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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第三章 真実と使命
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1 アリウス到着

第三章突入です。

 アリウスに到着した。船を降りると、乗組員の皆が見送ってくれた。彼等はすぐにルイビンベールに戻るという。魔族の襲来に備える為だ。来る時は丸一日掛かったが、帰りは潮の流れに乗り、半日で着くらしい。俺達四人は手を振って早々と港を出て行く船に別れを告げた。



 アリス教総本山アリウスは島の中心に大聖堂がある。今は島の端にいるが、ここからでも見えるぐらい大きい。その周りには宗教関係者の民家が広がる。大聖堂で働く人と、大聖堂を守る兵士が殆どらしい。まるで、お城とその城下町みたいだ。



 島の西にある港から大聖堂に歩いて行く。勿論服装は俺はルーべリア騎士団の鎧、ハイミはルーべリア騎士団魔術師の服、ハルオは武術家の服、キサキはルイビンベール騎士団治癒術師の服と皆がそれぞれの正装をしている。


 アリス教総本山アリウスのアリウス教皇といえば、世界で一番と言ってもいいぐらいの大物らしい。世界はアリス教国と、非アリス教国に分かれているが、アリス教国からすれば、アリウス教皇は宗教ナンバーワンの敬うべき存在であり、どこの国もお布施をしている。アリウスはそのお布施で成り立っている様なものだ。


 逆に非アリス教国にはその国独自の宗教があって、熱狂的に信じている所が多い。そういった国からすればアリス教は異教徒の為、お互いに仲が悪い。戦争も頻繁だ。


 今回、ルーべリアを襲った魔族は異世界の民族の為に、当然ながら宗教は関係無く世界中を襲う。そんな時に宗教で争うなんて馬鹿らしい為、世界中に警告するが、それにはアリウス教皇を通すのが早いとの事。



 港から馬車を雇って二時間でアリウス大聖堂に着いた。とにかく建物が大きく、まるでお城である。


「うわー、大きいね」


 あまりの迫力に圧倒される俺。教皇の権力が思い知らせる。


「アリウス教皇が世界でナンバーワンの大物っていうのは本当らしいな」


 あまり感情を出さないハルオも驚いている。


「世界でナンバーワンの大物って大丈夫かな? ルイビンベールの国王に謁見するのにも半日待ったのに、そんな大物なら数日待たされるって事もあり得るんじゃない?」


 ハイミが言う。確かにそうだ。いきなり行ってルーべリアが魔族に滅ぼされました、と言っても信じてくれないのかなとも思う。


「その辺はお父様が根回ししてくれてるんじゃない? それに魔族の出現なんて一大事だから話しぐらいはすぐに聞いてくれると思うけど。実際にユウマ達がルイビンベールに来て、ルーべリアが魔族に滅ぼされたって聞いた時、大騒ぎになったのよ。嘘だったらすぐに逮捕されてただろうけど」


 キサキの言う事も一理ある。


「まぁ、待たされたらアリウス観光でもしようよ。ここの名物って何かな?」


 多分、また食べ物の事を考えてるハイミ。


「ここは基本的には宗教施設だから名物とかってないはずだよ。アリス教の教典でも買って帰る?」


 からかう様に言うと、顔を膨らませて言った。


「いいもん、それならスーパーで材料を買って、貰ったレシピを見ながら自分でルイビンベール料理を作るから」


「えっ、レシピを貰ったの? 作ってよ、ハイミ!」


 確かにルイビンベール料理は美味かったから、また食べたいとは思っていた。ハイミの手料理か。楽しみだな。


「うん、任せといて!」


 胸を張って自信満々に言った。



 アリウス大聖堂に入った。聖堂内も驚くほど豪華だ。中世ヨーロッパにいるみたいだ。


 巡礼客が沢山いる。日本に住んでいると宗教についてはあまり分からない。葬式はお寺で、願い事は神社で、子供は大好きクリスマス。アメリカより日本の方が自由なのではないかと思ってしまう。



 聖堂内を見渡すと、受け付けがあった。男性二名だ。すみません、と話しかける。


「はい、何でしょう?」


 言葉遣いは柔らかいが、剣と鎧で武装している。目付きも鋭い。


「アリウス教皇と面会を希望したいんですが」


「教皇と面会を? 約束は取り付けてあるのか?」


 当然な反応かもしれないが、イラっとくる。正気か、このガキ共は、という顔だ。さらに鼻で笑った。いえ、約束は、と口籠っているとキサキが言った。


「私はルイビンベール国王女キサキです。こちらはルーべリアから来た者です。早急に教皇様に報告したい事があります」


「ルイビンベールの王女だと?」


 疑いの目で見ている。すると、片方の男が、あっ、と言い隣りの男に耳打ちする。手にはメモ紙がある。何が書いてあるんだろう。すると、片方の男が急いでどこかに行った。


「少しお待ちください。」


 残った男が無愛想に言った。



 男は十分ほどで戻って来た。


「教皇が今すぐお会いになるそうです。教皇は私室にいらっしゃいます。こちらへどうぞ」


 もう一人の男が少しビックリして俺達を見た。


「はい、分かりました」


 この二人には少しイラっとさせられたので、少しドヤ顔で言ってやった。


 しばらく歩くと教皇私室と書かれた部屋の前に着いた。どんな豪華な部屋かと思ったが、意外に普通の大きさの扉がある。


「では、私はこれで。中には皆さんだけで入るようにとの事ですので。さっきの受け付けに戻ります」


「はい、ありがとうございます」


 適当にお礼を言うと、そそくさと戻って行った。



「キサキ、一応お姫様なんだからノックしなよ」


「えっ、あたし? お姫様は関係無くない? ってか一応って失礼じゃない?」

 世界一の大物に少しビビっている俺達。


「あたしは無理! 一番年上なんだからハルオがノックしなさいよ!」


「じゃあ、年上の俺をもっと敬えよ! 全く。どんなのが出て来るんだろうな。まさか魔王みたいなのが出ないよな? さすがに勝てないぜ」


 確かに嫌だ。ルイビンベール国王にどんな人か聞いてくればよかった。


「じゃあ、わたしがやるよ。トントン」


 ハイミが躊躇無くノックした。扉を叩くと同時に口でもトントン、と言う。さすがに可愛い。


「どうぞ、入って来なさい」


 優しい声が返ってきた。もっと低く怖い感じを想像していたから緊張が一気に解けた。


「失礼します」


 怖くないと分かったらキサキが入って行った。


 私室内は大きくて沢山の本が入った棚と、意外と普通な机が置かれているだけのシンプルな部屋だった。


 椅子に一人の男性が座っていたが、俺達を見てスッと立ち上がる。意外に若いんじゃないだろうか。四十歳にもなってなさそうだ。髭を生やした初老という勝手なイメージだった為、拍子抜けした。そして俺達を見て言った。


「君達、待っていたよ」


 そう言うと、教皇が右手を顔の横に挙げた。そして、パチッと指パッチンをした。すると信じられない事が起こった。周囲の景色が消え去り、真っ白になった。

「きゃ、何これ?」


「うわ、何だ?」


 キサキとハルオが大きな声を上げる。俺もビックリしたが、それよりも隣にいたはずのハイミが消えているのに気付いた。


「あれ、ハイミ! どこ、ハイミ!」


 教皇が落ち着いて言った。


「やっと会えたね、ようこそ。人見君、里宮君、宮尾君」


 えっ、と教皇を見る俺達。その顔はには優しい笑みが浮かんでいた。


お読みいただきありがとうございます。

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