遺夢 作者: 森羅ジン 掲載日:2026/02/16 初春 夢を見てみたいと思った。 しゃぼん玉のように消えてしまう、軽薄な夢。 不味いと思えば思うほど重くなる、甘美な夢。 夢を見てみたいと思った。 春の終わり。 見えない手に唆されたように、死地に飛び込んだ。 雑踏。喧騒。妨害。圧縮。液化。 自分が自分でないような疾走感。 存外、いいものではなかった。 誰にも気づかれることなく踏み潰される蟻のように笑みがこぼれる。 鼓動がうるさい、十一時四十一分。 汗ばんだ背中に蝉が止まった。 鳴かない。 春が目覚めた。