8 三幹部の過去を看破したら
「あんたは、あたしの相手をしてもらうよ!」
レデイ・スィートが俺に向かって紫の髪が襲い掛かって来る。俺が魔銃で衝撃弾を放つと、相手は巨大カマキリのファントムでこれを防いだ。
「二重魔法の弾丸だろ? 前に喰らったからね、二度と同じ手は食わないよ!」
カマキリの鎌が俺に向かって振って来る。
と、その鎌を白い豹の尾が弾き飛ばした。ニャコのファントム、ナーゴだ。
「へへん、あんたの相手はニャコだよ!」
ニャコはレディ・スィートを指さして言い放った。…後で、その指で鼻の下をこする。
「へへ、一回、こんなセリフ言ってみたかったんだよね」
ニャコが妙に不敵な笑みを浮かべた。
「小娘が! あたしの相手をしようなんて、10年早いんだよ!」
「小娘じゃないよ! おっぱいあるもん! ……ちょっと、おばさんには負けるけど」
「誰が、おばさんだ! 殺してやる!」
ブチ切れたレディ・スィートが、紫の髪を怒涛のように伸ばした。
そこにテラー博士が声を上げる。
「レディ! 貴女はキィ・ディモンに専念しなさい! 冷静に計画を遂行するんです! この娘の相手は私です」
「そうはいかないから!」
黒い爪を伸ばし、テラー博士がニャコに近づこうとするのを、電撃の竜が襲いかかった。シイファの電撃竜破だ。
テラー博士が魔動障壁で電撃を防御する。俺はそれを狙って、魔銃を向けた。
「重力砲撃!(グラビティ・キャノン)」
最大威力の力場魔法で、テラー博士を魔導障壁ごと吹っ飛ばす。奴をニャコから引き離すのが目的だ。俺はすぐさま向きを変えた。
「グリード、お前の相手は俺だ」
俺はグリードに視線を向けた直後に、銃をしまって抜刀しながらグリードに斬りかかった。
俺の初太刀をグリードがナイフで受ける。俺はそのまま発力して、グリードを押し込んだ。これで三人を分断した。
「む…貴様、気力使いか」
グリードがナイフ越し、俺を見た。俺はグリードに言った。
「グリード、俺を覚えてないのか?」
「何を言っている?」
俺は悟った。
「テラー博士に、記憶を削られたな?」
「……なんの話だ?」
グリードが飛び退いて、ナイフを身構える。だが、心の動揺は隠せない。
「俺を覚えてないのか、グリード。お前とは俺と何度も戦っている」
「――そいつの言う事に耳を貸してはいけません! 貴方の役目は、魔導士を引き受けることですよ」
テラー博士が大声を上げる。
だが俺は、グリードにさらに話しかけた。
「グリード、俺はさらにお前の事を知っている。グリードーーいや、倉田剛志。お前は元陸上自衛隊所属の一等陸尉だ」
俺の言葉に、グリードが驚きの顔を見せる。そのナイフを持った両手が、下に降りていった。
「……何故、その事を?」
「俺は刑事だ。お前たちが殺された事件を、俺は既に調べている」
俺はグリードだけでなく、レディ・スィート、テラー博士にも聞こえるように声を上げた。
「高橋絵美、寺崎統、お前たちの事も判っている」
俺は三幹部に向けて、そう言い放った。
*
花守に会った翌日の夜、俺は約束通り夜にリワルドを訪れた。
花守は今度はパジャマ姿ではなく、カジュアルなスェットを着ている。少し気を使ったらしく、まだメイクも落としてない。
が、そういう処にはとりあえず触れずにいた。
「花守、それで三人の被害者について判ったか?」
俺の問いに、花守は自信ありげな顔で資料を見せた。
「大門部長のために、これを用意しましたからね、見てください」
「悪いが、干渉できない。読んでもらえないか?」
俺の言葉に、花守は眼を開く。
「……やっぱり、幽霊っぽいですね。じゃあいきますよ」
そう言うと、花守はページをめくった。
「新しい事件順でいきますね。倉田剛志、陸上自衛隊、東部方面隊第一師団所属の一等陸尉で27歳。非番の時に、自宅であるアパートで殺されてます。この時に、隣人が現場に居合わせ、刃物を持って逃走する黒須摩実也を目撃しました。その目撃情報と防犯カメラの映像から、黒須摩実也を追った結果、潜伏先のアパートが判り、大門部長と山中寛治警部補が確保に向かったわけです。




