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ミッドナイト・アゲート──五歩で寄り添う商店街交渉術  作者: 輝


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16/40

第16話 資料請求はラブレター。

 平日の朝。市役所の情報公開窓口は、コーヒーの香りと紙の擦れる音に満ちていた。歩は深呼吸してから、封筒をそっと差し出す。宛名は丁寧に、文面は簡潔に。冒頭は「お願い」ではなく「拝見したい」。理由は一行で、語尾をまるく。

 「「礼節×根拠」で通す」

 背後で亜柊が小声で確認する。歩はうなずき、添付の〈必要資料一覧〉を重ねた。〈事業計画(最新版)/交通影響評価の前提/説明会配布資料の完全版〉――それぞれに法的根拠の条文をクリップで留める。

 窓口の担当は一瞬だけ目を瞬かせ、すぐに表情を整えた。

 「畏まりました。正式な受付として処理します」

 受理票の角を、歩は指先でそっと丸くなぞった。

 「テンプレ、公開しよう」

 戻った相談所で、有里杏が期日をホワイトボードに書く。幸博は短尺動画で〈事実→謝意→改善〉の順を示し、宜幸は配布の動線を描いた。黒板の端には「資料請求=愛の労力」と小さく書き添えられる。

 その夜、停電訓練の準備で点検した提灯が、暗闇にうっすら縁取りを残した。マスターが温いレモン水を配り、言う。

 「礼節は、角を丸くする」

 歩はノートを閉じる。受理印の赤が、静かに街の色に溶けた。


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