表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/143

7 首謀者の正体を知ったら

「うごぁぁっ」


 頭頂部に一撃を喰らい、ボスの眼玉が見開かれる。そのままボスは倒れた。


「ムンッ」


 用心棒の剣が俺の身体に振ってくる。俺は発力して躱した。


「なにっ?」


 どうやら用心棒には、俺の移動が見えなかったらしい。剣は空を切った。

 俺は用心棒のすぐ横から、掌打の一撃を打ち込んだ。


 衝気。それで終わりだ。用心棒の身体が力なく倒れていった。


“倉庫の制圧、終了しました”


 不意にアルティアの念話が入る。

 どうやら階下も静かになったし、倉庫の方も片付いたらしい。

 一部だろうが、裏ギルドの連中を一網打尽にできたようだった。


   *


 俺とガイスラッド、アルティアの三人は、捕物の後、商人ダレスの屋敷へ来ていた。


「あの……警護隊の方々が、私に何の御用ですかな?」


 でっぷり太ったダレスは、揉み手をしながら俺たちに言った。


「お前が裏ギルド『デスコルピオ』とつながりがあるのは判っている。お前がガスパオ候殺害を裏ギルドに依頼したこともな。どういうつながりなのか、全て話せ」

「な……なんの事ですかな」 


 ダレスは脂汗をかきながら、とぼけてみせる。


「面倒な奴だな」


 俺は呟くと、ダレスに近寄った。掌で衝気をあてる。


「うぐぉっ!」


 ダレスが全身のダメージで、倒れ込んだ。

 俺はその腕を掴んで無理矢理立たせ、近くの椅子に座らせた。

 次は異能の鍵を、ダレスの胸に差し込む。


「おい、キィ、何をやってるんだ?」

「こいつの心の扉を開く」


 闇ギルドのボスに口を割らせたところを、二人は見ていない。

 ガイスラッドの問いに答えて、俺はダレスに訊いた。


「何故、ガスパオ候殺害を闇ギルドに依頼した? 全て話せ」


 俺の言葉を聞くと、ダレスは歯を剥き出しにして笑みを浮かべた。


「奴が臆病風を吹かせたからだよ!」

「どういう意味だ?」


「元々、私も奴もある秘密クラブの会員だ。それは娘たちと楽しむ秘密パーティーの参加者だ!」


 ダレスは眼をギラつかせてそう言った。


「最近起きている娘たちの行方不明事件は…お前たちの仕業か?」

「娘が足らないんでね! 奴隷を買ってくるのだが、足らない時はギルドに頼んで補てんする。奴も自分の領内の住民をさらう事を黙認していた」


 つまり、ガスパオ候も充分、仲間という訳か。


「……どうして仲間割れした?」

「奴が新しい趣向に、ビビり始めたからだ」


「新しい趣向とはなんだ?」


 俺の問いに、ダレスが喜色満面で口を開いた。


「楽しんでる最中に、怪物に娘の一人を喰わせるのさ!」


 目が血走り、口の端からよだれが垂れている。


「特に基準はないが、その場にいた娘を一角虎のエサにする。娘は逃げまどい、怯えて泣き叫ぶが、結局、虎の角に串刺しにされ、柔らかい内臓から喰われる。それを見ている娘たちも、恐怖の顔でそれを見る。中には失神したり、粗相をする娘もいるほどだ。我々はその怯え切った顔を見ながら、心ゆくまで娘たちを楽しむのだ」


 ダレスは興奮した様子で喋ると、だらしない笑みを浮かべた。


「そんな……ひどい事を――」


 アルティアが口を手で抑え、赤い眼鏡の奥の眼を見開いている。


 無理もない。こいつらの嗜好を理解できる方がおかしいのだ。


「――ガスパオは乱交だけしてた時には、それなりに参加していたのに、この新趣向を始めてから参加しなくなった。結局のところ、娘たちは処分するのだ。その方法が変わったに過ぎないのに。あまつさえ奴は、クラブを抜けたいと言い出したのだ。そんな事を、あの方が許すはずがない」


「……あの方とは、誰だ?」


 俺の問いに、ダレスが笑った。


「九賢候の一人、『黄の明賢』ドライデン様だ!」


 ガイスラッドとアルティアが、息を呑むのが判った。


   *


「――相手は九賢候だ。どうする?」


 俺はガイスラッドに問うた。さすがのガイスラッドも、難しい顔をしている。


「王家と賢候は、基本的には同格の立場だ。領主として自分の軍隊を持っていて、100人は常駐しているだろう。そこに踏み込めば、内戦になる。これはおれの一存で判断できる事じゃない。まず総隊長に報告をする」

「そうか。判った」


 そう答えることは予想していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ