表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/143

2 指導者が本性を現したら

「さあ、行こうか。レディ、君も来なさい」

「はい、ゼグラ様」


 レディ・スィートは嬉しそうに、ゼグラの傍へと寄った。

 その瞬間だった。


「あ……」


 レディ・スイートの唇から、血が滴る。

 その豊かな胸の間に、大きな穴が空いていた。


「ど…どうして……」


 信じられないものを見る目つきで、レディ・スィートがゼグラを見る。その身体が倒れそうになるところを、ゼグラが抱き支えた。


「レディ・スィート、私が転生する時、どんな力を願ったと思う?」

「え……?」

「こういう事なんだよ」


 ゼグラの背中から、突如、黒い巨大な腕が姿を現した。


 その巨大な影のような腕が、レディ・スィートの顔に手を伸ばす。

 その手が――レディ・スィートの右目を指を突き立てた。


「ぎゃああぁぁっ!」


 レディ・スィートが悲鳴をあげる。

 やがてその影の手が離れる。その手には、レディ・スィートの眼玉が持たれていた。


「ゼグラ様! ――一体、何を……」


 傍にいるテラー博士が、驚愕の声を洩らしている。

 その手に持っている眼玉が、手の中に吸収された。


 ゼグラが目を伏せる。と、その額の中央が縦に裂けた。

 その裂け目が開き、そこからもう一つの眼が現れた。


 ゼグラがにやりと笑う。

 ゼグラがゲートに入り、俺の傍のゲートから姿を現した。


「次は君だ」


 ゼグラはグリードに向かって歩いて行った。


「こ、これはどういう事だ!」


 グリードはナイフを出すと、ゼグラに攻撃を仕掛けた。

 が、その攻撃を影の手が止める。


「これは――気力が吸収されている!」


 グリードが驚きの声をあげた瞬間、もう一方の巨大な手が、グリードの顔を掴んだ。


「ぐ――むぅ……」

「グリード!」


 俺は思わず、声を上げた。


 巨大な影の手でグリードを拘束したまま、ゼグラはグリードの胸に手を伸ばす。その手から、重力弾が発射され、グリードの胸に穴を開けた。


「ぐっ――が……」


 影の手が頬を掴んだまま、もう一方の手でグリードのゴーグルを取る。その指が目玉に突き立てられた。


「ぐぁっ――が、が、が……」


 グリードが断末魔の呻き声をあげ、やがてそれが消えた。


 影の手は無造作にグリードの死体を放ると、その手には眼玉を持っていた。

 眼玉は手の中に消え、ゼグラの額にもう一本亀裂が入る。


 それが開くと、ゼグラの額に二つ目の眼が現れた。


「ど、どうしてですか、ゼグラ様! 何故、我々を!」


 テラー博士が慄きの声をあげながら、後ずさりする。

 ゼグラはその顔に美しいながらも凶悪な笑みを浮かべた。


「見ただろう? 私が望んだのは『殺した者の異能(ディギア)を奪う異能(ディギア)』だ。最初にレディ・スィートの気力吸収の力を奪い、それでグリードの魔力を吸収する力を奪った。嘘だと思うなら、君の魔法を使ってみるといい」

「ヒッ、ヒィッ!」


 テラー博士が重力弾を放つ。が、その重力弾は、なんなく影の手に吸収された。

 ゼグラは微笑んだ。


「君を最後に残したのはね、君が一番たやすいからだよ。君のテラー・クローも私のファントム『影の(シャドウ・ハンド)』の真似でしかないし、君の重力魔法は私が生み出した魔法だ。君は私の、劣化したコピーでしかない」

「だ、黙れっ! ま、まさか……最初から、我々を殺すつもりで転生させたのか?」


 ゼグラが微笑った。


「無論だよ」


 ゼグラが歩み寄ったのに対し、テラー博士が後ずさる。二人が俺の場所から離れていく。

 そのとき不意に、声がした。


「わふ」


 まさか。


「ロックなのか?」


 俺は小さな声で囁いた。ハッハッと息を吐く声がする。


「ロック、俺の右腕を拘束している木を切ってくれ。頼む」

「わふ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ