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ファンタジー・オブ・デスティニー  作者: 一条一利
第二章 アリス教国ルイビンベール
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4 思いがけない再会

お楽しみください。

 豪華で立派なお城に着いたが、案内されたのは大きな正門ではなく、裏口だった。そこから客室に案内された。一人一部屋割り当ててくれるらしい。案内してくれた兵士に、何か必要な物はありますか? と聞かれフィッシュカレー! と即答するハイミ。俺とハルオは何も頼まなかった。


 部屋でくつろいでいると、扉がノックされた。はい、と言って開けると兵士が立っていた。


「姫様がお呼びです。こちらへお越し下さい」


「わ、分かりました」


 何の用事だろうと思う。他の皆も呼ばれてるのかな。そういえば、城下町で会った時にこっちをじーっと見ていた。失礼な事を言ったのかもしれない。付いて行くと、小会議室と書かれた部屋へ案内された。


「どうぞ、お入り下さい。私は外で待ってますので、御用の際は何なりとお申し付け下さい」


 どうも、と言い、小会議室の部屋をノックすると、どうぞ、と返事が来た。お姫様らしい清楚な声にちょっとドキッとする。


 そういえば、俺がゲームで体験したのはルイビンベールでティアラ姫に会うまでだ。ここからは未体験の領域である。何が起こるか分からない為、少し楽しみであり、怖くもある。



 小会議室に入ると小さ目のテーブルと六つの椅子があった。その一つにキサキ姫が背中を向けて座っていた。先程とは違い、お姫様らしいドレスを着ている。


「どうぞ、遠慮しないで座って」


 背中を向けたまま言う。はい、と返事して一番遠くの椅子に座る。


「あなたはユウマでしたね」


 名前を覚えてくれている。そうです、と返事する。何故か神妙な面持ちだ。すると姫が言った。


「そう。会えて嬉しい。こんな所で会えるなんて」


 えっ、と返事する。何か俺の事を知っている様な口振りだ。勿論俺は知らない。……クリフの知り合いかな。そうだろう。俺は昨日この世界に来た。昨日以前に会った人は覚えてない。でも、相手はお姫様である。失礼の無い様に返さないといけないと思うと焦って言葉が出ない。あたふたしていると、姫が身体ごと振り返って言った。


「ふふふ、あたしよ、人見悠馬君。まだ分からないなんて」


 姫はかなり胸の空いたドレスを着ていた為、驚いて視線を外してしまった。この世界に来て胸に弱くなってしまったなと思う。一生懸命堪えて顔を上げて姫の顔を見る。


「あれ、姫、確かにどこかでお会いした事がありますね」


 さすがは一国のお姫様だ。品のある顔や佇まいがお姫様オーラを出している。ハイミも可愛いけど、品は無いしな。でも、やはり顔はゲームのティアラ姫では無い。どこかで会った事はあるのだが。すると姫がもう! と少し怒った様に言う。


「もう、あたしよ、人見君! メガネをかければ分かるわよね!」


 どこからともなく眼鏡を取り出しかける。そこに現れたのは少し大人びてはいるが、知っている顔があった。


「さ、里宮さん? 里宮姫咲さんだよね! 何でこんな所にいるの?」


「気付くのが遅いわよ! あたしは町で会った時に気付いたわよ。何でこんな所にいるのかはお互い様よね」



 彼女は里宮姫咲。俺のクラスメイトで、学級委員長だ。そして、何故か里宮とは妙な縁がある。小学一年から中学三年までずっと同じクラスだ。こんな人は他にいない。俺は体が弱く、学校にはあまり通えない。その為か特に女子とは仲良くなりづらい。でも里宮だけは新学期になると、毎年の様に交わしてきた挨拶があった。


『人見君、また同じクラスだね。よろしく!』


『うん、よろしくね。あまり学校には来れないけどね』


 俺の数少ない女子との会話。だけど、里宮はそれだけじゃ無かった。悠馬は学校を休みがちな為、休んだ日の大切な連絡は全て学級委員長の里宮が悠馬の家に届けてくれていた。


『私は学級委員長だし、ずっと同じクラスだからね』


 お礼を言うと、毎回こうやって返してくる。玄関で母親が、美味しいケーキがあるから上がって行ったら? と言うがそこは丁重に断って帰って行く。学校内外で絵に描いた様な学級委員長だ。


「それにしてもビックリだよね。こんな所で会うなんて。何か変な運命感じるよね!」


 眼鏡を外してテーブルに身を乗り出して言う。


「な、何言ってるの? 里宮さん、現実と何か違和感ありまくりだね」


 里宮の現実とは違うテンションに驚く。しかし、お姫様の格好をして眼鏡を外して身を乗り出して満面の笑みでこっちを見てくる里宮を見てドギマギする悠馬。毎年一回の挨拶や家に来た時に見せる笑顔を見ると、いつもはいかにも学級委員長な優等生的な容姿や言葉遣いだが、赤抜ければ相当な美人だろうと思っていた。これはクラスでも俺だけが気付いていた事だろう。今は髪を梳いてスッキリしているし、眼鏡の下にはこんなに大きくてパッチリとした目があったんだ。


「何よ〜、違和感があるって。あたしが眼鏡を外してお姫様の格好をしてたら変?」


「いや、まずはその言葉遣いとか、喋り方とか 。まぁ、服装は基本的に制服しか知らないしね」


 学校では『あたし』なんて言わないし、知らない人が見たら学級委員長だとは思わないだろう。


「髪型と、眼鏡と、服装だけじゃない! 失礼ね!」


 プンプンと怒っている。学級委員長キャラが……。


「あと、あたし達ってこの世界じゃ何歳か知ってる?」


「そういえば。クリフもティアラも十七歳だから、俺達も十七歳?」


「うん、現実より二歳年上なんだよね。少し大人になった感じ? その辺も違和感を感じてるんじゃない?」


 うーん、それだけかな〜と思う。


お読みいただきありがとうございます。

登場人物紹介

里宮 姫咲キサキ 現実では15歳の中学三年生で悠馬のクラスメイト

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