勘当
" 面白いことに一ヶ月大学生活をしているとだんだん板についてきた。部活やサークルも決まり、ある程度仲良くするグループも決まりつつある。しかし僕はこれまでの人生で最初のグループでそのまま卒業時までずっと続くことはないということを知っている。まして6年制のところであるから数回は変わるんだろう。
そんなことを考えながらおそらくそんなには永続きをしないんであろう4人組(いつも準備不足で他力本願なくせに偉そうなやつ、多浪の傷が癒えていない何をやらせてもうまくないプライドが高いやつ、心優しいノリのわかるやつ、そして苦労しないでここまできたので人を小馬鹿にするのが生きがいだった僕)と学食で昼食をとっていた。今考えてみるとよくぞというメンバーだった。ここの構造は至ってシンプル。僕は多浪と他力本願を馬鹿にして、いじって、心優しいが程よくその場を収めるという感じだった。僕は男子校出身だったので、男子校の特有のコミュニケーションに慣れてしまった。簡単にいうと男子校コミュニケーションとは、相手をいじりながら仲良くなるというやつだ。その癖が抜けていないんだろう。でも、それにしても多浪も他力本願もあまりにも目に余った。これから苦労するだろうな。と上から目線で馬鹿にしていたことを思い出す。
僕と多浪と心優しいは同じなあん式テニス部に入った。心優しいはバリバリの経験者で、めちゃくちゃ上手かった。僕は小学校の頃にちょっとやっていたのと球技は前半上手い方だった。多浪は未経験者だった。初日、僕たちは初心者と経験者で分かれよと言われた。もちろん、僕は初心者の方に加わり、男子は多浪と僕だけだったのでペアになった。僕は正直、結構いける方で、先輩からもお前はあっち加わってもいいよと言われた。そんなこんなで平凡な初心者のための講座が始まった。休憩時間、空いてるコートで打ってもいいと言われたので多浪と打つことにした。
多浪は僕に踊らされてジタバタしていた。たまらなく気持ちよくなってきて僕はもっと攻めてみた。次第にやつがイラついてきているのがわかる。僕は性格がねぎ曲がっているので、もっと優しくしてあげないとね。と言ってやった。さらに苛立ち始めた。たまらなかった。しかし、僕だってミスすることはある。やつはここぞとばかりに喜び、煽ろうとする。それすらも、虫籠に入った虫が当たるはずないのに排泄物を勢いよく発射しているような感じがして気持ちよかった。
練習の後、3人で帰ることになった。僕と心優しいは大いにテニスのことで盛り上がった。多浪はだんだんと会話に入れないことに不貞腐れ、イライラしてきた。これも僕の計算のうちだった。心優しいは心優しいので彼にも話を振ってあげていた。心優しいは少し天然なところがあって、僕でも反応に困る質問ばかりでそれが彼に油を注いだ。彼は別れの挨拶もしないまま去って行ってしまった。心優しいは彼が怒っていることに見当がついておらず、心配そうな顔をしていた。
その晩、多浪から電話がかかっってきた。内容は一方的で簡潔だった。距離を取りたい。というものだった。僕は、はいよ。とだけ応えた。僕の昔からの信条として、自分にも、友人にも期待しない。というものがあった。だから直接距離取りたいと言われたのは初めてだったのでちょっと面くらいはしたが、メンタルはびくともしなかった。それと同時に多浪にムカついてきた。
僕は学年の男子の中では最大派閥を束ねていた。多くの人は見苦しいというかもしれないがよくよく考えてみると皆さんの周りもにも少なからず派閥が存在してどこかしらに所属しているだろう。多浪もこれに所属していた。僕は彼が僕に頭を下げるまで、この派閥では干す、勘当だと通達した。
気づいたら、僕は学年で唯一の留年生となっていて、周りに誰もいなくなっていた。"




