第2話いざ遊園地へ
お題「観覧車」
終われば、次は朝食の準備だ。
既に朝ごはんの準備を開始している兄妹達と合流し、パライベも準備を手伝う。
そして、準備も完了し、家族一同が食卓に着き、祈りを捧げてから食事を始める。
「今日だが、明日組合の方で会議に参加することが決定した。
その影響で、明日の店番はお前たちに任せることになる。
急な話で申し訳ない。
ただし、今日から数日に分けて、その埋め合わせという形で少し遊んできていい。
その資金についてはこちらから、出すとしよう。
パライベ、リバ、2人は遊園地に興味があったな?」
「は、はい」
「そうだね、父さん」
「丁度、客から2人分のチケットを受け取っていてな、これと少し、昼食が食べられる程度の軍資金を渡すので、今日一日楽しんでくるといい」
「ありがとうございます」
「父さん、ありがとう」
パライベとリバは父親からチケットと、お金を受け取る。
リバはパライベのもう一人の兄、スグリが長男で、リバが次男だ。
「2人以外は順番で明後日以降に調整しよう。
2人も急な話ですまないな、チケットの期限が今日までのようだから、気を付けてくれ。
では、今日も一日頑張ろう」
ということで、朝食を終了し、解散となった。
今日は休暇を言い渡されたので、朝食の片づけなども免除となった。
一日しっかり遊んで、満喫してこいといった感じだろう。
「本当に今日までだ」
チケットの内容を確認し、パライベは感想を漏らす。
「そうだね、急な話ではあるけど、しっかり楽しもう。
さて、すぐ準備したら行こうか」
「もちろんっ」
パライベは急にわいた休暇にワクワクしながら、準備を整える、
そして、玄関でリバを待つと、割とすぐにリバもやってきた。
「さて、行こうか」
「おーう」
2人は街中へと繰り出した。
「ジェットコースターとか、楽しみだなぁ。
リバ兄さんはどのアトラクションに乗ってみたい?」
「観覧車だね」
「観覧車?
景色はいいかもしれないけれど・・・」
「ああ、デートの際に乗る可能性が高いし、恋人と一番ロマンチックに盛り上がるアトラクションだろう?
なら、事前に下見をしておかないとと思ってね」
「ああ、そういう・・・。
遊園地に興味があるって、デートスポットとしてって意味だったのか」
「もちろん、楽しみという気持ちもあるけれど、
恋人の前でかっこ悪い姿は見せられないからね、そのための事前調査だよ」
リバはかなりイケメンで、女性受けがいい。
そして、今付き合っているいる人がいるようであるが、その人と遊園地の話題が上がるようで、その際にエスコートをできるようにしておきたいとのこと。
お題「万華鏡」
しばらくして、入園口にまでたどり着き、チケットを見せて、中へと入る。
「お、土産屋があるね。
入っていいかい?」
「え?こういうのって最後に入るものじゃ・・・。
まあ、いいけど」
「なるべく多くの場所を回っておきたいからね。
移動はなるべく少ない感じでいこう。
それに、ここは閉園間際に行くととても混んでいるだろう?」
「いや、まあ、そうだけどさ」
リバに連れられてお土産屋の中へと入る。
中には色々なキャラクターのグッズなど、様々なものが置かれている。
「ふーん、こういったものが置いてあるんだね」
リバはそれぞれの商品の値段感を見ているようだ。
恋人がどのようなものに対して喜んでくれるのかと、それに対してどれぐらいのお金が必要であるかを確認しているのだろう。
一方パライベの方は、そもそもが金欠だ。
あまり、何かを買う余裕はない。
「それに、取り合いになった時に壊れるようなものはちょっとな・・・」
パライベの家族は大所帯だ。
あまりぬいぐるみなどを買ったとしても取り合いなどになった時に壊されてしまいそうだ。
と、ふと、万華鏡が目に入る。
「おや?
面白いものに目をつけているね。
筒の部分もロゴこそ入っているけれど、それほど目立つものではないし、中の様子もキャラクター関連じゃない。
欲しいのかい?」
「あーうん、この反射しているのに、魚の鱗とか、貝の一部とか入れたら面白い絵ができたりしないかなって」
「貝殻はともかく、鱗は腐るだろうから、綺麗だけれどもやめておいた方がいいだろうね。
ただ、面白そうだね、一つ購入しようか。
それに弟たちのいい土産になるだろう?
今金欠なパライベに代わって、僕が出してあげるよ」
「え、いいの?」
「ただし、兄妹と取り合いはなしだよ」
「もちろん。
ありがとうっ」
リバはそのまま万華鏡をもって会計を済ませてきた。
「はい」
「ありがとう、リバ兄さんっ」
パライベは万華鏡をリバから受け取った。
お題「屋上」
そして、今度こそ、沢山アトラクションがある地帯を歩いているわけだが、
「おおー、リバ兄さん、あれやりたいっ」
パライベは目を輝かせてリバに訴える。
その指が指す先ではバンジージャンプが行われている。
「あれは、ちょっと、僕は苦手かもしれないね。
パライベ、一人でいけるかい?」
「ええー?
リバ兄さんやらないの?
彼女さんにやろうって言われたら断れないでしょ?
なら、終わった後に情けない姿を見せないように慣れておいた方が良くない?」
パライベはリバのデート時のことを意識して半分、残り半分はこういう絶叫系が苦手なリバ少し意地悪も込めて半分で伝える。
「うぐっ!?
そう言われると苦しいね。
確かに、そんな姿を見せるわけにはいかないね、仕方ない、一緒に行こうか」
「そうこなくっちゃね」
ということで、2人は飛び降り場所である屋上まで階段を登る。
そして、係の人の指示で安全用の器具を取り付けていく。
「いいいいい、やっぱり高いね。
3階分ぐらいの高さなら平気なのだけど、ここまで高いのはなかなかに・・・」
「お客様、大丈夫ですか・・・?
もし、厳しいようであれば、お戻りいただくことも可能ですが・・・」
「い、いや、そんなことはしないさ。
飛ぶよっ、いや、深呼吸してからだね・・・」
「じゃ、俺先飛ぶね。
リバ兄さん、下で待ってるからー」
少々心の整理に時間がかかりそうなリバはおいて、パライベは先にバンジーの準備を完了させる。
そして、後は飛び降りるだけという状態であるが、高いところで、何も対策をしていなければ死んでしまうというスリルが心地いい。
その感覚を楽しんだ後、パライベは言われた通りの耐性でそのまま下へと落下した。
「ひゃほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
パライベは大きく声を上げながら、落下していく。
自由落下により風圧が自身の顔面に対して強く当たるのと、凄まじい勢いで迫ってくる地面に興奮が止まらない。
そして、地面の上にあるセーフティ用のネットすれすれでバンジーのゴムが跳ね、何度かの伸び縮みのうち、係の人に回収された。
「あー、楽しかったー」
パライベは上からリバが落ちてくる姿を見届ける。
「ひゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「うーん、おびえすぎじゃない?」
リバの絶叫を聞きながら、やはりダメそうだと感想を述べる。
そして、しばらくすると、少々やつれたリバがパライベの方へと歩いてくる。
「ふう、ふう、待たせたね」
「あ、お疲れ様です」
「で、今の僕はどんな感じに見える?」
「やつれて、疲労した感じに見えます」
「っ、あと3回は行って慣らしておこう。
パライベも来るかい?」
「え、あ、うん」
こういうところ、リバはストイックなのだ。
パライベはとリバは結局4回バンジージャンプを飛ぶことになった。
「流石に、4回連続やるもんじゃない・・・」
パライベは少々飛ぶのに飽きてしまった。
お題「沈黙」
その後もパライベの当初の目的であった、ジェットコースター含め、沢山のアトラクションを楽しんだ。
その中で、絶叫系と呼ばれるものはリバが弱く、何度か付き合わされることとなった。
そして、リバの一番の目的であった観覧車にも乗ったが、これは流石にしっかりと空間が閉ざされており、安全であるためか、1回で済んだ。
流石にほとんど変わらない景色を2回も見ようとは思わなかったので、助かった。
そして、昼時になったので、2人は遊園地内のレストランへと入る。
「これぐらいは混むのか・・・。
それに、値段もやはり、素材に対して、割高だね」
「まあ、遊園地内で提供しているんだから、その分の付加価値があるわけだしね。
現に俺たちも食事を取っているわけだし」
外装および内装や食器の類にも世界観を意識したこだわりが存在しており、他の食事可能な場所も同じような仕組みになっていることを考えると、適正な価格だろう。
というか、これらに割高と思うのであれば、そういった価値観の人と付き合えばいいのではないかと考えてしまうが、人の色恋に足を突っ込むつもりはないので黙っておく。
2人が食事を終えて、レストランを出る。
「さて、次はどこにっ!?」
「なんだあれ!?」
次の瞬間、上空から赤いシミのようなものが出現し、遊園地をあっという間に包み込んでいく。
そして、こちらが起きていることの認識ができず、立ち止まっている間に完全に遊園地一帯は赤い結界に包囲されてしまった。
それと同時に、園内の全ての機器が停止し、重苦しい感じが園内の人全員を襲う。
圧力によって、叫ぶこともままならず、先ほどまでの楽し気な雰囲気から一転、沈黙が辺りを支配した。
お題「偽物」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」
重圧に耐えることで精いっぱいであったが、悲鳴を聞いて我に返る。
なんと、客の中から化け物が現れ、周囲の人に襲い掛かっていたのだ。
化け物は2m級の大男のような大きさであり、2足歩行で、ぶよぶよとしたピンクの全身に血走った目に、口には鋭利な牙が円状に並んでいる。
「っ!?
パライベ、逃げるよっ」
「逃げるってもどこにっ」
「・・・困ったね。
とりあえず、立てこもるのに都合が良さそうな場所を探すっ。
父さんから非常時の心構えは叩き込まれているだろう?
時間はこっちの味方のはずさ、それまで、死ぬ気で逃げ切るよっ」
「わ、分かった」
リスーム一家は拠点を複数持ち、移動し、生計を立てている商家だ。
移動時に魔物や盗賊の類に遭遇することも当然ながらあるわけで、それに対処できるようになるために家族全員、戦闘の心得および、緊急時についての動きについて叩き込まれている。
そして、この街は大きく、異常を検知すればすぐに警備や、ヒセリト教関係者が守るために動いてくれるはずである。
「客の中に人に化けた偽物が混ざりこんでいたみたいだね。
動きは鈍重だけど、攻撃力とタフネスは凄まじそうだ。
これだと、園内の警備員じゃ、太刀打ちできない気がするね」
園内にもそういった警備の類は存在する。
そして、それらの人は化け物に対して、鎮圧に乗り出しているのだが、如何せんパワーが強く、相手になっていない。
救いとしては動きはゆったりとしているので、しっかりと周りを確認していれば、注意を引くだけで十分に効果があると考えていたのだが、状況が変わった。
「なっ!?
ぎゃあああああ!?!?!?!?」
警備員のうちの一人が後ろから他の警備員に攻撃されて、倒されてしまったのだ。
「まじか・・・」
「これは、やばいね・・・。
誰が味方か、一切分からなくなった。
それに、こいつら、人間を食べて、増殖しているね」
化け物はそのまま倒された警備員に覆いかぶさると、むごい音を立てながら取り込み、体系だけはその元の警備員の反映させたような化け物を生み出した。
お題「予兆」
話は今日の朝まで遡る。
摩天楼の中では街内から集められた魔力に加え、教徒達の魔力を合わせ、結界を補填する儀式が行われていた。
儀式といっても、毎朝行われているものであるため、長時間行われるものではなく、魔法の詠唱とともに、深く祈りを捧げるといったものである。
そして、それは今日も普段通りに行われるはずであった。
「?結界が補強されていない・・・?」
「磁気嵐の影響でしょうか?
昨夜、大きくオーロラが出現していたのを確認しております」
「いや、この前起きた際には異常は起きていない。
何十年も前に磁気嵐対策はされている」
街に展開されている結界は大規模なものであるが、魔法の発動にあたって、磁場の影響を受けることが確認されている。
だが、これはこの摩天楼を設置したての頃に同様に磁気嵐が発生し、結界が乱れてしまったことを機に対策が取られている。
「原因が磁気嵐と断定するのは早計だろう。
そして、結界はあと3日は展開されるようになっている。
優先順位は現状を把握し、人々をいたずらに不安にさせないこと。
結界の補強をできるようにすること。
そして、原因の究明および、2度と同じ事象が起こらぬよう、対応策の実施だ」
ここで、現場の混乱をいち早く、収め、方向性を定めたのはヒセリト教が所有する兵団。
ヒセリト守兵団で長の立場にあるニッシェ・S・ヒセリアである。
彼女は的確に主要な人物に声をかけて具体的な指示を振り分けていく。
「不測の事態はよく重なる・・・。
何か重大なことが起こらなければ良いが・・・」
彼女は結界に対して、根拠こそないものの、良からぬ予兆を感じ取っていた。
そして、この予感は的中しており、教徒達が結界の対応に奮闘している間に遊園地で事件が発生し、教団の対応は後手に回ってしまうのであった。
お題「残像」
状況はパライベ達の方へと戻る。
人の中にもこの騒動の協力者がいる都合上、身内以外は信用できない状態である。
パライベと、リバは遮蔽物を利用し、隠れつつ、様子を伺っている。
「おかしい、もうすでに教団の人たちが動いてもおかしくないぐらいには異常事態のはずなのに・・・」
「やっぱり、あの結界、外と何かしら遮断するような何かがあるのかな?」
「物理的に侵入できないのか、それとも、外の様子が分からないようになっているのか・・・。
どちらにせよ、ただ色がついているだけってわけはないだろうね。
となると、時間を稼ぐだけじゃ、何も好転しないかもしれないね・・・。
化け物は逃げ遅れる人が出れば増え続ける一方だろうしね」
「といっても、俺たちに何ができるかな・・・?」
「まず、大前提として、戦うことはしない、これは最終手段だ。
僕たちは本職ではないし、相手がこちらに対して警戒していないのは、ハンティングゲームを楽しんでるからだ」
パライベはコクコクとうなずく。
ある程度警備員が削られ、戦力として厳しくなったタイミングで、騒動の協力者側は隠れるのをやめて、化け物たちを操り、狩りを始めている。
「彼らが狙われない理由を見つけるのはだめ?」
「いい発想ではあるけれど、止めておいた方がいいだろうね。
本当に襲われない確証はとれないだろうし、操っている人間の方に狙われるだけかな」
「そっか。
じゃあ、あそこの善戦している方の人たちと合流するのは?」
パライベが指さす方向には化け物たちに対して戦い、何体か倒すことに成功している集団だ。
その中で一番活躍している人は残像を生み出しているのだが、化け物は残像と本体の差を認識できないらしい。
実体のない化け物に果敢に襲い掛かって首をかしげている。
「あれも、積極的に狙われることになりかねない。
それに、僕ら目線は彼らが敵ではないって分かるけど、彼らから見ると、僕らは敵と判別がつかないからね。
パライベ、相手からどう見えるか、こんな時だけど商人としての心構えとして覚えておくといいよ」
「分かった」




