"This is Halloween, This is Halloween"
パパもママも死んでしまってからは、窓の外の共同墓地を視るのがつらくなった
よりによって墓地は、いま僕の居る二階寝室のベッドから良く視える位置に広がって居る
明日からは後見人が来るらしい
今夜を耐えれば精神的に楽になれる可能性は有る
ただし、今夜はハロウィンの夜だった
だん、だん、と
夥しい数の叩く音が、木で出来た十字架が死骸の様に立ち並ぶ月下の墓地にこだまする
風に草木がそよぐ以外に動くものは無い
此の音は土よりも下、埋葬された棺桶の中で死者達が蓋を叩いて居る音だ
少なくとも、僕の両親はそう言って居た
ハロウィンの夜は、死者が仮初めの生命を得て動き回るのだと云う
───仮初めの生命
そう
両親が僕に話した通りなら、ハロウィンに蘇る死躰達に宿った魂は本人のものなんかじゃなく…………
一階の廊下で足音がした
想像だにして居なかった事なので、心臓が止まりそうな程に驚いて呼吸を乱しながら、僕はベッドの中で布団を頭まで被った
ぺた、ぺた……と、湿った素足が歩く音が繰り返される
足音はホールの中心と思しき場所で、右往左往を繰り返して居るらしい
足音がパパの歩き方に似て居たが、躰がパパだったとして『其れはもうパパでは無い』
「会いたい」と思うどころか
それが家に侵入して来た事が、僕は泣きそうなくらい恐ろしかった
彷徨く足音は姿勢を崩したりしながらも、やがて一階の部屋を一つ一つ巡り始めた
同じ部屋には二度入る様子が無い
やがては僕の居る、此の部屋にも来るのかも知れない
危険を感じ、僕はベッドを出ると寝室のドアの施錠を確認した
そうして居る間も窓の外からは、棺桶の蓋を叩く音の大合唱が聞こえ続けて居る
寝室の鍵は掛かって居る
ほっ、と胸を撫で下ろして
僕は其の場にへたり込んだ
前触れも無く、ドアの鍵が回されていく
ドアの反対側からママと同じ声が『Happy Halloween………』と云うのが、聞こえる
僕は眼を閉じて両耳を手で塞ぐと、泣きながら叫び続けた




