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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

過激ユニコーン勢が男性Vtuberたちに誹謗中傷を何度も行ってたら、それが全て現実になって……

【注意】

この作品はフィクションであり、実在のVtuberや人物、団体を批判する意図はありません。誹謗中傷、死亡表現、Vtuberの放送事故、SNSの集団攻撃など、精神的に負担を感じる内容を含みます。Vtuber文化への愛とリスペクトを込め、誹謗中傷の危険性を描いています。不快に感じる可能性がある方は、閲覧をご遠慮ください。

 「どうもみなさん、こんアゲハ〜♩ "ドリームガールズ"3期生の蝶咲アゲハです! そして? 」


 「はいどうもみなさん、こんギンにちは〜♩ "ドリームメンズ"4期生、しろがねギンでーす。お願いしまーす」


 『初コラボ!! ギンさんとワイワイ喋ってこ!!! 』というタイトルの画面内に二人のVtuberが体を揺らしながら笑顔を向けていた。


 「私たち事務所は一緒だけど、こうやってコラボしたのは初めてだったよね〜? 」


 アゲハ蝶のような煌びやかな衣装を小刻みに揺らしながら蝶咲アゲハがギンに視線を向けると


 「そうですね。ゲーム大会で一緒になったくらい…かな? 」


 と銀色の着物を着た銀髪の銀ギンが答える。


 「それじゃあ、今回の雑談はギンさんと一緒に楽しくやっていきましょー! 」

 

 「おー! 」


 二人の一言でコメント欄は


 『始まった〜! 』


 『ドリメンとの初コラボやー♩ 』


 『ギンさん、初めて見たけどかっこええなぁ』


 『アゲハちゃん今日も可愛い!! 』


 と、上へ上へと流れていき、アゲハ達もコメントを見ては


 「ありがと〜♩ 」


 と、笑顔で返す。




 ーーーが、あるスパチャが一番下に現れた途端、アゲハとギンの表情から一瞬、笑顔が消えた。





 『今まで推してたのに最悪の気分です。そんな数も稼げない低脳Vtuberと合コンですか?? 』




 


***

 ーーー同時刻、都内某所。


 光のない室内で一人の男が『天馬』というアカウントで


 「『そんな消えてもいいような男と付き合ってリスナーを裏切るのですね 』と、送信」

 

 と、爪でひび割れた画面をさらに傷つけながら大量の空いた酒缶を押し除けながら足を伸ばして寝転がっている。


 「クソが…! なんでこんな奴がアゲハと……!! 」


 呼吸を荒げ震える手で握る画面の中では


 『最近、ギンさんって生配信は減ったけど歌みたはよくやってるよね? 』


 『そうですね。ちょっとまぁ、色々あって生配信は控えてるんですけど…その代わりに歌みたとかを積極的にしようかなって』


 『だよね〜? あ、私こないだ聞いたよ? 4日前くらいに投稿したあのボカロのやつ! 』


 『マジっすか!? ありがとうございます! 』

 

 と、アゲハとギンが笑い合っており、コメント欄も


 『俺も聞いた! 低音ボイスがマジで神やからオススメやで』

 

 『そんなにええんや。今度聞こかな』


 と、盛り上がりを見せていたが、それを見れば見るほど天馬のスマホを握る力と震えも強まっていく。


 そして、勢いよく指を動かして


 『お前みたいな寄生虫を見に金払ってるわけじゃねぇんだわ。図に乗んなカス』


 『そんなに数稼ぎたいのか?? 死ねよ、マジで。数も稼げんクソヒモ男が』


 と、次々と送信ボタンを押し続ける。


 ところが、何度も暴言を吐いてもアゲハ達は愚かコメント欄からも反応はなく、


 『アゲハさんの歌みたもボカロ多いですよね? 一番好きな曲とかあるんですか? 』


 『えー? 一番か〜。えっとね〜』

 

 と、配信は進んでいく。


 「ハァ!? 何無視してんだよ!! 」


 アゲハのポスターだらけの壁に叫びを反響させながらコメント送信の頻度を早めるが、結果は同じ。


 「ブロックしやがったか…! だったら……!!」


 YouTubeを閉じて裏垢でX(旧Twitter)を開き、


 『なんで数も稼げないようなゴミクズがアゲハとコラボしようと思ったんだよ運営。見ろよこのグラフ。銀ギンとかグループでも数を稼げない足手纏いじゃねぇかよ。死ねよ、マジで。お荷物しかないドリームメンズは全員クビでよろ』


 と、グラフを貼り付けて眠気に瞼を完全に閉じるまでXの画面に己の叫びを響かせ続けていたーーー。



 ーーー翌週、とあるビル内。


 「クソが、あのくらいのミスで散々叱りやがってクソ上司が…マジ死ね…! 」


 食堂で指を机にトントンと叩きながら歯軋りをしている天馬に周囲の人々は避けて通り歩いていく。


 天馬はそれに目もくれず


 「死ねって言えば、昨日のコメントに誰か反応してっかな〜」


 と机を叩いていた指をスマホに移してXを開く。


 すると、Xのトレンド欄に『銀ギン』の名が。


 「うわ、絶対あのクソコラボのことじゃねぇかよ」


 眉間に皺を寄せてすぐにスワイプするが、その真下にある別のトレンドが視界に入った途端、思わずその指が止まってしまった。









 【銀ギン死亡】



 





 「………は? 」



 一瞬、固まってしまった指を再び動かして【銀ギン死亡】の項目をタップする。


 『ギンさんって生配信控えてたよね? もしかして相当追い詰められてたんじゃ………』


 『コラボしただけで害悪ユニコーンどもがめちゃくちゃ叩いたせいやろ……… どうしてくれんだよ!! 責任取れよ!!! 』


 『普通契約解除とか卒業とかって本人のアカウントで出すもんだよね? それを運営がしてるってことは………』


 『卒業理由とかも書いてない… まさか、嘘だよね…!? 』


 怒り、悲しみ、憶測が飛び交うポストを見ながら、ようやくトレンドの元と思われるポストを見つける。


 それは、銀ギンが所属している『ドリームメンズ』の運営からの


 【この度、弊社所属タレントの銀ギンは、〇月〇日をもちまして活動を終了させていただくこととなりました。


 皆様には突然のご報告となり、深くお詫び申し上げます。


 本件につきましては、ご家族の強いご意向により詳細のご説明は控えさせていただきます。


 長らく応援いただきましたこと、心より感謝申し上げます。】


 という、淡々としたメッセージだった。


 その日以降、ギンからの報告動画も同期からの声明も一切なく、ただ『銀ギンというタレントが辞めた』ということしか分かっていない。


 しかし、リスナーたちの憶測が彼の死をトレンドに導いていく。


 「は……? 本当に死んだのか……!? 」


 目を大きく見開きながらメッセージを何度も読み返す天馬の脳裏に自身が書き込んだコメントたちを思い出す。


 『このギンとか言うやつ、同期と登録者数が低すぎてわろた。マジでいらんやろこんなお荷物』


 「ち、違う………! 俺は関係ない……!! ほ、他のやつだって言ってる………!!! 」


 言い訳をしてながら震えている天馬は周囲の社員たちは白い目で片眉を顰めながら遠ざかっていくのに気付かないままただ冷たい汗を流していたーーー。




 ーーーそして、それから数週間。

 

 自室で床に散らばった酒缶を避けながら横になって


 「『そもそもドリームメンズとか言うやつらってドリームの看板背負ったヒモ男の集団じゃん。さっさと消えろよ。ギンも〇んだんだからお前らも後追えやwww』っと、送信」


 と、迷わず送信ボタンを押す天馬。


 「ギンのやつが死んでからもう何日経ったかな〜。どうせ俺以外のやつのコメントで死んだんだから、気にしない気にしない」


 そして酒缶を開けながら


 「ほら見ろ。もうギンのことなんて誰も話題にしてねぇじゃん」


 と、Xの画面を鼻で笑いながら見ているとトレンド欄を見てまた指が止まった。






 【ドリームメンズ解散】

 


 



 「はぁ??? 」




 酒缶を落とし、畳に酒が染み付くが視線はスマホの画面に釘付けとなっている。


 慌てて【ドリームメンズ解散】をタップしてスワイプしていくと、ドリームメンズ運営からのお知らせが出てきた。




 【平素よりドリームメンズを応援いただき誠にありがとうございます。


 この度、弊社所属タレントの銀ギンの活動終了に伴い、メンバー・運営での協議の結果、ドリームメンズは活動を終了、解散することとなりました。


 突然のご報告となりましたこと、心よりお詫び申し上げます。応援してくださった皆様、関係者の皆様には深く感謝申し上げるとともに、メンバー個人の活動に引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。


 ※本件に関して、メンバーの心情を尊重し、詳細なご質問はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。】




 

 リプ欄にはドリームメンズとコラボをした数多くのVtuber、YouTuberたちが所属、個人勢、企業勢問わずして


 『突然の解散、とても残念です。もっと遊んでおけばよかった………!! 』


 『一緒に遊んだこと、ずっと忘れへんで!! ドリメンは永遠や!! 』


 『同事務所の先輩として、彼らの活動は立派なものでした。お別れするのはとても悲しいですが、彼らのこと絶対に忘れません。機会があれば、また会いましょう』


 と言う声が殺到し、無論、リスナーと思われる


 『嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ』


 『なんで……!? なんでこんなことに……!? ギンさんもみんな一生懸命に頑張ってたのに………』


 『おいこれで満足かよユニコーンども!! 人の生き甲斐と努力の結晶を奪っておいて食う飯は美味いかよ!!! 』


 という怒りと嘆きが何万件も集まっている。


 「嘘だろ…"また"、俺の言った通りに………」


 震える声でスマホを見つめる天馬。


 しばらく震えていたが、次第に


 「は、はは…はははははっ!! 」


 と大口を開けて笑い声を響かせる。


 「ざっ! ざまぁ見ろぉ!!! 俺は悪くない!! 全部全部、稼げないくせしてアゲハたちに近づいたあいつらが悪いんだ!!! 」


 転がっている酒缶を蹴飛ばし、腕を振り回し続ける天馬。


 室内では彼の笑い声と空き缶同士がぶつかり合う音が反響し続けるが、天馬の耳には一切届いてはいなかったーーー。







 ーーーそして、数日後。


 『みなさんどうもこんアゲハ〜♩ 今日の歌枠、楽しんでってね〜』


 「は〜〜〜……… 俺のアゲハ、今日も可愛い………」


 電気もついていない室内で天馬の視線の先には『【歌枠】 ボカロとかいっぱい歌うよ! 』と言うタイトルとこちらに笑顔を向けているアゲハの姿。


 頬を限界まで緩めて、何度もため息をつきながら画面を見つめていると


 『それじゃあ、早速歌ってみよー! せっかくだし衣装に着替えるねー』


 とアゲハが視線を下に向けて衣装の準備をしている様だ。


 "カタカタカタッ"と言うキーボードの音を聞きながら天馬は瞬きもせずにアゲハを見つめている。

 

 そして、"ターンッ"というエンターキーらしき音が響き渡ったーーー




 次の瞬間。




 「は??? なんだこいつ………!? 」









 天馬のスマホに映し出されたのはアゲハのピンク色のバーチャル室内などではなく、アパートと思わしき"現実"の室内。


 そしてその中央で


 『あっ、やばい……!! は、早く戻さないと………!! 』


 と、"アゲハと似た声"の女性の姿が。



 『!?!?!? 』


 『放送事故』


 『顔バレやん!! 』


 コメント欄が湧き立ち次々と上へ登っていく中、天馬は目を大きく見開いてアゲハではない女性の顔を凝視している。


 数秒前とは異なり、身体は小刻みに震え、汗が滲む。


 そしてまた、画面にアゲハの姿とバーチャル室内が映り、


 『や、やっほーみんな。今のは…えぇっと…その…』


 と言うアゲハの声が耳に入った途端、天馬はようやく我に戻る。




 そしてその直後、


 「………ざけんなよ………! 」


 再び身体が震え始め指が白くなるほどスマホを握る強さがどんどん強くなったかと思うと


 「ッざけんなぁぁあ!!! 」


 と言う叫び声を室内に響かせて持っていたスマホを壁に思いっきりぶつける。


 「こんな…こんなブスに!!! 俺は何万円も使ったってのかぁ!?!? 」


 立ち上がった天馬は転がってる酒缶を蹴飛ばしながら棚の前に立って


 "ガッシャーン!!"


 と言う大声を出しながらフィギュア棚を倒す。


 首や手足が取れたフィギュアを拾っては


 「金返せよクソブスがぁあ!!! この俺を裏切りやがってぇええ!!!! 」


 と、ポスターが何枚も貼られた壁に投げつける。


 グッズの残骸と酒缶で床を埋め尽くす中、天馬の震えは止むことなくむしろさらに増していく。


 畳に転がっていたスマホでXを開いて


 『アゲハとか言うブスとか推すんじゃなかった』


 『マジで裏切られた。死ねよクソブスが』

 

 『ブスのくせに男のに媚びんなビッチが』


 と、可能な限り何度も何度も己の叫びをXに投げ込んでいった。


 そして次第に酔いと眠気から瞼が重くなっていき、意識を手放したーーー





 


 ーーーそして、その翌日。


 「あー、クソが…… こんな仕事辞めちまいてぇ」


 天馬はオレンジの光に照らされながらブツブツと家に足を運ばせている。


 「アゲハとか言うブスに騙されるわ、こんな低脳仕事ばっかさせられるわ……… 俺ってば本当不幸だよなぁ」


 足を動かしながらポケットからスマホを取り出し、Xに視線を向ける。


 「そう言えばアゲハのやつ、炎上してっかな〜? まぁあんなブスがVtuberしてたんだから当然か」


 彼の指が『トレンド』タブに指が近づいていくーーー





 だが、その指は


 (……………待てよ)


 と、ピタッ止まった。



 



 (今までのトレンドって…みんな俺のコメントが現実になったよな……? )


 『なんで数も稼げないようなゴミクズがアゲハとコラボしようと思ったんだよ運営。見ろよこのグラフ。銀ギンとかグループでも数を稼げない足手纏いじゃねぇかよ。死ねよ、マジで。お荷物しかないドリームメンズは全員クビでよろ』


 【銀ギン死亡】


 『そもそもドリームメンズとか言うやつらってドリームの看板背負ったヒモ男の集団じゃん。さっさと消えろよ。ギンも〇んだんだからお前らも後追えやwww』


 【ドリームメンズ解散】


 頭の中に今まで書き込んだ"一部"のコメントとその直後のトレンドが頭に浮かぶ。


 (俺が最近呟いたのって………)


 『アゲハとか言うブスとか推すんじゃなかった』


 『マジで裏切られた。死ねよクソブスが』

 

 『ブスのくせに男のに媚びんなビッチが』………


 指がどんどん震え、額から冷たい汗が流れていく。


 「い………いや、まさかな……そんな訳…ない…よな?? 」


 汗で濡れた指がゆっくりとスマホに近づいて、ようやくトレンドタブの真上に触れた。


 画面が切り替わり、トレンド入りしていたのはーーー









 【蝶咲アゲハ死亡】


 






 その文字を見た瞬間、天馬は殴られたかのような衝撃が走り、スマホを投げ捨てそうになった。


 ゆっくりゆっくりとスワイプしていくとそこにあった運営からの



 【この度、弊社所属タレントの蝶咲アゲハは、〇月〇日をもちまして活動を終了させていただくこととなりました。


 皆様には突然のご報告となり、深くお詫び申し上げます。


 本件につきましては、ご家族の強いご意向により詳細のご説明は控えさせていただきます。


 長らく応援いただきましたこと、心より感謝申し上げます。】


 と言う淡々もしたメッセージと


 『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』


 『俺たちのアゲハちゃんまで………』


 と言うリスナーたちの悲痛の叫び。


 一つ一つ目に入るたび、天馬の胸が針のような痛みが刺さり、思わず足がよろける。


 すると、


 『天馬とか言うユニコーンってドリームメンズやアゲハちゃんを誹謗中傷してたよな』


 と言うリプを見た途端、思わず倒れかけるほどの衝撃が走った。


 『そいつ知ってる! ギンさんもそいつに殺されたんだ!! 』


 『特定班、はよ!! 』


 『俺たちのアゲハちゃんを殺したやつを生かすな!!! 』


 リプ欄に集まっていく言葉を見た天馬は汗が止まらなくなり、息がうまくできなくなる。


 そして指を素早く動かしては『アカウント削除』の項目を強く押し込む。


 『このアカウントは存在しません』


 メッセージを見た天馬は


 「よし……これで、一安心だ………」


 と、一息つく。


 そしてよろける足取りでゆっくりと家に向かったーーー


 




 ーーーが、その数週間後。


 「な、何だよ…これ…」


 天馬が震えながら握っているのは




 【訴状】


 郵便物の2文字が視界に入った途端、


 「な、何で………!? 何で俺が訴えられてんだよぉ!! 」


 と、何度も身体を壁にぶつけながら叫び続ける。



 



 ーーーそこからはまさに"地獄"だった。




 「判決。被告人は名誉損壊、並びに侮辱の罪により有罪。遺族らに賠償金700万を支払うように」


 「なっ………!? 」



 目の前の裁判長の言葉を聞いた途端、涙が滲み、頭が真っ白に染まる。


 しかし、その直後の


 「それだけじゃ済まされません!! 私たちの娘を殺したこいつに死刑を!! 」


 という悲鳴に近い訴えと


 「そうだそうだぁ!」


 「こんなやつを生かすなぁ!! 」


 と言え叫びに思わず耳を塞ぐ。


 しかし、彼の耳には彼らの叫びが容赦なく入ってきていたーーー。




 

 そして、その後ーーー




 「えぇ!? ちょ、懲戒免徐!?!? う、嘘ですよね?? 」


 『嘘もクソもあるか!! お前のせいでうちの会社の印象は最悪だ!! 二度と会社の前に現れるな!! 』


 「そ、そんな!! 部長!? 待ってください!! 部長? 部長ぉ!!! 」



 職を失ってーーー。



 『あんたのせいで近所から白い目で見られて家に出られないじゃない!! どうしてくれんのよ!!!』


 「ま、まってくれ母さん… は、話を……」

 

 『話すことなんて何もないわ!! あんたみたいなクズはうちの子じゃない!! 』


 「待ってくれ母さん!! もう当てがないんだ!! せ、せめて! せめて職だけでもぉ!!! 」


 家族も失ってーーー。



 「見ろよあいつ、Vtuberを自殺させたって……」


 「うわぁ、最低… 早く死なないかしら…」

 


 「おかーさん、あの人テレビで見たことあるー」


 「こ、こら! あんなの見てはいけません!! 」


 "信頼"と"人権"も失ったーーー。



 「何で……何で俺が……」


 瞑りかける目を何度も擦っては数分も休んでない身体で働き、稼いだ金を遺族に支払う毎日。


 そんな彼を現実はもちろん


 『速報・Vtuberを殺した天馬の素顔判明!! 』


 『あいつ東京都の〇〇ってとこに住んでるらしいぜ。特定班、急げ!! 』


 『見つけ次第殺してもええやろ、こんなクズ』


 SNSが逃すわけがなかったーーー。







 判決を喰らって、数週間後ーーー。

 

 薄暗い部屋の中、そこにいるのは光のない目の天馬と


 "ブーッ ブーッ"


 休みなくメッセージを受け取り、震えるスマホと


 

 輪っかになった麻縄が置かれた机ーーー。



 "ドンドンドン!! "


 「おう天馬ごらぁ!! いつまで居座る気じゃごらぁ!! 」


 「おることは分かっとるんやぞぉ!! はよぉ耳揃えて金返さんかい我ぇえ!! 」


 玄関から響いているドアの音と怒声も、


 「俺たちのアゲハちゃん達を返せぇ!! 」


 「この人殺しぃ!! 」


 窓の外から響く声も、彼の耳には届かない。



 『天馬とか言うやつ、まだ生きてんの? 』


 『早く死ねよ。あんなクズ』

 

 毎日届くSNSの言葉も、彼の目には映らない。



 彼の目に映っているのは、天井に吊るされた"輪っかの縄"のみ。



 ーーーそして、





 「ごらぁ!! 返さんのやったら死ねやぁ!! 」


 「死んで償えぇ!! 」


 『死ねよ』

 




 

 それらの言葉が現実となったかのようにーーーーーーーーー







 


 "ギシッ…ギシッ…"


 






 縄の軋む音が、外の怒声に何度もかき消されていった。





 

 〜Fin〜

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