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そらのきせき  作者: 八生
1/3

#001

人間、意外に死なないものだな。

 

 そんなことを考えた理由は少し前に遡れば分かる。

 

 いつもと同じように、まだ半年しか通っていない学校へと続く道を1人でとぼとぼ歩いていた時だ。


「危ない!!」

 

 そんな言葉が聞こえた時には既に遅く、横を向いた俺の前にはトラックが迫っていた。運転手は飲酒運転かよそ見運転か、まあどちらでもいいのだが、俺の存在に気づいていないようで少しもスピードを落とすこと無く突っ込んできた。

 

 そこで俺の記憶は途切れ今に至る。無論俺は一般人であり、トラックに轢かれても生き残れるほど超人だった覚えはない。それでもこうして思考が続いているのだから俺の一生分の運を使ってこうして生きているのだろ。なんともありがたい話だ。死んで使えなくなるなら使っておいたほうがマシだからな。

 

 だが残念なことに俺の幸運はこれで尽きてしまったようで、俺の周りには誰も、家族や医者といった人の類がいない。それどことか、病院にはありそうなベッドや機械などが一切見当たらない。もう少し言えば部屋という物自体が見えない。言うならば真っ白な空間。そう言ったところだ。


 ……天国ではないよな。

 

 うっすらと考えていたことがとうとう俺の思考の大半を占めてくる。無論、俺は天国なんぞ信じていないし、自分の考えが馬鹿げていることに気づいている。


──天国ではないぞ。


 良かった……。どこからか聞こえてきた声によるとここは天国ではないらしい。ということは俺はまだ生きているということだ。もしかしたら夢の世界なのかもしれない。うん、そうだろう。なにせ誰も居ないのに声が聞こえるのだから。


──夢か。そう考えてもいいのだが、ここは神界だからできるのなら神界と認識してくれ。


 へえ……深海ですか。俺はいつの間に魚類になったのだろう。それよりも深海って白いのか? 


──その深海ではない。神の住む空間、それが神界だ。


 あらら……この人ちょっと頭いってますね。神って……重症なのかな? まだ治る余地があるといいけど。


──神に対して失礼な奴だな。まあそれはどうでもいい。別に深海だろうが神界だろうがやることに変わりないからな。


 すごいな……神界と深海の違いがなぜか分かる。声だけなのに漢字変換した時の違いが分かるよ。いつの間にか何らかの才能に目覚めたらしい。


 それにしても夢にしては長いな。さっさと起きてくれないとこの病んだ神(仮)と同じ状態になってしまいそうだ。


──病んだ神(仮)とはなんだ!!これでも最高神だぞ。普通ならお前さんごときじゃ一生会うことのない存在だぞ!!


 生きたまま神に会ってたら俺は自分から病院に行きますよ。


──ぐぬぬ……。もう良い、疲れた。お前さんがここに来た理由を説明してとっとと転移させてやる。


 ん、転移?


──お前さんは地球という場所で死んだ。それだけなら良いのだが、死に方が異常でな。私がわざわざ来てやったのだ。


 転移の件は無視ですか。てか転移って(笑)。それで、死に方が異常ってどういうことだ?


──本来ならお前さんの寿命は後70年はあった。だが、地球を管理する神の1人がちょっくらミスして、その犠牲がお前さんだ。


 へえ……どこの小説から話を持ってきた?  もう少しひねりがないとつまらなんぞ。


──本当のことなんだが……まあミスをしたといっても、躓いて転けそうになったところを神力で立てなおしたらその力の一部が地球に干渉、そしてそれが原因でお前さんの寿命は0になり、それに合わせるために事故が起こっただけだがな。


 え……俺結構地味な理由で死にましたね。まあミスと言ってたしその辺が限界ですね。


──まだ信じておらぬな。はあ……まあこういった理由で死んだのだが、お前さんの突然の運命が変わったわけだからそれ相応の歴史の変化が起こるわけだ。


 俺って将来何か歴史的発見でもするのか!?


──いや、平均以下の月収で生きる平均以下のサラリーマンだ(笑)。それでもお前さんと関わりあった人物の歴史からお前さんという人物の関わりが消える。一生で言えば相当の数になるだろう?  ほれ、過去に行って1人殺せばその祖先も消えるとか行った話を聞くだろ? そんな感じだ。


 ……。


──いきなり黙ってつまらんの。まあ話が進む分にはいいか。それで……そうそう、お前さんの歴史がミスで消えたわけだから、それに見合った物を与えなくてはならん。それができるのが私だけだから来たわけだが……何か欲しい物あるか?


 (仮)よ、それならそのミスを無かったことにしてくれよ。何でもいいのならできるだろ? それに死んだって設定なのに何を貰えばいいんだよ。


──神を略すな!! まったく……生き返らせることなんてで

きんぞ。それこそお前さん達のいう輪廻というやつが崩れる。もう起こったことは変えれないのだ。ではなぜ与えるのか? お前さんは別の世界で生きてもらうことになる。その時に必要な物を与えようと考えたからだ。地球という世界のような場所に連れて行くことができないが、所謂ファンタジー世界、小説の世界、夢の世界、想像の世界、ゲームの世界。お前さんの記憶で言うならこんな感じか。そういった世界に転移させるのだ。


 まるで小説の主人公だな。これが俺の夢なのだから俺はいつのまにか中二病にかかっていたのか……。


──それで、お前さんは何を望む?


 まあ言うだけならただか。さらば俺の真っ白な時代。ようこそ、俺の暗黒時代……。


 まず俺の能力をチートにしてくれ。それこそ、世界最強の何万倍も強く。死ぬのは自殺意外なし。何かを殺しても大丈夫な感情……これは平常な心すらあればいいから。他には製造関連も欲しいかな。自作装備とか格好良いだろうし。ああ、またも中二病設定!! あと魔法は外せないな。魔法のある世界であることを指定するよ。あと年齢は20歳で姿は俺がシュナイナのゲームで作ったソラっていうキャラクターで。名前もソラでいい。他にも役立ちそうなの適当にお願いするよ。ふふ……チート性能、主人公補正、これぞまさに中二(略)。


──お前さんは自重ということを知らんのか? まあこちらのミスだから願い通りにするが……能力値については問題ない。役立ちそうなのをいくつか入れておくからこれ以上は増やさんぞ。世界についてだが、お前さんの魔法が使えるという条件から考えると多すぎるからもう少し条件を絞らんか?


 なら小説みたいなエルフや人間以外の人種的な存在のいる世界。できればゲーム風の世界がいいな。あと戦争とか起こってない平和な世界で、できれば絡んでくる王様とかお偉いさんの少ない世界がいいな。あと人種差別はNGよ。主人公補正で世直しとか面倒だし。


──まあそれでも数えきれない世界の選択肢があるのだが……こちらで3つに絞るかの。一つ目はグレゴリアという世界。定番のファンタジー小説に出てくる世界観だな。戦争もモンスターがいるから起こらないし、条件に見合っている。次はキリシアという世界。こちらも似たような世界だが、より魔法が進んでいる世界だな。最後がフェルメトだな。こちらは……グレゴリアとキリシアを足してわった感じの世界だな。


 ならキリシアでいいよ。あと転移場所が危険地帯とかやめてくれよ?


──分かっておる。転移場所から東に1時間ほど歩けば街があるようにする。ではそろそろ時間だな……次の世界ではミスって死なぬよう願っておるぞ。


 (仮)が願ってどうする!!


 それと同時に俺の体が透明になっていき、漸く夢の終りが近づいてきた。次こそこんな世界に来ないためにも中二病を直さなくてはいけないな。

誤字脱字ありましたらご報告ください。

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