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逆賊王女と魔王  作者: 常陸橫
3/3

下、魔王と国王

 粛清を終えた国王、もとい魔王は、この身体の持ち主の最期の願いの実現のため、彼のかつての仲間の女と、新しく取り立てた正義感の強い官吏と共に国の政を動かし始める。しかし、それは本来、魔王の自らおこした行動ではなかった。

「我はこの呪いをいつまで背負い続けねばならんのだ」

「この国の人々が、平和で幸せな生活を送ることができるようになるまで。そう言われたでしょ?」

「それがいつなのかと訊いているのだ」

 女は微笑むだけで答えない。魔王は舌打ちをすると、部屋を出て行った。






――――それは国民が平和で、幸せな生活を送れるような国にすること。

 老人の言葉に、少年は呆気にとられた。

「ふっ。何を言い出すかと思えば」

 少年は嘲笑し、吐き捨てた。

「魔王の我が、人間どものための政治をすると思うか?」

「ああ、するさ。お前にはそれを実現させねばならない義務が、ある!」

 老人が細い身体で少年に飛びかかる。しかし、少年は老人の胸元に腕を突き刺す。女が絶句する。

「魔力の使えないお前など我には到底及ばぬわ」

 老人が血を吐く。しかし、その顔は、笑っていた。

「魔力を……使えない? ふふっ……使わなかっただけだ……」

 床が光りだす。今まで表情を崩さなかった少年が狼狽した。

「この魔法陣、まさか……」

「あの時と同じだな……魔王よ。不用意に何でも……触るものじゃない……」

 少年は突き立てた腕から老人の中へ吸い込まれていく。女が泣き叫んだ。

「それでは兄上の理性が!」

「……頼んだぞ……国を立て直すか、壊すか……お前次第だ――」






「いやあ、ありがとうございます。国王様たちに畑仕事を手伝っていただくなんて」

 農夫たちがにこにこして畑を耕す。粛清から四ヶ月近く。女の提案で、この日は王と国の官吏たちが農作業の手伝いをしている。

「……これは腰にかなり来るな」

「ああ、無理なさらんでくださいよ。手伝わせて怪我なんてさせてしまえば、全国民を敵に回してしまいますからな」

「いや、恐ろしいこの私に怪我を負わせたという武勇伝となるだろう」

「まあ、恐ろしいだなんて。誰もそんなこと思っていませんよう」

 皆大いに盛り上がる。荒れ果てていたこの国に笑顔と活気が戻りつつある。


 王宮に戻った王はくたびれた顔で玉座についた。女にしか聞こえない小さな声で尋ねた。

「まだ私は自由にならないのか?」

「ええ。未だ街では子供の喧嘩が絶えませんから」

「……子供が喧嘩するのは健康な証拠だろ」

 王は溜息をついて、考え込む。

「そうだ。ハドスは今どうなっている」

「街の復興が遅れています。また邪龍が現れるのではないかという不安が未だ根強いので」

「そうか」

 それを聞くと、王は立ち上がり、並んでいた官吏たち全員に聞こえるような声で宣言した。

「ハドスの神殿を再建せよ。資金が足りなければ、我が王宮の芸術品を競売にかけるべし」

 女も予想外の発言だった。臣下たちが皆部屋を出たあと、女は王に理由を問うた。

「あの神殿は平和の象徴だ。さらに街の復興の象徴ともなるだろう」

 王のその言葉に裏はなかった。女は柔らかく微笑む。

「あなたはこの四ヶ月で、随分と国王らしくなられた」

「それは皮肉か?」

 王は苦笑いしながらも、国のその先を見つめていた。


 女は退室すると、城から外の景色を眺めた。四ヶ月で随分と青々した景色になったものだ。

 窓から女に向かってあたたかい風が吹き込む。今年の春一番はいつもより遅く、いつもより強く感じられた。

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