表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/143

第十話 王子が暴れん坊だったら  1、令嬢が本気に覚醒したら

「思い上がるなよ、下賤の血が! お前の力なんざ、たかが知れたものだ! 上級魔導士の資格だって、お前がスターチ家の人間だからお情けでもらったものだ!」


 カリガムが憤りを露わにして怒鳴る。

 それに対し、シイファは静かにカリガムを睨みつけた。


「そう仰るのなら、あたしと勝負してください」


 シイファの言葉に、カリガムは顔色を変えた。


「……勝負だと?」

「そうです。あたしの力なんか、たかが知れてるのでしょう? あたしと勝負すること――まさか恐がったりしませんよね?」


 カリガムの顔色が、真っ赤になるのが見て取れた。


「つけあがるなよ、下賤の血が! いいだろう、貴族の魔力を味合わせてやる! 後悔するなよっ!」


 シイファは、ただ静かにカリガムを見つめていた。


   *


 庭に出た二人が、睨みあう。

 ウィンガムが、シイファに言った。


「シイファ……お前の気の済むようにしなさい。救護の治癒術士も呼んである」

「ありがとうございます、お父様」


 シイファは軽く礼をした。そこへカリガムが声をあげる。


「一瞬で即死したら、どんな治癒術士でも治しようがないがな! 言っとくが、ぼくは手加減はしない。貴族の――本物の上級魔導士の力を思い知るがいい」


 そう言ってカリガムは、手の中に魔法杖を出す。

 シイファも手の中に、魔法杖を出した。俺は声をかけた。


「始め!」

「喰らえ! 激烈爆炎砲(ヴァイオレント・バスター)!」


 凄まじい業火の大砲がシイファを襲う。しかしシイファは、自身の背後に電撃の竜を生み出していた。


電撃竜破(ドラゴニック・ボルト)!」


 電撃の竜が業火を迎え撃つ。しかし業火の勢いは凄まじい。


「ハッ! そんなもんかシイファ! やっぱりお前は、所詮、下賤の血だよ! ぼくの炎に――おとなしく焼かれろ!」


 業火がさらに威力を増す。膨れ上がった炎が、電撃竜を押し戻し、シイファの身体を呑み込もうとしている。


「ク……くぅ――」


 シイファが苦しそうに顔を歪める。このままでは、シイファが炎に焼かれるのは明らかだった。

 俺は声をあげた。


「シイファ、躊躇するな!」


 薄目を開けて、シイファが俺を見る。


「兄を傷つけるのを恐れてブレーキをかけるな! お前の最大の力を発揮しろ! 最大の力を使っても、相手は俺がなんとかする! シイファ――振りきれっ!」


 俺が上げた声に、カリガムが不快そうな顔を見せた。


「何を言ってる、この下賤が! こいつが力を加減してるだと? 思い違いもいい加減にしろ! 貴族を愚弄した罰を、こいつを焼いた後で――お前にも味合わせてやる!」

「キィを…焼くですって……?」


 シイファが眼を見開く。


「――あんたこそ、思い違いもいい加減にしなさいっ!」


 シイファが声を上げた瞬間、凄まじい魔力上昇がシイファを包んだ。シイファの全身から稲妻がほとばしり、辺りの空中に放出する。

 それは、六匹の竜の姿へと変わった。


「電撃七星竜破!(セブンス・ドラゴニック・ボルト)」


 新たに現れた六匹の電撃竜が、カリガムに一斉に襲い掛かった。


「なに…? こんな威力の――魔法が…」


 カリガムが驚愕に眼を見開く。もはやカリガムの炎は完全に押し戻され、カリガム本体を守るものは何もない。


「シイファ、止めなさい!」


 ウィンガムが声をあげる。しかしシイファは止まらなかった。

 七匹の電撃竜がカリガムを襲い、爆発とともに閃光がほとばしる。辺り一帯が光りに包まれた。

 やがて静けさが戻る。爆炎の消えた後には、誰もいない。


「……お兄様?」


 シイファが驚きに眼を見開くが、やがて俺を見つけた。


 俺は瞬時に気力と力場魔法を同時発動し、カリガムに電撃竜が直撃する前に、カリガムの身体を抱えて離脱させたのだった。

 俺は地面にへたり込むカリガムを置いて、立ち上がった。


「どうだ、シイファの魔法は?」


 俺の問いに、カリガムは唇と身体を震わせていた。


「う……嘘だ…下賤の血に――こんな魔法が…」

「これはシイファが、血だとか家とか関係なく、努力して身につけた力だ。これがシイファの――本当の力だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ