、限定五千セットに付属した。一般発売は一ヶ月後の予定だ。


「ヘッドホン&ゴーグル・3Dシステムの本当の目的はヘッドホンに信号を送り、意識だけをこっちの世界に連れて来る道具だったんだ。君達三人は抽選ではなく、優先に当選したんだ」


「じゃあ、俺がゲーム中に寝てしまったのも?」


 俺の言葉に、キサキとハルオが自分達もそうだ、と言う。


「その通り。急に連れて来てすまないな。現実の君達は病院で寝ているはずだよ。体に異常は無いから安心してくれ。私に付き合わせて本当にすまない」


「本当にあたし達の体は無事なんですね? ……どうすれば向こうの世界に帰れるんですか?」


 俺も気になっていた事だ。ハルオも木下さんの言葉を待っている。


「魔王を倒せば帰れる」


 木下さんが言った。帰れるということが分かっただけでも良かった。でも、魔王を倒すなんてハードルが高すぎるような気がする。


「そんな。魔王を倒す見込みなんてあるんですか? ゲームならまだしもこの世界じゃあ、本当に剣を持って、魔術を使って戦わないといけないんですよね? 死んじゃったらどうするんですか?」


 キサキが少し起こったように尋ねる。すると木下さんは胸を張って言った。


「そこは抜かりは無い。ここばゲームの世界だぞ。魔術で生き返らせればいい。全滅したら私がリロードしてやる」


 はっはっは、と笑いながら言う。呆気にとられる俺達。


「……そうですか。それなら大丈夫かな」


 キサキが安心した様に言う。大丈夫なんだろうか。



 魔王からの宣戦布告に木下さんが応えて、俺達が迎え撃つ。何か妙な状況だが、やるしか無いか。


「まぁ、お詫びといってはアレだが、君達にプレゼントをしよう」


 木下さんが言った。


「何ですか、プレゼントって?」


 俺が聞くと、木下さんが右手を挙げた。


 すると、俺達三人の体が金色に輝きだした。


「きゃ、何これ?」


 キサキが言う。俺も何だと思っていると、力が湧いてくるような感じがした。


「君達の経験値を上げておいた。レベルは三十ぐらいになったんじゃないかな。これで普通の魔族となら十分に戦えるだろう」


「なるほど、これはいい」


 ハルオは自分の変化に驚いている様子で、シュッ、シュッ、とシャドーボクシングをしている。


「何か、魔力が上がった気がする」


 キサキは両手を開いて見ている。


「人見君にはさらにこれをやろう。このゲーム最強の剣、エクスカリバーだ」


「えっ、俺に?」


 剣を受け取る。意外と軽い。エクスカリバーと言えば、ファンデスシリーズの最強武器で手に入れるにはかなり苦労する。それをあっさり手に入れた。ゲームなら面白くないと思ってしまうだろう。でも、今はそう言ってられない。


「ありがとうございます! うわー、カッコいいな〜。早く振ってみたいよ」


 俺が剣を鞘から出して刀身を見ていると、木下さんが言った。


「ちなみに他にもプレゼントがあるんだが気付いてくれたかな?」


 俺達は三人で顔を合わせて首を傾げた。


お読みいただきありがとうございます。

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