#003
街に近づき、門兵がこちらに気づいた。ウルフ達の襲撃はあったものの、あれ以降戦闘は起こっていない。街の近くにいるモンスターなんてすぐ殺されてしまうので、あまりいないのがあたりまえだ。
「そこの旅人さん。身分証を見せて貰えないかな」
声を掛けてきたのは身長175ほどのイケメンさん。ショートカットの金髪と整った顔立ち、そして鍛えられてることが分かる引き締まった体。結構モテそうな、僻みを消せば明らかにモテそうな男だ。
「ん、身分証? ステータスのことか」
「そうそう……うん、大丈夫だね。ソラさん、古都には何用で?」
ステータスを名前と職業表示だけで見せる。それが身分証の代わりになるらしい。
「ハンターになろうと思ってな。ギルドはどこにあるか教えてくれないか?」
「へえ、ハンターになるのか。命を落とさないよう頑張れよ。ギルドは門をくぐってまっすぐ進めばすぐ分かるよ。建物の上に大きく看板があるからな」
「そっか、ありがとう」
「いやいや、門番だし当然だよ。あ、ギルドに行くならついでに持って行ってほしいものがあるんだ。報酬も払うし、どうかな?」
「別に報酬はいらんぞ。道も教えてもらったし、何より行くんだから」
「そう? ならありがたくお願いしようかな。ちょっと取ってくるから待っててくれ」
詰所のような場所に行った名の知らぬ門番を見送り、先ほど得た情報を考える。
門番のステータスを能力看破で見たところ、レベルは10で平均8という能力値だった。例えばあれがまだ入りたての新人、もしくは超のつく雑魚だったら、平均999の俺は規格外とは言ってもありえない数字ではない気がする。1レベルで平均1上がれば追いつくのだから。ただしさきほどのウルフの事を考えると、門番は雑魚とはいえないはず。ウルフの平均は4、雑魚といっても一般人には勝てそうにない相手だった。
この世界の強さについて考えていると、手紙のようなものをもって門番が戻ってきた。
「これが届けて貰いたいもの。門番のラースに依頼されたって言えばあっちがやってくれるよ」
「分かった。んじゃ、行ってくるよ」
「ん、古都シャルンへようこそ。犯罪、喧嘩などに気をつけてください」
門番の仕事に戻ったラースと分かれ、言われたとおり道を行く。すれ違った人々を見ると、街人の平均はだいたい3、ハンターのような感じの平均は7だった。スキルも見ることができたが、ほとんどの人が持っていなかった。ある人もいるが、使えなさそうな釣り師や、踊り子といったものが数人にあっただけだ。
それはまさにギルド。言われたとおり道を進み、それらしく建物は見つけた。というかこれ以外に考えられない建物だ。屋根には「ハンターギルド」という意味の言葉がが大きくかかれた看板。そして他とは明らかに異なる巨大な建物。まあモンスターの買取や酒場もやってるのだからこれぐらいが必要なのかもしれない。普通の一軒家の数倍はある。
少し緊張しながら中に入ると、まだ夕方ではなく昼だからか、酒を呑むものは少なく、飯を食べてる人と受付の人以外はいない。全員で10名ほどといったところか。
「すみません。ラースさんからお荷物を預かって来ました」
受付のお姉さんに話しかける。唯一この建物で見た女性であり、その他は皆屈強な……むさい男たちだ。
「ラースさんからですか。ということは、ギルドの加入も必要ですね」
「どうしれそれを?」
「ふふ、私はここの受付を担当するマーナです。ラースさんのような門番はギルドへと加入する方が現れた時こうして手紙をくれるんです。ほんとはそんなことをしなくてもいいんですが、門番の方々から見たその人の実力、雰囲気なんかを教えてくれるんですよ」
対して意味のないことだと思う。まあ勝手にやってるのだし別にいいいけど。
「そうですか。それで、俺の評価はどうですか?」
「ラースさんは貴方のことを……気が合いそう、金への執着は薄そう、期待大、モテそう、長生きしそうって書いてますね」
「……もてそうは関係ないでしょ。まあ話しやすい感じがしたのは同じかな」
「ラースさんは話しやすい方ですからね。まあソラさんも同じ雰囲気をしていますが……。そう言えば、加入のお話でしたね。ここに必要なことを書いてくれますか?」
出された用紙を見ると、名前や年齢、種族といったことが書かれている。それにスラスラと書いて、マーナさんへと返す。
「ソラ様……20歳ですか。エルフの方にしてはお若いですね。それでは、ステータスに反映させますのですこしこの水晶に手を置いてください」
言われたとおり隣においてあったテンプレ的な水晶に手を載せ、終りといわれるまで待った。
ちなみに種族だが、ソラというキャラは俺が作ったエルフであり、黒目黒髪の身長180という姿で、顔はもちろん整っており、エルフ特有の耳も付いている。もっとも、少し尖っているぐらいなので目立つわけではない。
「完了しました。ステータスをご確認ください」
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名前:ソラ
種族:エルフ
年齢:20
ギルドランク:F
貯金:0L
職業:ハンター
レベル:999
HP:999/999
MP:999/999
攻撃力:999
防御力:999
STR:999
DEF:999
INT:999
AGL:999
DEX:999
CRI:999
スキル
剣の心得/剣士入門/剣士中級/剣士上級/剣豪/剣聖/剣神/魔法の心得/魔法入門/魔法中級/魔法上級/魔法師/賢者/世界人/槍の心得……製造(薬)/製造(武器)/製造……etc.
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書いたことの一部が新しくステータスに加わり、ハンターランクFという新人感たっぷりの情報が書かれている。
「ギルドランクはFからSSSの9段階です。だいたいCからがハンターとしての一人前の基準といったところですが、生活をする上ではEランクさえあればギリギリ大丈夫ですね。Cからランクアップが難しくなり、Aまで行けば有名、Sになれば他国にも知れ渡る人といった感じです。ランクアップの条件としては、一定以上のクエストをこなしたり、ランクの高いモンスターを討伐したり、何らかの行動で認められたりと様々です。貯金に関しての説明ですが、最低1万Lから可能で、上限は一切ありません。もし預けたまま三年以上ギルドへの接触がない場合、その半分をギルドが、残った半分を任意の人物に渡せます。もし決めなかったり、その方もいなかった場合には、すべてがギルドへの寄付という形になります」
「一応わかりました。まあわからないことがあったらその時聞きますね」
「はい。いつでも歓迎しますよ。今日はクエストをお受けになりますか?」
「今日は休もうと思う。マーナさんはいい宿を知っていますか」
「そうですね……ももひなの宿がお勧めですね。綺麗ですし、何より料理が美味しいんですよ!!」
「そ、そうなんですか……」
いきなりテンションの上がったマーナさんに引きつつ、お勧めという宿への道順を教えてもらう。聞くところによると、というか勝手に話していたのだが、マーナさんは週に一度そこへ行っては食事をしているんだとか。しかもそこの宿の娘さんと友達のためマーナさんの紹介だというと少し安くなるとか。
ウルフの素材を7000Lで売却し、宿へと向かう。問題としてはお金の少なさだけだろうか。