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5 班長たちを紹介されたら

 と、俺の前にセインがやってくる。


転性種(トランス)のセイン・フォーン、三班班長をしてます。よろしく」


 美女はにっこり微笑んだ。と、そこに影が差す。巨人がセインの傍まで来ていたのだ。


「おれは一班班長。巨人種(ギガント)のゴウ・ブロークスだ」


 長い髪が目深になっていて、顔がよく見えない。顎が二つに割れているのだけは、よく判った。

 その次には四本腕の男がやってきた。


「二班班長のヤルニカ・ガザルデだ。四腕種(シュラリス)な」


 筋肉が発達したヤルニカは頭が丸坊主で、そこに紐を一本巻いている。眼も耳も尖っていて、ちょっと牙っぽい歯が見えた。

 それで終わりかと思っていると、ビットルが声をあげた。


「ほい、最後はメリアだぜ」


 ビットルが促した先には、褐色の肌色をした美女が立っていた。女性としては上背があり、剥き出しになった脚がとにかく長い。


 耳が横に張り出して尖っていた。秀麗な顔立ちに、銀色の長い髪。メリアと呼ばれたその美女は、にこりともせずに口を開いた。


「……五班班長。闇麗人族(ダーク・エルフ)、メリア・リム・ライオネル」


 なるほど、これで一班から五班まで、班長に自己紹介されたわけだ。しかし、どうやらごく普通の人間というものがいない。班員たちには普通っぽい者も沢山いるが、班長たちは個性的だ。


 これがヴォルガ隊か。――面白い。


「なあ、隊長、なんでキィは隊長つきなんだよ」


 ビットルが不満そうにヴォルガに言った。ヴォルガは苦笑しながら、それに答える。


「キィは既に、神父長殺人事件、連続誘拐殺人事件、闇斬り『夜の烏』事件を解決してる捜査の専門家だ。今後も事件捜査に関わってもらうつもりだから、お前たちとは別動隊にしたんだよ」

「なあんだ、そういう事かよ」


 少し驚いた後で、ビットルはまた肩を組んでくる。


「お前、やるじゃん。――おおい! 今日はキィの歓迎会だ! 夜には街に繰り出すぞ!」


 ビットルの上げた声に、班員たちがおお! と呼応した。


 と、その時、不意に艶のある声が響いた。


「盛り上がってるところを申し訳ないんですが――」


 その場にいた者が振り返る。そこには一目で判るグラマラスな美女が歩み寄ってきていた。


「キィ・ディモン。入隊早々悪いけれど、総隊長のところまで来てもらえるかしら?」


 制服の胸元がしまらないらしく、そこからはち切れそうな胸。ミニのスカートから伸びる肉感的な長い脚。ブラウンの髪はゆるいウェーブを描き、その紅い唇は艶っぽく光っていた。


「……あんたは?」


「総隊長補佐官のレイラ・ダレンボイルよ。よろしくね」


 レイラは艶然と微笑むと、ヴォルガの方へ向き直った。


「ヴォルガ隊長、貴方も呼ばれてるんだけど」

「そうか……オレなら了解済みだ。そう、ロイナートに伝えておいてくれ」

「判りました。――それじゃあキィ・ディモン、行きましょうか」


 そう微笑んだレイラの後に、俺は従った。


   *


 警護隊本部は王宮の傍にある。その建物の二階に上がると、レイラが扉の前で声を上げた。


「こちらでお待ちください」


 扉を開いて、レイラが俺を中に促す。本人は入るつもりはないらしい。俺は入室した。

 と、そこにあるソファにニャコとシイファが座っているのを見て、俺は驚いた。


「ニャコ、シイファ、どうして此処に?」

「呼ばれたんだよ」


 ニャコが呑気な声を出す。しかし俺は少し緊張が走った。

 奥の扉が開いて、ロイナートが金髪をなびかせながら姿を現す。


「ご足労頂き、感謝する」


 ロイナートはそう言うと、部屋の奥にある机についた。

 シイファが少し怪訝な声を出す。


「ロイナート総隊長、有無を言わせず此処に連れてこられましたが、それなりの要件という事ですよね?」


 ロイナートは表情を変えることなく、厳しい目つきを向けてきた。


「機密事項についてのご理解をいただきたく、お呼びたてしたまでです。スターチ家のシイファ嬢」

「機密事項? あたし達に、関係があることなの?」

「大いに関係があります。そして機密事項に関しては、他言せぬことを確約いただかなければなりません」


 断定口調で、ロイナートはそう告げた。


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