6 拠点に突入したら
闇ギルドの拠点は、街外れにある倉庫を有した建物だった。
三階建ての建物の傍に倉庫がある。突入は二組に分かれて行うが、ボスがいるのは建物側と思われた。
ガイスラッド隊は五班30人。これに副隊長のアルティアと隊長のガイスラッド、そして俺を含めた総勢33人で突入する。
倉庫側には実行員が多く待機してるのでアルティアが指揮する20人。建物側には俺とガイスラッドを含めた13人が入る。周囲を囲んで逃亡者を捕らえるため、倉庫の出入り口周辺に7人を残し、建物側は五人を外につかせる。
既に二番隊の隊員には、なるべく殺さずに捉えるようにと命令を出してもらっていた。誰が事件の関係者か判らない以上、逮捕後に情報を得る必要がある。
「アルティア――配置についたか?」
“全員、配置につきました”
アルティアの念話が届く。事前にアルティアとリンクを作ったが、一度にリンクが作れるのは4人くらいまでらしい。それ以上は能力限界だそうだ。
という事は、ガモフたち五人と俺とシイファにリンクを作ったニャコは、やはり相当の霊力の持ち主なのだろう。改めて、ニャコが特級巫女なのだと再認識した。
「よし、突入だ!」
ガイスラッドの声で、全員が動いた。
建物の扉を、隊員の魔導士が業火で吹き飛ばす。扉が開いたところへ、全員が突入した。
「な、なんだ!」
中にいた裏ギルドの連中が、驚愕に眼を見開いている。
その連中にものも言わせず、剣士たちが斬りかかった。
かなり戦闘力の高い隊員ばかりだ。ガイスラッドの部下は、かなり優秀だ。
「上へ行くぞ」
「おう」
ガイスラッドに声をかけると、俺たちは階段を駆け上がる。その途中で、異変に気付いた奴らが迎撃に出てきた。
ガイスラッドが、笑みを浮かべる。
と、ガイスラッドは両腕を顔の前で十字に組んだ。
「シールド・ブレイカー!」
ガイスラッドの両腕に、盾が現れる。が、その盾からは剣が伸びていた。剣の付いた盾を両腕に装着したガイスラッドは、雄叫びと共に迎撃者に突っ込む。
一瞬だ。ほぼ剣を交えることもなく、ガイスラッドは迎撃者を叩き伏せた。
階段の上に、さらに三人のギルド員が現れる。その顔には恐怖が浮かんでいた。
「こ……こいつは、『沈黙の十字』ガイスラッド――」
一人の男が、声を洩らす。
そう、ガイスラッドは『沈黙の十字』と呼ばれると、アルティアから聞いた。
五年前、隣国ナハールガの地方領主ゼスキアが鉱山を狙って侵攻しラウニードと交戦したことがあった。その時、ガイスラッドは友軍を逃がすために一人で戦い、捕虜として捉えられる。
その時、ゼスキアはラウニードの軍事力を知るためにガイスラッドを拷問にかけるが、顔を十字に斬られてもなお、ガイスラッドは沈黙を守った。
その後、救出されたガイスラッドはゼスキア軍に交戦し、それを撃退して勝利に導いた。
ガイスラッドの顔の傷は消えることはなかったが、それ以来ガイスラッドは『沈黙の十字』という通り名を持つようになったのだ。
「オオォォッ!」
そして眼の前の十字傷の男は、凄まじい勢いで戦っている。
敵の魔法攻撃も盾で防ぎ、次の瞬間には相手を斬り伏せる。武器を持つ相手は、その武器ごと相手に押し込み気力を爆発させていた。
「――こりゃあ、俺の出番はないかもな」
しかし、仕事はしないと。そう思い、俺は倒れた奴に次々とディストレイナーをかけていった。
一番上の階まで来ると、二人の男がこちらを睨んでいる。
いかにも反社という感じの凶悪な面だ。
「てめえら……こんな事してタダですむと思ってんのか!」
ボスっぽい男が、ドスのきいた声でそう怒鳴った。民間人なら顔と声だけで震えあがる迫力だ。
が、俺は刑事だ。この手合いには慣れている。
ガイスラッドも特に臆した様子はない。ガイスラッドが口を開く。
「ただで済まなきゃ有料か? いいぜ、お代はお前ら持ちだがな」
ガイスラッドが笑みを浮かべながら、盾剣を十字に組み合わせた。
「死ね!」
ボスが腕をガイスラッドに向ける。と、業火がガイスラッドを襲った。と同時に、傍の用心棒が、俺の方へ走って来る。
ガイスラッドは盾で業火を受けながら突っ切る。と、ボスの脳天に剣の直撃を喰らわせた。




