7 銃を改造してもらったら
「……あ、ディモン君、来てたのかい?」
リュートがうっすらと眼を開ける。
「先生、大丈夫ですか? どうしたんですか?」
「いやあ……」
リュートはゆっくりと身を起こす。
「ちょっと眩暈がしただけだよ。もう歳だからね、そんな事もあるさ。心配かけたね、ロック」
「わふぅ……」
ロックも心配そうな顔をするが、リュートは微笑した。
リュートはソファに腰を下ろすと、俺に言った。
「最近、来てなかったから、もう諦めたのかと思ったよ。ディモン君、課題を解くヒントでも見つけたかい?」
「実は……ここのところ闇斬りの捜査をしてまして。そいつが超高速で移動します。その対処法のヒントをいただけないかと思って……来た次第なんです」
そう。今の俺では奴を追い詰めても逃げられるし、戦ったとしても勝てないだろう。だから攻略法を先生に訊こうと思ったのだ。
リュートは微笑を浮かべ、静かに俺を見つめた。
「そう……。しかしヒントは既にあげているよ。答えはロックに訊きなさい」
「ロックに…?」
俺はロックを見た。ロックがL字型の指を顎にあてている。
この犬ころに何を訊けというんだ? いやしかし……最初にロックと立ち合った時、ロックは俺よりはるかに速く動いていた。犬と人間の差だとばかり思っていたが――
「先生! ロックを借りていいですか?」
「それは、ロックに訊きなさい」
リュートは微笑する。俺は得意気な顔をしてるロックに言った。
「ロック、凶悪な犯人を逮捕するために、お前の力が必要だ。俺に、力を貸してくれないか?」
「わふ」
――指で丸。「了解ってことだな、ありがとう」
俺はロックに笑ってみせた。
*
教会へ戻ると、シイファが俺に銃を手渡した。
「はい、頼まれた通りに改造しといたから」
「ありがとう、シイファ」
俺が礼を言うと、シイファはさらに解説をした。
「そのままだと判りづらいと思って、使う魔法の魔紋が出るようにしたの」
俺が少し魔力を込めると、銃身の上に照準器のように小さな紋章が現れる。それは炎の形をしていた。
「これが火炎弾か。なるほど判りやすい」
もう一度トリガーを引くと、青いダイヤ型。これが氷結弾らしい。そしてもう一度トリガーを引くと、黒い四角が現れた。
「これが力場照準だな」
俺は魔力を込めてみる。銃口から赤いレーザーが発射され、椅子に当たる。熱などはない。
「こんな工夫、よく思いついたわね。結構、設定は大変だったんですけど」
「面倒かけたな。しかし力場魔法に習熟してる暇がなかったし、どうもイメージしづらかったんだ」
力場魔法は凍結魔法の学習時に原理は習得した。凍結は力場魔法による、気体の圧縮から始まる。圧縮により液体化した媒体が、気化する時に気化熱を周囲から奪う。それが凍結の原理で、つまり冷蔵庫の仕組みだ。
俺はレーザーポインターが当たってる椅子を、上にあげてみた。椅子が宙に浮く。
「うん、いい感じだ。ありがとう、シイファ」
「どういたしまして。それで、犯人を捕まえられそうなの?」
「ああ、これで準備は整った」
そう、俺は一人じゃない。それがシイファに教えられたことだ。
*
俺は夜の街を歩く。敢えて人通りの少ない場所だ。
“キィ、あいつが動いた”
ニャコが念話で知らせてくれる。
“判った、ニャコ”
“キィ、気をつけて”
念話でも、声の感じは判るものだ。本当に、俺を心配してる声だ。
“ありがとう。充分に注意する”
俺は、少し笑ってみせた。
俺は少し歩き、左に路地のある場所へとさしかかった。
――瞬間、影が俺に襲い掛かって来る。
俺は持っていた警棒で、影の振ってきた剣を受け止める。と、次の瞬間、キン、という金属音がした。俺の背後だ。
ロックが尾手で持った剣で、俺に飛んできた三日月刃を弾き飛ばしていたのだ。
「なに!」




