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5 全ての謎の真相を知ったら

 ニャコが泣き声を出す。


「ひどいだろう? けどそれが真実だ。さあ、ニャコ、私の処にその子を連れて来るんだ。私の外見が変わっても、私がゼブリアットだと言う事は、私の霊気を感じれば判るはずだ。私の元に来なさい」

「ゼブリアット様……?」


 ニャコの眼が虚ろになる。まずい。暗示が復活しようとしている。


「やめろ、ゼグラ!」


 俺は瞬時に移動して、ゼグラの顔をめがけて拳を放った。

 が、その拳が巨大な影の手に捉えられる。


「そう、お前たちは私の娘だ。ニャコ、上級霊術を教えてあげただろう? お前を育てたのは私だ、私は父親も同然なのだよ」


 ゼグラはニャコにそう呼びかける。


「ニャコ、聞くな!」


 俺は捉えられた拳を振りほどくと、ニャコに呼びかける。


「嘘だよ……」


 不意に、虚ろな目のままニャコが呟いた。


「ニャコ?」

「嘘だよ……ニャコの才能を見つけてくれて、霊術を教えてくれたのは――神父長様だもん! ヴォード・ジェラルド神父長様が…ニャコを育ててくれたんだよ!」


 ニャコが目をつぶって、何か力んでいる。


「う~ん――」


 ニャコの身体が青白く光り出す。俺にも判るほどの、凄まじい霊気だ。


「――あっちいけっ!」


 一際、眩しい光を全身から放つ。光を放ち終わると、ニャコは、ふう、と息をついた。


「まさか……私の暗示を、自力で解除したのか? 馬鹿な…なんて霊力だ――」


 ゼグラが驚きの声を洩らした。そのゼグラをニャコが睨みつける。

 ニャコの意識が覚醒し、眼にはっきりとした光が宿った。


「ゼブリアット様は確かに上級霊術を教えてくれたし、ニャコを特級巫女にしてくれた。けど、育ててくれたのは嘘だよ。それに――神父長様を殺すように副神父長に命じたのは、ゼブリアット様なんでしょ?」


 ニャコはゼグラにそう問うた。ゼグラが笑みを浮かべる。


「そうだ。ヴォードは連続失踪事件の謎を追うなかで、最初に消えたレリト神父がメモに『リワルド』と書いているのを発見し、失踪が異世界と関連すると気づいた。そして幽子をたどり異世界観覧をするなかで、黒須摩実也の存在に気付いたのだ」


「それで神父長は霊鏡で黒須を追っていた。だが、あんたは神父長がこのままでは、あんたが事件の裏で手を引いてることに気付くと考え、副神父長キース・ドラルデに殺しを命じた。副神父長は毒を飲んで自殺したが、『これで恐れる日々から解放される』と最後に言った。奴は恐れていたんだ……あんたをな」

「気の小さい男でね。大事を成せない者の典型だ」


 ゼグラは鼻で笑った。


「そして、リワルドで事件を追っていた俺を異世界観覧の際に、霊体のまま魔法を使って殺したのもお前だな?」


 俺はゼグラを睨んだ。ゼグラが薄笑いを浮かべる。


「そうだ。黒須には、まだ私を殺すという最後の仕事があったからね。まだ捕まってもらうわけにはいかなかった。しかしまさか、その殺した者がシャルナの前世の兄で、しかもその者をニャコが一人で転生させるとは――私も予想外だった。これを運命というのだろうねえ。……全ては、私のために用意されたようなものだ」


「どういう意味だ?」

「シャルナの『ゲート』の能力は、行ったことのある場所にしかゲートを作れない。だからシャルナがリワルドへのゲートを作るには前世の記憶を取り戻すことが必要だったのだが、それが上手くいってなかった。しかし君――兄が現れたことで、それが目覚めた」


 ゼグラは得意げな顔で、さらに言葉を続けた。


「そして私を転生させるために、また一人、霊術士を転生の儀の際に殺し、かつ相当量のエザイを集める必要があったが、驚くべき事にニャコが――一人で転生の儀を行ったことが予測できた。君のような者を天才というのだろうな。しかしこれで二つの駒は揃った。まさに私を転生させるために、君たちは生まれたも同然だ!」


 勝ち誇った顔で、ゼグラが声を上げた。


「やっぱりひどいよ……」


 ニャコが口を開く。


「ニャコの事も、あの子のことも――みんな自分の道具みたいに思ってたんだね。村のみんなも、みんなお前のために殺された。あの子だって――そんな事を背負わされて、可哀そうだよ!」


 ニャコが激しくゼグラをなじる。が、俺はある事に気付いて、ゼグラに問うた。


「まさか……さくらを監禁するように、犯人を唆したのもお前か?」

「無論だ。私は『ゲート』の力が欲しかったからね」


 俺はその答えを聞き終わる前に、怒りが沸騰して奴に襲いかかった。しかし殴りつけた拳は、影の力で止められる。だが――


「貴様がさくらを殺した――真の犯人だ。許さん!」


 俺は気力を吸収されながらも、奴の腹に蹴りをぶち込んだ。


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