9 教団本部に突入したら
ビットルが不満げに言う。俺は答えてやった。
「こいつには魔力・気力・霊力のいずれもきかない。極めて危険な奴だ。前にいた三幹部は、なす術もなく一瞬で殺されてる」
俺の言葉に、皆が静まり返る。そこでヴォルガが口を開いた。
「それじゃあ、どうやって戦うつもりだ?」
「俺に考えがある。ゼグラは俺たちに任せてくれ」
ヴォルガは狼顔に、にっと笑みを浮かべた。
「判った。だがヤバそうだったら加勢にいくぜ」
「頼りにしてる」
俺はヴォルガに言った。
シャルナに向き直ると、俺はシャルナに問うた。
「じゃあシャルナ、敵のアジトへのゲートを開いてもらうが、場所は何処なんだ?」
「ガリーシャの領内にある居城――ギンラッド城」
シャルナはそう答えて、俺を見つめた。
俺もシャルナを見つめ返す。
「シャルナはゲートを開いて全員が突入したら、ゲートを閉じてくれ。――ロック、お前はシャルナの警護だ。頼んだぞ」
「わふう」
ロックが尾手で握り拳を作る。任せろ、だな。
「じゃあシャルナ、頼む」
シャルナは頷くと、中庭の一角に両手を向けた。
空間の歪みができる。
「行くぞ!」
俺は声を上げてその中に入っていった。
行った先は、城の中らしい部屋だった。複数の人間がいたが、皆、灰色の長衣を身に着け、一つ眼の仮面をしている。
俺は三尖の炎の手帳を取り出した。
「王都警護隊五番隊だ。お前たちを爆弾事件の容疑者として任意同行する。抵抗する者は――逮捕する」
急な事で我に返った信者たちは、逃げだそうとする者、魔法を使う素振りを魅せる者、様々だった。
「衝撃射!」
俺は数人を撃ち抜き昏倒させる。その間にも、隊員が続々と侵入してきた。
「俺たちはゼグラを探す。あとの者の確保は頼む」
「判った」
俺はヴォルガにそう言うと、ニャコとシイファに眼で合図した。二人が頷く。
俺たちは奥の部屋へと進む。その間にも、襲い掛かって来る者は誰かが倒して、三人で突き進んだ。
ふと開けた空間に出る。天井も10mほど上にある広間だ。そこに一際大きな扉があった。
「これが指導者の居室か」
俺はM360を構えた。
「バーニング・ブラスト!」
その扉を一瞬で破壊する。俺たちは中に入った。
「……ノックの仕方も知らないようだね」
中は広々とした謁見の間だ。その一番奥にある豪奢な椅子に、一つ眼仮面をつけたゼグラがいた。一人だ。
「君たちが此処に来ているという事は、シャルナの暗示が解けたという事だね。君の能力かい、キィ・ディモン?」
「お前に二度と、シャルナは渡さない」
俺は問いには答えず、ゼグラにそう返しながら進んだ。
ゼグラが仮面の下の唇を吊り上げる。
「返してもらうよ、あれは私の娘だからね。君たち全員をヌガ=ヒ様に捧げた後でね!」
ゼグラが椅子から立ち上がり、歩み寄って来る。
俺はニャコとシイファに、眼で合図した。
俺はもう一本、剣を取り出す。
ニャコは木槌、シイファは鎖だ。
「行くぞ!」
俺の掛け声で、剣と木槌、鎖が宙に舞った。俺とシイファは力場魔法、ニャコは念動力でそれぞれの得物を操っているのだ。
「三力が吸収されるから、物理的な攻撃を仕掛けるつもりかい? 浅知恵だがね!」
襲い掛かる剣や鎖を、ゼグラは影の手で次々と防御している。
だが、奴を足止めするのが、その攻撃の目的だ。
その間にニャコとシイファは、ゼグラの斜め後ろに移動した。
三方から、俺たちはゼグラを囲む。
「ム!」
包囲された事に気付き、ゼグラが周りを見る。
「ハアァァァァ――」
俺は爆発呼吸をして気力を最大限に高める。
「ナーゴ、ドレスモード!」
ニャコがファントム・ドレスを身にまとう。
「七星電撃竜破!」
シイファは電撃竜を七匹背負った。




